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ChatGPTなどのAIについての記事が毎日ニュースになっていますね。先週は日本で開催されたG7のデジタル・技術相の会合で、AIを適切に利用するための5原則を策定するなど、安全性に配慮したうえでさまざまな分野での活用がさらに進んでいきそうです。

そのような中、B2B営業でのChatGPTの活用シーンと、良い指示文(プロンプト)を書くポイントをうまくまとめた記事が発表されましたので、その中からさらに使えるところを抜粋してご紹介します。どのような場面で使えるのか、具体的にどんなプロンプトを書けば期待以上の回答が返ってくるのか、早速見ていきましょう。

ChatGPTをB2B営業に活用できる6つのシーンとは

今回ご紹介する記事は「Top 6 Ways To Use ChatGPT For B2B Sales」(ChatGPTをB2B営業に活かす6つの方法)。この記事を発表したSalesBlink社はもともと、見込客発掘のためのSaaSツールを開発・販売していた企業なのですが、昨年末ごろに登場したChatGPTの衝撃を受けてメインのツール/サービスをChatGPTで動かすように事業を大転換しています。

そのため、以下にご紹介する活用シーンやその事例の中で「見込客の発掘」「営業メールの送信」「SaaSツール」という言葉がよく出てきますが、そういう背景があるのだと思いながら読んでください。

以下、記事の中にあった6つのシーンの中から日本の私たちにもイメージしやすいシーンを抜粋し、記事にあったプロンプトを日本語に翻訳したものと、それに対してChatGPTが日本語で返してきた回答をセットにしてご紹介していきます。

#1:見込客のペルソナの調査

自分たちの商品やサービスをもとに、どんな役職の人がターゲットになるのか、その人の課題はどんなものかをAIに教えてもらいます。具体的なプロンプトと、それに対するChatGPTの回答は以下の通りです。

あなたは営業向けのSaaSツール「顧客発掘Pro」を扱っており、このツールは見込客向けの営業アプローチを自動化できます。このツールが対象とする顧客のペルソナを、具体的かつシンプルに3つ作成してください。それぞれのペルソナは以下の項目で表現してください。
・名前
・役職
・問題点

それらしいペルソナが見えてきましたね。これにさらに業種や事業規模などを加えていけば、名簿データからアプローチする条件を絞り込んだり、セミナーなどの企画を考える際のヒントになりそうです。

#2:ソーシャルメディア上でのパーソナルブランド構築

これは、SNS上へ投稿(ポスト)する文章を自動で作ってもらうというもの。私もトライツブログをLinkedInで紹介するときは、AIに文章を考えてもらい、それに手を加えることで時間を効率化しています。日本ではSNSを使ったB2B営業はまだ下火ですので、このシーンのプロンプトと回答例は割愛して次に進みます。

#3:見込客向けの初回送付用メール文章の作成

これもChatGPTにプロンプトを与えることで、いいひな形が返ってきます。プロンプトと回答の例を見てみましょう。

営業部門のトップが見込客を発掘するSaaSツールに興味を持つようにする、営業メールのスクリプトを書いてください。全体的にフォーマルではなく、親しみやすい文体で書いてください。

[営業部門のトップ様]や[あなたの名前]、[会社名]を書きくわえたら、使えそうなメールの文章が出来上がりました。「こんにちは!」で始まって「敬具」で終わるところは、ChatGPTの愛嬌だと思って修正してあげましょう。

#4:見込客を見極めるための質問の作成

見込客が自社の商品に適しているかを見極めるための質問を作るように、AIに指示します。これ以降の5番目と6番目のプロンプトと回答例の方が、日本の私たちの営業活動の参考になると思いますので、このシーンの例も割愛します。

#5:プレゼンテーションスライドや営業トークの作成

プレゼンテーションスライドの作成方法については、以前のブログ「AIツールを使ってプレゼンテーション資料が驚くほど簡単に作れる!」で具体的にご紹介していますのでこちらをご覧ください。ここでは、営業トークを作るためのプロンプトと、それへのChatGPTの回答例をお見せします。

あなたはコピーライターです。1分以内で話せる、見込客に対する以下のSaaSツールのセールストークを考えてください。
ツール名:顧客発掘Pro
価格:ユーザー1人につき月額1,000円
顧客メリット:手作業を減らし完全に自動化することでムダな時間を削減できる
ツールの特徴:AI技術の活用
顧客メリットにフォーカスし、ややフォーマルかつ親しみやすい口調にしてください。

完ぺきではないものの、なかなかの出来ですね。プロンプトの「ツール名」「価格」「顧客メリット」「ツールの特徴」を書き換えることで、いろいろな商品の営業トークの叩き台があっという間に作れてしまいそうです。

#6:営業担当者の育成

最後は、営業担当者向けのロールプレイに役立ちそうな使い方です。商品に対して顧客や代理店からどんな反対意見が出てきそうか、そしてそれにどう答えればよいかをAIに考えてもらっています。

あなたは企業に見込客を発掘するSaaSツールを提供する代理店オーナーです。
私は、見込客の発掘から、営業メールの送信、そしてEメールでのフォローアップまで、営業プロセスを自動化するSaaSツールを提供していることをプレゼンテーションしています。
これに対するあなたの反対意見を5つ挙げてください。
その後、それぞれの反対意見に対する、効果的な反論の仕方を教えてください。

こういったことを準備しておけば、実際に顧客や代理店から反対意見が出されたときにもうまく回答することができそうです。5番目までのシーンはこれまで見たことがあったのですが、ロールプレイでの活用法は初めて見ましたので、皆さんにもぜひご紹介したいと思ってこの記事を今回の題材に選びました。

AIが期待以上の回答をしてくれるプロンプトを書く8つのポイント

いかがでしょうか。どういうプロンプトを書いたらどんな回答を返してくれるか、イメージが湧いたのではないでしょうか。最後に、この記事の中盤にある「良いプロンプトを書くための8つのポイント」をご紹介します。

1. 明確さ:求める情報を明確に定義する。回答に期待する文体、構造について具体的に説明する。

2. 正確さ:AIを混乱させる可能性のある曖昧な質問は避ける。

3. 文脈:AIがテーマを理解し、適切な回答を導き出すのに役立つ十分な背景情報や文脈を提供する。

4. 条件: 特定の範囲や条件下で回答してほしい場合は、その条件を明示的に記載する。

5. 回答形式:リスト、ステップバイステップのガイド、簡単な要約など、望ましい回答の形式を記載する。

6. 試行錯誤: さまざまなプロンプトのバリエーションを試して、望ましいアウトプットを生み出す最も効果的な表現を探す。望ましい結果が得られるまで、プロンプトを改良し続ける。

7. 分割質問:複数の情報を回答してもらいたいときは、シンプルで焦点を絞った質問に分割する。これにより、それぞれのトピックについて十分な回答が得られ、最終的なアウトプットに抜け漏れがなくなる。

8. 繰り返す:AIが満足のいく回答をしない場合は、プロンプトを言い換えたり、より具体的な情報を入れたりして望ましい回答へと導く。

これまでに見てきたプロンプトにこれらのポイントがちゃんと含まれていましたね。
例えば、メールの文章やセールストークを作る際には「親しみやすい文体で」のように文体を明確に伝えるようにしていました。また、セールストークを作るプロンプトで「ツール名」「価格」「顧客メリット」「ツールの特徴」という項目を箇条書きで指定したのは、4番目のポイント「条件」そのものです。また、ロールプレイのシーンでAIに対し「あなたは企業に見込客を発掘するSaaSツールを提供する代理店オーナーです」と立場を指定してあげることは、3番目のポイント「文脈」だと言えるでしょう。

AIを有効活用して期待以上の回答を手に入れる上で大事なポイントですので、参考にしていただければと思います。

AI活用に不可欠なローコンテクスト・コミュニケーションを使えるようになろう

ここまでプロンプトの例を見てきて、「ずいぶん細かく指示しなくちゃいけないんだな」「ここまで書くのは面倒。察して回答してくれたらいいのに」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。実際、「異文化理解力」(著:エリン・メイヤー、英治出版、2015年)によると、私たち日本は世界一のハイコンテクスト(文脈依存型)文化。「一を聞いて十を知る」という言葉があるように、すべてを言わなくても察し合うコミュニケーションに慣れています。

これに対し、ChatGPTなどのAIはずいぶん気を利かせてくれるようになったとはいえ、いまだにローコンテクスト(文脈不在型)のツール。そのため、AIを使いこなすためには、文体や情報などの得たい内容、AIが考えるために必要な各種の条件をすべて明確に伝え、それを何度も試行錯誤するというローコンテクスト向けのコミュニケーションに切り替える必要があるのです。

ぜひ今回の記事でご紹介したようなプロンプトの例を色々と探して見るようにしてください。そしてそれを実際に自分の業務に置き換えて試してみる。このような経験を積み重ねていくことで、ChatGPTなどのAI活用に不可欠なローコンテクスト向けのコミュニケーションを身に付けられるようになると思います。

今回ご紹介したChatGPTの活用法だけに限らず、今の時代の営業人材に必要なスキルとその育成方法を考えるセミナー「営業幹部/マネージャなら知っておきたい!ChatGPT時代に活躍できる営業人材を育てるには」を、5月24日に東京国際フォーラムにて開催いたします。今回の記事を面白いと思われた方は、ぜひご参加ください。

参考:「Top 6 Ways To Use ChatGPT For B2B Sales」(Sushant Shekhar, SalesBlink, April 26, 2023)