5月も下旬になり、6月の株主総会や7月の人事異動・組織体制の変更などに伴う人事情報が新聞で大きく取り扱われるシーズンになりました。これをお読みの方の中にも、異動・昇進される方がいらっしゃることでしょう。

営業に関係する職務役割といえば、営業担当に始まり、営業マネージャーや営業企画/営業推進といったものが一般的です。また、大型顧客を担当するチームにはそのチームを束ねるアカウントマネージャーという役割がありますし、最近ではセールスイネーブルメントを担当するチームや室課が設置される企業も増えてきています。

ここで海外に目を転じてみると、B2B営業組織には営業マネージャーやアカウントマネージャーというなじみのある職務以外に、セールスコントローラーという見慣れない職務があるのが一般的です。そこで、今回のトライツブログは、「B2B営業における『セールスコントローラー』の仕事とその重要性」についてご紹介します。

セールスコントローラーの仕事と求められるスキル

海外の営業組織でよく見られる「セールスコントローラー」という職務。コントロール=管理、と置き換えると日本でいうところの営業管理のように思えますが、そこには違いがあります。

セールスコントローラーの仕事は以下のようなものです。

  • 営業プロセスの設計・評価検証・最適化
  • 営業計画・目標への進捗管理と分析、予測
  • SFA等の営業システムの活用
  • 営業施策/営業ツールの作成・管理・展開・評価検証
  • 営業に関するプロジェクトの管理

これを見てお分かりのように、営業担当者や顧客に直接関わるのではなく、「営業プロセス」や「営業システム」「営業施策」「営業ツール」といった、営業活動を行い目標を達成するために必要な環境・道具を整備するのがセールスコントローラーとしての役割です。

様々な企業の営業企画の仕事を見る機会がよくありますが、「営業計画・目標への進捗管理」や「営業施策」「営業ツール」などにはしっかりと取り組んでいるものの、「営業プロセス」は現場任せ、「営業システム」は導入の旗振りはするもののその活用は現場任せとなっているところが多いように感じます。

海外の求人サイトを見るとセールスコントローラーについての求人が数多く出ています。このことからもセールスコントローラーという職務が一般的なものであることが分かるのですが、それを見ているとこの役割を果たすために必要な能力が色々と記載されています。どの業界でも共通して求められている能力は、おおよそ以下のようになっています。

  • コミュニケーションスキル
  • 数学的な思考力
  • BIツールなどを使用した高度なデータ分析スキル
  • 高度なSFAシステムの活用スキル
  • プロジェクトマネジメントスキル

冒頭の「コミュニケーションスキル」はどこでも求められるものなので置いておくとして、「数学的な思考」「データ分析」「システム活用」などサイエンス/IT周りのスキルが強く求められていることがわかります。様々なITツールを駆使してデータを分析し、ロジカルに営業プロセスやツール/施策をデザインしていくのが、セールスコントローラーの仕事なのです。

SFAやセールスイネーブルメントの成功に欠かせないセールスコントローラー

と、ここまでセールスコントローラーという職務について紹介してきました。
今回これをテーマに取り上げたのは、「SFA」や「セールスイネーブルメント」など、最近話題となり日本のB2B営業にも取り入れられてきているシステムやコンセプトがこのセールスコントローラーを前提としたものであるにも関わらず、日本のほとんどの営業組織にはセールスコントローラーが不在だということに気が付いたからです。

これまで見てきたとおり、SFAなどの営業システムの活用はセールスコントローラーにとって大事な業務です。SFAの導入に合わせて自社の営業プロセスを見直し、SFAの利用状況を見ながら営業プロセスを随時アレンジしていく、という本来のSFA活用の姿をイメージすると、SFA活用のためにセールスコントローラーという役割が不可欠だということが分かります。

また、「営業ツールや営業研修など様々な営業施策をトータルでデザインし、それぞれの施策のパフォーマンスを数値化して管理する」というセールスイネーブルメントは、そのものがセールスコントローラーの仕事とほぼ同じです。セールスイネーブルメントに取り組むためには、セールスコントローラーに求められる「数学的な思考力」や「データ分析スキル」を活かして、各種の営業施策を評価検証しなければなりません。

このように、SFAやセールスイネーブルメントなどの最近話題のシステムやコンセプトが「セールスコントローラー」という仕事と切っても切れない関係であるにも関わらず、SFAというシステムだけ、セールスイネーブルメントというコンセプトだけが単独で導入されている。そのために「SFAを入れたのに営業プロセスの改善は手付かず」「セールスイネーブルメントチームを立ち上げたのに、既存の施策を運用するのに手一杯で結果の検証まで至っていない」という営業組織が多くなっているのではないかと私は思うのです。

そのように考えると、SFAによって海外では多くの企業で成果を上げているのに対して、日本の企業では「上手くいった」という話を身近に聞くことがあまりないのもうなずけます。SFAやセールスイネーブルメントなどの取組を成功させるための必要条件の1つにセールスコントローラーの存在があるのです。

セールスコントローラーに学ぶ営業の組織づくりの考え方

このセールスコントローラーという職務ですが、営業活動をファネル(プロセス)で管理することが当たり前の、実に欧米らしいものだと言えると思います。そして、このような職務が存在している理由として、前回のトライツブログでも触れた「営業活動を機能分解してそれぞれに改善する」という彼らならではの基本思想があるのだと思います。

日本のB2B営業組織では、ようやくマーケティングと営業が分かれるようになってきましたが、欧米や東南アジアではいわゆる「営業」が、電話やチャットで商談の初期~中期を対応するインサイドセールス、実際に顧客を訪問して受注までの対応するリアルの営業担当者、受注後に顧客の自社商品の活用促進と成果創出をサポートするカスタマーサクセス、の3つに分かれるのが一般的になっています。

そのように営業を機能で分解し、必要な組織/職務を明確に規定して業務の効率化を追求するという彼らの考え方には、大いに学ぶべきところがあると思います。

トライツコンサルティングでも、これまで多くの企業のいろいろな営業を機能分解し、その生産性を向上させてきました。このような記事を見ると、米国での取り組みと通じるところが多いように感じます。具体的な事例などお聞きになりたい、あるいは自社の取り組みについて相談したいなどありましたら、下記よりお気軽にご連絡ください。

参考:「Sales Jobs in B2B」(QYMATIX)