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新型コロナウイルスの影響により、関東や関西を中心とする各自治体で外出の自粛が要請されており、政府の対策本部では緊急事態宣言の対象エリアの全ての企業に対して「原則在宅勤務、最低でも出勤者を7割削減」を求めています。私のクライアント企業も軒並み在宅勤務となっていますし、私もこのブログを自室で作成しています。

とは言え、営業関連部門が在宅勤務となり、新しい顧客へのアポイントが取れないような状態が何週間も続くと、少しずつ自宅でできる業務がなくなってくるもの。普段は忙しくしているところに空き時間が出てくるようになり、自分自身やメンバーが有意義に空き時間を使えるようにと頭を悩ませているマネージャーもいらっしゃることでしょう。

そこで、外出・出勤の自粛が求められている現在の状況下でもできる、B2B営業/マーケティングに有意義な時間の使い方を、海外の調査レポートをもとに考えてみることにしましょう。

調査レポートその1:今が市場調査のとき?

今回ご紹介する調査レポートは、アメリカのワシントンDCにあるInsights Association社が4月上旬に発表した「Covid-19 Business Impact: A Time For Market Research?」。記事のタイトルを見て察しがついた方もいらっしゃるでしょうが、このような多くの人が自宅で仕事をしている状況は市場調査にもってこいだというのです。どういうことなのか、早速記事の中身を見ることにしましょう。

過去2週間で、複数のクライアントがこれまた複数のプロジェクトを中断/中止するのを見てきました。現在の状況では、そのような反応は直感的に理解できるものです。

ただ、そのような状況であるにも関わらず、市場調査への参加/回答の率が上がっているというのです。

「一般消費者およびB2Bを対象とした市場調査への参加が明らかに増えており、ユーザー数で39%、セッション数で52%の伸びを記録しています」InnovateMR社 Chris Young氏。

「これまでアプローチするのが難しかったミレニアル世代の、市場調査への回答率が上昇しているのは驚異的です。推測でしかありませんが、今後も増え続けると思われます」AskingCanadians社 Amber Bartlett氏

(中略)ほかの調査会社も同様のトレンドを報告しています。

調査レポートその2:市場調査への回答率が上昇している3つの理由

市場調査への回答率がこのように上昇している理由を、Insights Association社は以下のように考察しています。

理由その1:働く環境の変化による、使える時間の増加。
多くの回答者は自宅で仕事をしており、仕事をする時間が減少しているか、残念ながら一時帰休の対象となっています。そのため、市場調査に参加する時間が以前より増えています。

理由その2:人とのつながりや気分転換のニーズ。
仕事をする時間の多くを自宅で過ごす人にとって、誰かと話をするのは歓迎される息抜きになります。電話やビデオチャットを介して調査員と話をすることは、ソーシャルディスタンスによる孤立感の解消になりますし、不安感が高まり憂鬱な気分になりがちな一連のニュースからの気晴らしにもなります。

理由その3:話を聞いてもらいたいという要望。
私たちの多くは、このパンデミックに対して無力感を感じています。情報を提供しフィードバックをもらうことは、たとえオンライン調査であっても私たちの有力感を高めてくれます。加えて、自分が信頼している企業が前進しようとしているのを知ることは、生活の安定を感じさせてくれる嬉しい兆候にもなります。

調査レポートその3:今こそ市場調査に取り組むとき

そして、この記事では新型コロナウイルスの影響で多くの人が自宅にこもっている現在だからこそ、市場調査に取り組むべきだと述べています。

すべてが急速に変化しており、各企業は現在の社会的かつ経済的な変化に対応する必要があります。そして顧客が現在のパンデミックやその経済的な影響に対応するのに合わせて、企業は顧客やパートナーをどのように支援できるかを理解する必要があります。(中略)

そして新しい機会がそこにはあります。変化に合わせて、人々は新しい商品・サービスを必要とします。(中略)

さらに、今人々は情報を提供したいと感じています。ふだん新商品や新しい情報発信の方法についての市場調査を行うとき、人々にお邪魔をして回答してもらっていました。しかし、現在のような高ストレスな環境では、むしろ市場調査に参加したいという人が増えているのです。

前代未聞の回答数を叩き出したLINE&厚生労働省のオンライン調査

日本でも、4月に入ってからLINEと厚生労働省が実施した「新型コロナ対策のための全国調査」が話題になっています。1回目と2回目の両方とも、全国8,300万ユーザーのうちおよそ30%の2,400万超が回答する、というオンライン調査としてこれまで聞いたこともない実績が出ています。これは平成27年に初めてオンラインで実施した国勢調査(回答数1,900万超)を余裕で上回るもので、この危機的状況に対して積極的に情報提供し、協力しようという国民の思いが伝わってきました。

国が国民の多くに対して一律で実施した調査と、個別企業による調査を並列に議論することはできません。けれども、在宅勤務が続く中で手持ち無沙汰な時間が増える傾向があり、かつ気分転換や人との会話を求めるようになる、というのはまさに現在の日本の多くのビジネスマンの間で起こっていることですので、お金の使い方や働き方が激変するであろうアフター・コロナの時期を見据えて今のうちに市場調査をやっておく、というのは面白いアイデアだと私は思います。

アフター・コロナを見据えて今の状況だからこそやれることをやろう

今回ご紹介した記事は、外出・出勤の自粛が求められている現在の状況でできる、B2B営業/マーケティングに有意義な時間の使い方としての市場調査のご紹介でした。今の状況だからこそできることは市場調査以外にも色々とあります。例えば、以下のようなものはどうでしょう。

「スキルアップのための読書やオンラインセミナー/講座」
仕事に関連するもので「積ん読」状態の本があれば、今の時間を活かして読みましょう。また、無料~低価格でみられるオンラインのセミナーや講座もたくさんありますので、データ分析やデザイン思考など、仕事に生かせそうなコンテンツを探してみてください。トライツのブログの中にもデータ分析に関する記事がありますので、ぜひご覧になってください。

「業務の標準化や営業マニュアルの作成」
以前のトライツブログ(「仕事に直結する『最高の営業トレーニング本』のご紹介」)でもご紹介しましたが、自分で作る営業本がもっとも役に立ち何度も読み返したくなる営業本になります。自分のやっている活動やその背景となる考え方を棚卸してみることで、きっと気づきや学びがあるはずです。

「オンラインコンテンツの開発/作成」
顧客の多くも在宅で勤務しており、オンラインで情報収集する時間が増えています。前回のトライツブログ(コロナ時代の営業「やり過ごす」のではなく「適応し力を蓄える」ための3つの打ち手)でもご紹介したように、そのような顧客とつながる方法として、オンラインコンテンツを充実させるのがおすすめです。

市場調査に限らずこれらの打ち手に共通しているのは、アフター・コロナを見据えて力を蓄えておくということです。緊急事態宣言が出されている現在、普段ならやれている業務もできなくなり、在宅でやれることも限られてくるかもしれません。しかし、そのような状況だからこそ、「普段はなかなか手を付けられないことに取り組めるのだ」と、前向きに考え方を切り替えるのが必要なのではないでしょうか。

トライツコンサルティングは、営業スキルアップや営業活動の標準化、オンラインコンテンツの設計/開発など、アフター・コロナに飛躍するための営業改革を支援しています。「アフター・コロナを見据えて営業のやり方を見直したい」「営業スキルを強化したい」とお考えの方はご相談ください。

参考:「Covid-19 Business Impact: A Time For Market Research?」(Insights Association, April 6, 2020)