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水晶玉にタロットに手相、生年月日など、未来を占う(と言われる)道具には事欠きません。ドラえもんのタイムマシンにバック・トゥ・ザ・フューチャーのデロリアンなど、アニメや映画でも「未来を覗きに行く」ための道具が出てきますし、未来へのタイムトラベルを題材とした映画は数多くあります。それだけ、未来を知りたいという思いは多くの人に共通なものなのでしょう。

今回のトライツブログでは、先週に続いて「未来の営業」を覗きに行きます。未来のB2B営業がどのようなものなのか、そこで私たちに求められるスキルや、営業活動のプロセス、マスターすべきツールが何なのか、見に行きましょう。

前回のおさらい:「未来の営業」とは

今回も、世界有数の調査会社Forrester社の取締役であり、B2B営業向けシステム企業XANT社の最高戦略責任者でもある、デイブ・ボイス氏のLinkedInでの投稿記事「The Future of Sales」を題材に、B2B営業の未来の姿を見ていきます。まずは、前回のトライツブログ「決定版!『未来の営業』(前編):未来の営業に不可欠な5つのキーワード」のおさらいから始めましょう。

デジタルツールを自由自在に操ってリモート購買を継続するデジタルネイティブな顧客に対応するために、未来の営業に重要なキーワードとしてボイス氏が挙げているのは、「迅速」「常にオンライン」「顧客中心」「豊富なコンテンツ」「テクノロジー活用」の5つ。オンラインで情報収集をおこなって自ら主体的に購買活動を進めていく顧客に対し、営業は顧客中心で購買が進むことを理解した上で、常にオンラインで迅速に顧客対応し、あらかじめ用意しておいた豊富なコンテンツを駆使して顧客が必要とする情報を提供する。そして、テクノロジーを活用することでこれらの業務を自動化・効率化する。これが未来の営業の姿なのです。

そのような未来の営業へと私たちが変わるために、組織として手に入れるべきスキル、プロセス、ツールとはどのようなものなのでしょうか。まずはスキルからご紹介します。

未来の営業組織に求められる「コンテンツ作成」スキル

  • デジタルネイティブ世代の価値観
  • マインドセットの理解
  • デジタルネイティブ世代とのコミュニケーションの速さについての理解
  • ビジネス文書の作成能力
  • 自社商品とその活用事例、投資対効果の試算方法、競合商品などについての詳細の理解
    ※コンテンツを強化する必要があるなら、これらをコンテンツ化すること

デジタルツールを使いこなしている顧客の価値観と、そのような顧客とのコミュニケーションの方法を理解する。商品の活用事例や投資対効果シミュレーションなど、顧客が購買活動を進めるために必要な詳細情報を理解する。そして詳細情報を分かりやすく文章にまとめてコンテンツ化する。これが未来の営業組織に求められるスキルだとボイス氏は述べています。

このスキルの中でとりわけハードルが高いのが、商品の詳細情報を理解し文章にまとめてコンテンツ化するスキルでしょう。すべての営業担当者がこのスキルを持っている必要はありませんが、このスキルを持つ人があまりに少ないと商品や顧客が多岐にわたるような事業では、顧客向けのコンテンツ作成が遅々として進まないということになってしまいます。事業の生産性を高めるだけでなく、未来の営業組織から求められる人材になるためにも、コンテンツを作成するスキルを持つことはこれからの営業担当者にとって大きな武器になるものと思います。

未来の営業組織に求められる「高速化された」プロセス

次に、未来の営業組織に求められるプロセスについて、見てみましょう。

すべてのプロセスをチェックし、本当にそのプロセスが必要なのかを厳しく確認してください。現在の購買担当者は辛抱強くなく、売り手の社内承認を待っていたくなどありません。不要なステップを排除し、承認プロセスは自動化し、見積の合理化などを通じて、プロセスを高速化しなければなりません。(中略)
最もプロセスを自動化しにくい大口顧客に対してであっても、すべての商談のプロセスを個別対応にする必要はありません。すべてのプロセスについて、それを定義し、文書化し、テンプレート化できないかを考えてみましょう。

プロセスについてボイス氏の主張はシンプルです。不要なプロセスは省略し、必要なプロセスも自動化・テンプレート化することで高速化しなければならない、というもの。そして、このプロセスの高速化の要となるのが、次に紹介する4つのツールです。

未来の営業組織に求められる4つのツールとその統合

ボイス氏が未来の営業組織に欠かせない4つのツールとして挙げているのが「セールス・エンゲージメント・プラットフォーム(SEP)」「リモート会議ソフトウェア」「コンテンツ管理システム」そして「CRM」です。既に多くのB2B営業組織ではTeamsやZoomなどのリモート会議が浸透していますし、SalesforceなどのSFA/CRMの普及もほぼ一巡しつつありますので、以下では「SEP」と「コンテンツ管理システム」の2つについて手短に解説します。

「SEP」(セールス・エンゲージメント・プラットフォーム:顧客接点統合システム)とは、Web会議やメールなどの顧客接点を連携させるプラットフォーム。会議の予定をスケジュールに登録したり、会議に必要なコンテンツを社内のファイルサーバから集めたり、会議後に自動作成される要約メモを添付してフォローアップのメールを送信したりと、顧客接点の効率化・自動化が図れます。この記事の著者ボイス氏の会社が取り扱っているのがこのSEPなのですが、そのプロモーションを差し引いても、未来の営業に不可欠なツールであることは間違いないと思います。

「コンテンツ管理システム」は、社内コンテンツを一元管理するシステムです。顧客の業界やそこで話題になっている商品に関連する社内コンテンツを収集・整理して表示してくれるだけでなく、顧客に送付したコンテンツが顧客社内でどのように閲覧されているかを追跡調査することができますし、Webサイトに上げているコンテンツに対してアクセスされたらチャットボットが立ち上がって顧客とコミュニケーションを取るなどの、仕掛けを用意しておくことが可能になります。顧客がコンテンツを使って自ら購買活動を進める未来の営業では、このツールも大事な役割を果たすものと思われます。

そして、この4つのツールを連携させること、具体的にはSEP、リモート会議、コンテンツ管理の各システムでのアクションをCRMに記録・統合させることが必要だと記事では述べています。

スキル・プロセス・ツールを参考にして未来の営業に近づこう

ここまで、「The Future of Sales」を題材にして未来の営業組織に求められるスキル、プロセス、ツールについて見てきました。この類の未来予想の記事を大別すると、「特徴的な変化を強調する、読み手をドキッとさせる記事」と「派手さはないものの、確実にこうなるだろうと思える記事」の2つに分けられます。そして、今回ご紹介したボイス氏の記事は、前回のトライツブログで「考察の『質』と『範囲』と『確からしさ』で評価してほぼ決定版だと思える」と評したように、「確実にこうなるだろうと思える記事」の代表格です。

「迅速」「常にオンライン」「顧客中心」「豊富なコンテンツ」「テクノロジー活用」という5つのキーワードで表される未来の営業の姿だけでなく、そこで求められるスキルやプロセス、ツールにおいてもショッキングなものや荒唐無稽なものはありません。未来予想の記事に対する評価として適切ではないかもしれませんが、非常に現実的で説得力のある内容になっています。

新型コロナの影響でB2B営業そして購買のDX化は一足飛びに進み、私たちはもしかしたら少し先の未来に到着してしまったのかもしれません。前回および今回のトライツブログでご紹介した「未来の営業」は、少し先の未来で当惑している私たちにとって、頼もしい羅針盤となる内容だと思うのです。

首都圏の緊急事態宣言もあと少しで再解除となりますが、リモートワークを取り入れた仕事の仕方はおそらく変わらないでしょうし、TeamsやZoomを使った商談も継続することでしょう。そのような状況に適応し、さらに生産性を高めるためには、Web会議システムを導入してその使い方を研修するだけでは不十分です。デジタルネイティブな顧客について理解し、リモートでの顧客の購買を後押しするコンテンツを作れるようになり、顧客の購買プロセスを自動化・高速化し、さらに顧客との接点情報をシステムで一元管理・統合化する、という姿を目指さなければならないはずです。

過去の営業ではなく未来の営業として勝ち残るために、今回ご紹介したスキル、プロセス、ツールがどれだけ今の自分たちの営業組織に備わっているか、ぜひ確認してみてください。きっと、今いる場所よりさらに先の「未来の営業」に近づくためのヒントが見つかるはずです。

参考:「The Future of Sales」(Dave Boyce & Chris Harrington, XANT Inc., November 14 2020)