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今回のトライツブログは、前回に引き続き「海外B2Bマーケティングの最新トレンド」の後編をご紹介します。欧米のB2Bマーケティングがどのように変化しているのか、そして私たち日本のマーケットにはどのような影響があるのか、続きを見ていきましょう。
AIマルティプル社が選ぶ、最新のB2Bマーケティング・トレンド
今回の元ネタも、AIマルティプル社の最新記事「Top 10 B2B Marketing Trends in 2023」(2023年のB2Bマーケティングトレンド トップ10)。同社はAI関連のベンダーやソリューションの選定・導入支援を事業としているのですが、AIに限らずB2Bマーケティングの最新トレンドを幅広く押さえてくれています。10項目の中から今回の後編用に選んだのは3項目。日本のB2Bではあまりなじみのない「インフルエンサーマーケティング」からスタートします。
トレンド1. インフルエンサーマーケティングへの支出が増える
後編1つ目のトレンドは「インフルエンサーマーケティングへの支出が増加傾向」。2022年のHubSpotの調査によると、「B2Bマーケターの71%が2022年と2023年にインフルエンサーマーケティングへの投資を増やす計画を立てている」急成長市場なのだそうです。
このインフルエンサーマーケティング。B2Cだと有名YouTuberやインスタグラマーとのタイアップ企画など、私たちも普段から目にするのでイメージが湧きやすいのですが、B2Bは事例が少なくピンと来ていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、欧米のインフルエンサーマーケティングのパターンを、具体例を交えながら見ていきます。
B2Bにも使える!インフルエンサーマーケティングの3パターン
1つ目のパターンは、著名な経営学者や起業家などの「すでにインフルエンサーになっている人」の番組やコンテンツに、企業トップや事業責任者が出演して話をするというもの。例えば「Give & Take」というビジネス書がベストセラーになったアダム・グラント氏は、TEDの「Work Life」や「Re:Thinking」というポッドキャスト番組のホスト役をしていて、そこで様々な企業のトップや専門家と会話をしています。このような番組に取り上げてもらうのが、1つ目のパターンです。
日本のB2Bではこのパターンは少し難しいように感じます。メディアやSMSへの露出が高いビジネス系インフルエンサーとして、例えば早稲田大学大学院の入山章栄教授が有名ですが、コメンテーター的な中立な立場での出演が多く、インフルエンサーマーケティング的な立場からは少し距離を置いているように思います。また、絶対数もまだまだ少ないので、市場として成立するのはしばらく先のことになりそうです。
2つ目のパターンは「自社従業員を従業員をインフルエンサー化する」というもの。一時、テック系企業を中心に社内外のイベントで講演する「エバンジェリスト」を任命することがブームだった時期がありますが、このエバンジェリストなどはまさにインフルエンサーそのもの。また、日本でよく見るのが企業Twitterのいわゆる「中の人」。これも匿名化された従業員インフルエンサーと言えるかもしれません。
3つ目のパターンは「既存顧客をインフルエンサー化する」です。こちらは、既存顧客の中でプレゼンが上手な方にいくつものセミナーやカンファレンスで話してもらい、その人の業界内での知名度を高めていくというもの。Salesforceが自社主催イベントDreamforceの中で、トレイルブレイザーと呼ばれる既存顧客に講演してもらっているのがまさにこのパターン。同様のことをHubSpotやSAP、Adobeなどの企業でもやっています。
国内B2B企業でも今すぐ取り組めるインフルエンサーマーケティング
インフルエンサーマーケティングとして日本のB2B企業が今すぐにでも取り組めるのは、2つ目の自社従業員と3つ目の既存顧客のインフルエンサー化です。特に既存顧客のインフルエンサー化ということで言えば、医薬業界では自社の新薬を処方してくれた先生に何度もセミナーやカンファレンスで話をしてもらうということを、インフルエンサーマーケティングという言葉が生まれる前から普通にやっていたりします。このように、実は日本のB2B企業にもなじみのある手法なのです。
社内でプレゼン役を順番に担当させるのも育成という意味では役に立ちます。それだけでなく、エバンジェリストを育てるために特定のメンバーに何度も経験を積ませたり、既存顧客の中でも業界で名の通った方に講演を依頼するなど、インフルエンサー育成の場としてのセミナー活用を考えてみてはいかがでしょうか。
トレンド2. マーケティングオートメーションがB2Bでさらに浸透
後編2つ目のトレンドは「マーケティングオートメーション(MA)がB2Bでもさらに浸透する」。Deloitte社の調査によると「2020年以降のパンデミック中に、マーケティング組織の77%がAI技術を用いてより多くのマーケティング業務を自動化した」そうです。ただ、これだけだと当たり前の話で特に面白くはないのですが、自動化を導入した目的についての調査結果が興味深いので以下にご紹介します。
4番目の項目「代理店への依存度低下」のみが内製化に向いていますが、それ以外はすべて省人化/外製化に向けられていることがわかります。
2022年秋ごろから欧米のテック系と言われる企業で大規模なレイオフが続いています。11月にインテルが数千人規模のレイオフをおこなったのですが主な対象者はマーケティング部門でした。また、SalesforceやAmazonでも営業・マーケティング部門を対象としたレイオフを実施しています。それぞれ詳細の理由や目的は異なるでしょうが、デジタル活用が進んでいる企業のマーケティング部門は、合理化・省人化のターゲットとなっているように思えます。
日本でもデジタルチャネル活用がさらに進んでいくと、それを効率的に運用するためにMAツールの導入・活用がさらに広がっていくことでしょう。そしてその先に、AIによるさらなる効率化・省人化が進んでいけば、各社のマーケティング組織は今まで以上にスリムになり、少数精鋭の部隊となる可能性が高いと思います。これからマーケターとして勝ち残るためには、Webマーケティングについて詳しいのはもちろんのこと、AIを活用して業務を自動化・効率化するという実践的なスキルもより一層重要になりそうです。
トレンド3. B2Bマーケティングがデジタルチャネルにシフト
最後にご紹介するのは、先ほどのデジタルチャネル活用ずばりそのものの「マーケティング予算はデジタルチャネルにシフトしている」です。Statista社によるB2Bマーケティングのチャネル別予算配分は以下のグラフのようになっています。
記事では、「代理店施策」や「イベント」といった従来型チャネルの予算は減少傾向にあり、「SNS」や「Web広告」などのデジタルチャネルの予算が増加傾向にあることに注目しています。しかし、一番予算配分が多い「SNS」でも11.3%どまりで、一番少ない「イベント」でもまだ8.4%もあります。この点に着目すると、確かにデジタルチャネルへのシフトが進んでいる一方で、デジタル/リアルの様々なチャネルを漏れなくカバーするオムニチャネル化が当たり前になっていることも同様に言えるのではないでしょうか。
つまり、個々のチャネルの予算の増減率で見ると、デジタルチャネルへのシフトという現象が起きているものの、予算全体のバランスで見ると、依然としてデジタル/リアルどちらもカバーするオムニチャネル化は継続しているということ。そのため、「デジタルチャネルにシフト」という見出しに踊らされてデジタル一辺倒にするのではなく、デジタルに力を入れつつも従来型チャネルもしっかりカバーし、顧客の取りこぼしや接続ミスが起きないようにするのが大事なのです。
B2Bマーケティングのそれぞれのトレンドを、自ら顧客の立場で経験してみよう
ここまで、前回と合わせて7つのB2Bマーケティング最新トレンドをご紹介してきました。今回ご紹介した「インフルエンサーマーケティング」「AI活用MA」「デジタルシフト&オムニチャネル」以外にも、前回ご紹介した「LinkedInを中心とするソーシャルマーケティング」「ポッドキャスト」「動画コンテンツ」など、日本にもいずれ影響を及ぼすであろうキーワードばかり。私たちトライツでも特にこれらのキーワードに関する動きがあれば、引き続きこのブログを通じてご紹介していきます。
そして、この記事をお読みの皆さんも、ぜひこれらのキーワードを意識して情報収集していただきたいのです。例えば、展示会やセミナーに出席する際は、どのような人がスピーカーをしているのか、従業員や顧客のインフルエンサーが登壇するのかをチェックする。競合他社や先進的な企業のメルマガなどに登録してみて、どのようにMAの運用がされているかを客の立場で体験する。LinkedInやポッドキャストに登録してみて、どんな人・企業がどのように活用しているのかをウォッチする、といったことです。
今回ご紹介したようなトレンドについて、自ら顧客の立場で経験をしてみる。それこそが一番手軽に始められて、一番学びの多い情報収集の仕方なのだと思います。
参考:「Top 10 B2B Marketing Trends in 2023」(Cem Dilmegani, AIMultiple, March 4, 2023)