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リモートワークが多くの企業で取り入れられるようになってから1年以上経ち、在宅勤務とオフィスに出社しての勤務を組み合わせる「ハイブリッドワーク」という言葉がTVや新聞などでも使われるようになりました。自宅やオフィス、またサテライトオフィスと呼ばれる小規模の勤務場所を組み合わせる働き方を、コロナ以降も継続しようという企業が私の周りでも多くあります。

自宅やオフィスなど、勤務場所のハイブリッド化が継続するとなると、そのような人たちを相手にするB2B営業の顧客接点も当然ハイブリッド化が続くことになります。TeamsやZoomなどのWeb会議に、対面での打合せ、メール、電話、FacebookなどのSNSでつながっている顧客とはそのチャットツールでやり取りしているという方も少なくないことでしょう。

このように様々なツールの中から相手やTPOに合わせたものを選べるのは大きなメリットではあるのですが、その反面、多くの人と同時にやり取りをしているような場合は、どのツールを使ってなんの話をしていたかを把握しづらくなっています。そこで、今回のトライツブログでは、ハイブリッド化している顧客接点を統合して最適化するテクノロジー「セールスエンゲージメント」についてご紹介します。Web会議の活用など、顧客接点のハイブリッド化に取り組んでいる方はぜひお読みください。

セールスエンゲージメントって?

いきなりセールスエンゲージメントなどと言われても、いまいちピンとこないという方も多いのではないでしょうか。受験英語を勉強した方には、エンゲージの和訳を「婚約」だと記憶している人もいるかもしれません。エンゲージリングを日本語で言うと婚約指輪ですね。ただ、セールスエンゲージメントなどB2B営業やマーケティングの文脈で使うときは、「つながりをつくる」「相手とのやり取りを通じて関係を深める」など、もう少し広い意味合いで使います。

そのため、セールスエンゲージメントとは、顧客とのやり取りを通じてつながりをつくって関係を深めること。そして、これからご紹介するセールスエンゲージメントツールとは、顧客との様々な接点を統合したうえでAIなどの機能を使い、顧客との関係性向上に最適なコミュニケーションを取れるようにするツールを意味します。

顧客接点を集約・統合し営業活動を最適化する

例えば、以前から商談を進めている顧客に対して次のアポイントを取ろうとしている場合、自分が使っているツールをいちいち確認しなくてはならない、という手間が発生します。

SFAを見てその顧客との一連のやり取りを振り返り、直近の打合せを確認します。事前に送っていた当日の資料を見るのに、メールボックスの送信済みトレイの中を探します。当日はリモートで打合せをしていたので、打合せ時の音声ファイルやチャットでのやり取りを確認するにはTeamsを開かなければなりません。また、その会議の後にフォローの電話を入れていたので、その電話の内容をメモしているノートを見ます。そこで次回の宿題などを確認した上で、アポイント依頼のメール文を作成するのですが、候補日を提示するためにスケジューラーをチェックしなければなりません。

このように使っているツールが増え、それらが分断されているため、余計な手間が発生しているというのが、顧客接点のハイブリッド化の最大のデメリットです。このデメリットを克服するために、メールやWeb会議ツール、電話やスケジューラーなど顧客接点で使用するツールを統合して効率化しようというのがセールスエンゲージメントなのです。

先ほどの例をセールスエンゲージメント化すると、操作するツールはセールスエンゲージメントツール1つだけ。これに様々なツールの情報を集約するのです。顧客名を検索して商談の経緯を確認すると、SFAに入力してある内容が表示されます。メールやTeamsとも接続しているので、その顧客に対して送っているメールの添付資料も簡単に確認できますし、当日の音声ファイルはチャットのやり取りもすぐに見られます。営業用の電話システムを導入しているところであれば、打合せ後のフォロー電話で話した内容やその場で打ち込んだメモも確認可能です。そして、これらの情報を一元管理しているのでシステムが自動でアポイント依頼用の文面を作成してくれるので、それを一部手直ししたり、空欄箇所の穴埋めをすればすぐにメールを送れます。もちろん、アポイントの候補日は、連動しているスケジューラーの空き状況をシステムが見て自動で入力しています。

さらに、ただ顧客接点を集約・統合するだけでなく、より受注確率が高まるように次のアクションを最適化するというのが、セールスエンゲージメントのもう1つの特徴です。ですので、先ほどのアポイント依頼の例では、現在の商談のステップなどから見て受注につながりやすい面談のテーマやその種類(対面かリモートか)、アポイント成立につながりやすい連絡手段(電話かメールかSNSか)とそれを送る時間帯、などをシステムが判断してくれます。そのため、最適な手段・内容で顧客とのコミュニケーションを取れるようになる、というものなのです。

ここまでの内容をうまくまとめているのが、セールスエンゲージメントの名著「Sales Engagement」の中の一文です。

『次のコミュニケーション革命』とも呼ばれるセールスエンゲージメントでは、人間である売り手と人工知能という最高の組合せによって、適切なタイミングで適切な接点を使って顧客にコンタクトし、適切なメッセージでやり取りをおこなうということが、より簡単かつスピーディに実現可能になります。その結果、多くの顧客に対して人間味のある営業コミュニケーションを取れるようになるのです。

コロナ禍で急拡大するセールスエンゲージメント市場

コロナ禍により世界中のB2B営業がリモートワーク/ハイブリッドワークに移行したことにより、このセールスエンゲージメント採用の動きが加速しています。欧米ではコロナ以前から、Web会議や電話、チャット等のリモートでの営業活動を進めている企業ではすでに採用されていました。コロナ以降は、対面での営業活動が主体だった企業もリモートでの営業活動を取り入れるようになり、市場が急拡大しています。

そして、2020年末には国産ツール「Srush」のベータ版がリリースされ、数か月のうちに150を超える企業で仮導入されるなど、セールスエンゲージメントの波は日本にも届きつつあります。

セールスエンゲージメントでメリットを得るための条件

ここまで、セールスエンゲージメントのメリットや機能について、簡単にご紹介してきました。興味を持たれた方や、「今すぐ使ってみたい」と思われ方もいらっしゃるかもしれません。ただ、ここで1点注意してほしいことがあります。それは、このセールスエンゲージメントというのは、使い手を選ぶツールだということです。

先ほどの例でご紹介したように、セールスエンゲージメントツールは、SFAやTeams、メール、SNSなどの既存ツールを統合し最適化するものです。そのため、顧客とのコミュニケーション用に数多くのツールを既に使いこなしていて、それらが分断されていることで仕事に支障をきたしていて困っている、ということがメリットを得るための条件になります。

特に「最適化」の恩恵を受けるには、最適な顧客や最適な商談を判断する元データとして、SFAに顧客情報や商談情報が蓄積されていて分析可能な状態になっていることが大前提となります。SFAの入力率を高めたり活用を促進する機能をセールスエンゲージメントツールは持っていません。SFAをはじめ、それぞれのツールを単体ではある程度使いこなしている、という営業組織でないと導入のメリットはないのです。

トライツブログでは引き続き「セールスエンゲージメント」の情報収集・発信をします

ここまでお読みになって、「SFAもある程度は使いこなしているし、Web会議など顧客接点のハイブリッド化も進んでいるから、セールスエンゲージメントを使ってみたい」という方は、さらにセールスエンゲージメントについて学んでみることをお勧めします。現在、代表的なセールスエンゲージメントツールとしてOutreachYeswareの2つがあります。Outreachはセールスエンゲージメントという市場を立ち上げた業界の最古参かつ最大手。セールスエンゲージメントと言えばOutreachと言われる企業です。それに対して、急成長しているのが新興のYesware。それぞれ、YouTubeに公式チャンネルを開設しており、様々な動画を公開しています。その中でも特にお勧めなのが以下の2つ。
Outreach Product Tour」(Outreach)
What Is Yesware?」(Yesware)
2~3分と短めの動画ではありますが、それぞれのツールの使用イメージがつかめると思います。

そして、「まだ顧客接点がハイブリッド化していない」「既存のツールを使いこなしてるとはいえない」という方は、TeamsなどのWeb会議システムなどを導入し、それらやSFAなどの既存システムの活用促進から始めましょう。使いこなしていくうちにそれぞれのツールの利便性を体感しつつ、それらが分断されていることの不便さを感じるようになってくるはずです。そうなって初めて、セールスエンゲージメントでメリットを得られるレベルに組織が成長したと言えるのです。

トライツブログでは引き続きセールスエンゲージメントについて調査し、定期的に情報発信いたします。『次のコミュニケーション革命』であるセールスエンゲージメントは、これから要注目のテクノロジーです。

参考:
In Search of the Perfect Sales Technology」(Kathryn Aragon, Sales Hacker, Jun 27, 2021)
「Sales Engagement」(Manny Medina, Max Altschuler, Mark Kosoglow, Wiley Publishing, 2019)