この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

2022年11月末にChatGPTが鮮烈な登場を果たしてから1年半。生成AIの業務活用が始まったというニュースを、新聞やWebニュースで毎日のように目にします。 

かくいうトライツでも、このブログの企画/構成やデータ分析結果のレポート作成など、色々な用途で生成AIを使っています。また最近では過去の膨大なブログ記事をすべて読み込ませて、B2B営業・マーケティングに関する質問にサッと回答できる「Trights AI」という名前のチャットボットも作成しました。PCでトライツブログにアクセスすると画面右下に現れますので、ぜひ色々質問してみてください。 

このように私たちの仕事にも徐々に浸透しつつある生成AIですが、ChatGPTなどの生成AIが最も得意とするコンテンツ作りにおいて、見逃せない動きが起きています。そこで今回は、「生成AI時代のあるべきコンテンツ作りの姿」について考えてみたいと思います。すでにコンテンツ作りに生成AIを活用している方も、これから検討するという方も、ぜひお読みください。 

著しい増加が予測されている「生成AIが作るWebコンテンツ」 

今回ご紹介する記事は、米国有数のB2B営業/マーケティング系調査会社であるDemand Gen Reportに掲載されている「Is Your Content Strategy Lacking? AI May Be To Blame」(あなたのコンテンツ戦略が不十分なのはAIのせいかも)。この記事を書いたのは、AIが作成したコンテンツを検出するシステムを開発・販売するContent Guardian社のCEOアンドリュー・カークカルディ氏。自社システムの宣伝につながる部分も多少垣間見えますが、それでも、生成AIにコンテンツ作りを頼り切ることの問題をわかりやすく教えてくれています。 

記事の冒頭でカークカルディ氏は、生成AIの登場がコンテンツ作りに及ぼすインパクトを紹介しています。 

ChatGPT2022年後半に登場して以来、他の大規模言語モデル (LLM) とともに広く普及しています。実際、「2030年までに99%のWebコンテンツが 、AIによってすべてまたは一部が作成されるようになる」という予測もあります。これは、人間によるオリジナルコンテンツ制作を生業とするマーケティング担当者にとって、ゆゆしき問題です。

冒頭でもご紹介しましたが、このトライツブログでも企画構成案の立案や、タイトル案のブレインストーミングなどでChatGPTを使っています。また、とくにこの半年以内で、生成AIが作ったであろうWebコンテンツを見る機会も増えているように感じます。 

生成AIによる大量・低品質なコンテンツ作りに急ブレーキ 

しかし、このような生成AIによるコンテンツ作りに急ブレーキがかかりつつあるというのです。記事を続けて見ていきましょう。 

最新のGoogleアップデートの結果、検索結果で「オリジナル」コンテンツ (つまり AI が生成したものではない) を優先し、AI によって作成されたとフラグ付けされたコンテンツにペナルティを課して検索結果でのランキングを低下させるようになっています。

「最新のGoogle アップデート」とは、2024年3月6日に発表されて5月から運用が始まっているもので、目的はスパム対策の強化。スパム対策ポリシーの1つとして、「生成AIによる低品質コンテンツの大量作成」をターゲットとしています。つまり、Googleが生成AIによって作られた低品質なコンテンツだと判断したら、自社のページが検索結果で上位に表示されなくなってしまうということなのです。 

コンテンツの作り手を見分ける2つの特徴 

ちなみに、どうやってそれぞれのコンテンツが生成AIによるものか、人の手によるオリジナルかを判断するのでしょうか。カークカルディ氏は自社のシステムでのこれまでの検出結果から、人間が作ったオリジナルコンテンツの特徴を2つ挙げています。 

難解性 
難解性/読みにくさとは、文章全体の構造が複雑であったり、引用句や会話が断片が挿入されていたりということ。(中略)文章の難解性が高いほど、人間によって書かれた可能性が高くなります。 

バースト性 
(中略)人間によって書かれた文章は、一文の長さや複雑さのレベルが、文ごとに異なります。その一方で、AI は同じような長さ/複雑さを持つ、はるかに均一で無駄のない文章を生成します。

「バースト性」という見慣れない単語が出てきましたが、これは統計学などで使われる言葉で、インターネットのトラフィック量や、高速道路での交通量などのようなデータ量が断続的に増減すること。これをコンテンツの文章に置き換えて、人間が書いたものはAIが生成したものに比べて、文章ごとに長さがまちまちだったり、文の構造の複雑さがばらばらだったりしているというのです。 

確かに、ChatGPTの回答など生成AIが作った文章は読みやすくてそつがないのですが、料理に例えると風味やクセが少なくて食感の変化もないので、続けて読んでいるとどうしても飽きてくるように感じます。 

それに比べると、人間が書いた文章は(この記事もそうですが)、どうしても文体や構成にクセがあったり、「バースト性」などという難しい言葉が登場したりと、スルッとは入ってこない。いちど咀嚼しないと飲み込みにくい文章になっている気がします。 

生成AIによるコンテンツ作りが普及したことで、かえって人間が作るコンテンツに価値が 

というわけで、今回ご紹介した記事の結論は「生成AIにコンテンツ作りを任せるのではなく、価値のあるオリジナルコンテンツを人間が作ることで、検索結果でより上位に表示されるようになり、マーケティング効果が高くなる」ということ。 

1年半前のChatGPT登場時には「生成AIによるコンテンツ作りの自動化・高速化」がB2Bマーケティングの大きなテーマとなっていました。ところが、いざそのようなコンテンツがあふれる状況になってみると、かえって人が作るコンテンツの方に価値が出て重要視されるようになるというのは、なかなか面白い話ではないでしょうか。 

あらためてコンテンツ作りの実力が問われる時代に 

ChatGPTなどの生成AIは便利です。よく工夫されたプロンプト(命令文)を投げかければ、即座にこなれた回答が返ってきますし、ブログ記事などのコンテンツ作りもお手の物。ただし、生成AIがこれだけ普及し大量のスパムコンテンツが作れるようになった現在では、多少の読みにくさはあっても人の手によって作られた中身のあるコンテンツの方に価値が出つつあります。 

私も「毎週のブログ記事作りを生成AIに丸投げできたらいいのに」と思う日がないこともないのですが、今回ご紹介した記事を読むと、AIに頼りすぎずに自分でネタを調べて構成を考え、表現を工夫しながら書き続けることの大事さがよくわかりました。 

ことコンテンツ作りにおいては、AIのような道具を使って楽をしようとするのではなく、しっかりと実力を身に付けなればならない。そうたしなめられているような気がします。 

参考:「Is Your Content Strategy Lacking? AI May Be To Blame」(Andrew Kirkcaldy, Content Guardian, Demand Gen Report, May 31, 2024