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営業活動の中で、時間がかかって面倒なのものの1つが提案書づくり。最近では課題解決型営業など、単純にモノだけを売り込むのではなく、個々の企業の課題に応じてサービスやオプションまで含めた課題解決ソリューションを設計する提案も増えています。そのような提案の場合は、個々の企業が直面している課題を整理したり、ソリューションの全体像を示したり、個別にPowerPointのスライドを作ることになるので大変です。
しかし、最近の生成AIの進化によって、この面倒な提案書づくりがかなり楽になりそうなのです。そこで今回は、高品質なスライドを自動で作成してくれるAIツール「GenSpark」とその活用法についてご紹介します。提案書づくりで忙しい方はぜひお読みください。
提案書などのスライド資料作成の救世主?「GenSpark」とは
GenSparkは、企業向けに設計されたAIによるコンテンツの自動生成ツールです。商品紹介資料に提案書、メールテンプレートなど、営業活動に必要なさまざまなドキュメントを、生成AIの力で迅速かつ高品質に作成できます。ChatGPTと同様に専門知識がなくても直感的な操作で利用できるため、業務効率化に大変役立つツールです。
GenSparkの特徴は、オリジナルのデータさえあればデザインが優れた資料を作ってくれること。2023年のブログ「AIツールを使ってプレゼンテーション資料が驚くほど簡単に作れる!」でGammaというツールによる提案書作成についてご紹介しましたが、当時のGammaが貧相に見えてしまうほどの長足の進歩を遂げています。
前回のトライツブログの記事をGenSparkでホワイトペーパー化してみると……
どれくらいすごいのか、実際の作成例を見てみましょう。以下にお見せするのが、GenSparkに前回のブログ「数字でわかる顧客の姿!営業担当者向け財務分析のはじめ方」をもとにホワイトペーパーを作ってもらったもの。実際のプロンプトも以下のように、必要最小限のシンプルなものです。
https://trights.co.jp/blog/14968/
上記のブログをもとに3~5ページのホワイトペーパーを作成してください
このプロンプトをもとに生成された5ページのホワイトペーパーがこちらです。





デザインもシンプルかつキレイですし、ブログの内容を読み取ってページ構成を考え、説明を補足し、かつ数字を読み取って自動でグラフまで作ってくれています。正直、2年前のGammaが比べ物にならないくらいの出来だと思います。
生成AIがやりがちなミス①:具体的な情報の誤り
とはいえ、まだまだ不完全な箇所も多々あります。例えば、財務分析が営業に必要な理由をまとめた2ページ目の左側を見てください。

赤丸を付けたBANTCのCが、本来の「競合」ではなく「課題」となってしまっています。このBANTCの各項目の解説はもともとの記事の中になかったのでAIが良かれと思って補ってくれたのですが、情報が間違ってしまっています。
生成AIがやりがちなミス②:情報の欠落
また、以下の3ページ目以降では財務分析の具体例を紹介しています。

「売上高営業利益率」と「総資産回転率」の計算例がグラフ化されていますが、このスライドを見るだけでは何のことやらよくわかりません。実はもともとの記事では、「実際に皆さんが営業担当者として、関東に本社を置く某大手ホテルチェーンを担当していたとして話を進めたいと思います」として、大手ホテルチェーンの実際の財務数値をもとに各指標の数値を計算していたのですが、この大前提がすっかり抜け落ちているので、「何のグラフが示されているのかわからない」という状態になってしまっているのです。
このように引用間違いや、大事な情報の欠落など、不完全な部分がいろいろあるものの、全体的にはかなりレベルの高い資料が一発で作れるようになっています。
他の生成AIやSFAと組み合わせることで、提案書の初稿を自動化可能に
今回はブログ記事をもとにホワイトペーパーを作ってもらいましたが、ChatGPTやPerplexity、NotebookLMなどの他AIツールに提案のストーリーを考えてもらい、それをGenSparkに読み込ませて提案書を作ることも可能です。提案したい自社商品の資料と、SFAに入力している顧客の課題情報などを読み込ませることで、提案書づくりのかなりの部分を自動化できるようになっているのです。
生成スライドのPowerPointでのダウンロード機能はまだ発展途上
また、このGenSparkはこれまでPDFでダウンロードできるだけでしたが、最近(2025年5月12日時点)では直接PowerPointとしてダウンロードできる機能がベータ版で提供されています。先ほどの3ページ目をダウンロードしたのがこちら。

よく見ると、「総資産回転率」の左のアイコンがうまくコピーできていなかったり、中国語(繁体字)のフォントが使われているため漢字表記がちょっと異なっていたりと、ベータ版なりの出来になっています。直接PDF上で編集する方がキレイなデザインを保てますので、Adobeのライセンスをお持ちの方はPDFでダウンロードしてAdobe上で加工・修正することをお勧めします。
GenSparkなどの生成AIが得意なことと、生身の人間が得意なこと
「GenSparkがすごい!」という噂を聞いて、ゴールデンウイーク中に色々遊んでいたのですが、資料の出来の良さは想像していた以上でした。資料にするために必要な情報をピックアップし、それが不足していれば間違えこそはするものの勝手に補ってくれ、資料として完結できるように構成まで考えてくれます。コンサルタントの1~2年目でやるような、既存の情報をもとに資料をまとめるといった作業なら、ほぼ代替できるといってもよいのではないでしょうか。
ただし、人間にはできるけれどもAIが苦手なことがあります。それは、既存の情報をもとに新しい枠組を考えるということ。例えば、提案書の中に複数のソリューションが並列されているとします。それらのソリューションを組み合わせて1つのソリューション名を作ったり、そのソリューション同士の関連性を図解で示したりということは、まだまだAIが上手にできません。推論機能が発達してきているとはいえ、特に図解などを用いて新しいアイデアをカタチにするのは、まだ当面は人間の役割でしょう。そして逆に言えば、こういった人間ならではの価値を考えてカタチにできる人でないと、AIに取って代わられてしまう、ということでもあると思うのです。
これからの営業に求められるのは「AIと共創しながら、価値ある提案に仕上げる力」
提案書づくりの負担を大きく軽減してくれるGenSparkのようなAIツールの登場は、営業活動における「作業時間の短縮」だけでなく、「提案品質の底上げ」という面でのメリットもあります。とりわけ、膨大なSFAデータや商品資料など、社内に点在する情報を組み合わせて提案ストーリーを構築する作業は、AIとの協業によって飛躍的に効率化できます。
一方で、AIが示すアウトプットを鵜呑みにせず、人間ならではの目線で内容の妥当性をチェックし、脱落してしまった文脈を補い、より伝わりやすいストーリーや図解へと昇華させる力が、今後ますます重要になっていくでしょう。これからの営業に求められるのは、「資料をつくる力」そのものではなく、「AIと共創しながら、価値ある提案に仕上げる力」です。GenSparkのような生成AIをうまく使いこなせる人が、忙しい営業現場で一歩抜きん出た存在になると思うのです。