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「Systematization(システマタイゼーション)」「Systemization(システミゼーション)」という言葉をご存知でしょうか。この2つの言葉はどちらも「体系化」「系統化」「組織化」という意味で、関連するものごとを順序だててつなげることを表します。ちなみにこの2つの言葉を辞書で引くと、システマタイゼーションは載っているがシステミゼーションは載っていないことが多いので、以下ではこの2つをまとめて「システマタイゼーション」と呼ぶことにします。

「営業をシステマチック(体系的・組織的)にしよう」という話をすると、「その通りだ」という営業組織もあれば、「ウチの営業はクリエイティブな仕事だから、体系的にまとめるのは向いていない」「体系化する手間がもったいない」という組織もあります。

後者のような考えをお持ちの方に一石を投じる、B2B営業分野でのシステマタイゼーションについての面白い調査レポートを見つけましたので、ご紹介します。B2B営業でのシステマタイゼーションとはどういうことで、どのような価値・意義があるのか、一緒に確認していきましょう。

海外調査レポート「22 B2B Sales Management Statistics, and the Processes You Need to Survive」

ご紹介する調査レポートはサンフランシスコにあるソフトウェア開発ベンチャー企業のProsessStreet社のブログ記事「22 B2B Sales Management Statistics, and the Processes You Need to Survive」。B2B営業のシステマタイゼーションに関する様々な調査データを広範囲に集めているのですが、かなり分量が多いので内容を簡単にまとめて紹介&解説してきたいと思います。

個別の調査データに入る前に「B2B営業のシステマタイゼーション」が何を意味するかを確認しましょう。この記事を含め「B2B営業のシステマタイゼーション」は、組織として共通のオフィシャルな営業プロセスを設計し文書化され、それに従って活動していることを意味しています。そのため、営業の手順が人によってまちまちだったり、以前にマニュアル化してはいるが誰もそれに従っていなかったり、というのはシステマタイゼーションされていないということになります。

それでは、早速調査データを見ていきましょう。

調査データ①「システマタイゼーションが業績に与える影響」

最初のデータは、Harvard Business Review誌が実施した、営業プロセスの体系化度合と業績との関連性です。

成果の高い営業組織の50%では、体系化された営業プロセスが頻度高くモニタリングされ、厳密に実施または自動化されているのに対し、成果の低い組織ではわずか28%にとどまります。同様に、成果の低い組織の48%には正式な営業プロセスが存在していません。(中略)
正式な営業プロセスを持っている企業は、持っていない企業よりも28%収益が向上します。考えてみてください。正式な営業プロセスを作成・展開しないことで節約できる時間とコストは、28%の収益向上よりも価値があるものでしょうか?

また、記事では続けてSalesforce社の調査データをもとに、営業のシステマタイゼーションを「営業マニュアル」という観点から見ています。

B2B営業組織のおよそ半数には公式の営業マニュアルがありません。(中略)
公式な営業プロセスが設定されている企業の2/3では、商談の成功率が50%を超えています。また、貧弱な営業プロセスを改善することで、売上が17%増加する傾向があります。

このように、営業をシステマタイズし、営業プロセスを正式に体系化・文書化することで業績を高められるというのです。納得できる内容なのはもちろんですが、このような調査データがちゃんと存在しているというのが実に面白いと私は思います。そして、これらの調査データをもとに、記事では営業のシステマタイゼーションの必要性を強く訴えています。

ここでの調査結果は一致しています。今こそ、稼ぎを生まないつまらない仕事に時間を掛けるのを問題だと捉え、正式な営業プロセスづくりとその文書化に焦点を当てるときなのです。

調査データ②「システマタイゼーションによる業務効率化」

営業のシステマタイゼーションによるメリットは、単純に業績向上だけにとどまりません。業務を体系化・組織化し、それを自動化することで、業務効率化のチャンスがあると記事では主張しています。

営業担当者は業務時間の32%しか営業活動に充てられておらず、残りの時間は管理業務に費やしている(Docurated社)

営業組織の45%で、過剰な管理業務によって営業の生産性が低下していると感じている(Salesforce社)

この解決策として、記事ではProsessStreet社自身のサービスと、Zapierという業務自動化のツールをしっかりと売り込んでいますが、長くなりますので割愛します。

ここで大事だと私が思うのは、Zapierをはじめとする様々な業務自動化のツールを入れるためには、営業がシステマタイゼーションされており、業務の手順やルールが明文化されている必要があるという点です。デジタルツールの恩恵を受けようとするのならば、それに先立って業務を体系的に整理しておかなければならないのです。

調査データ③「システマタイゼーションによる営業人材育成の効率化」

記事は最後に、営業のシステマタイゼーションによって営業人材の育成が効率的になると述べています。

営業プロセスの体系化により、特にメリットが大きいのは営業担当者のオンボーディング研修です。(中略)
オンボーディング研修が成功すれば、営業担当者の定着率は25%高まり、業績も11%向上することが分かっています。

記事に出てきているオンボーディング研修とは、新しく採用・配属された担当者に正式に業務を割り当てる前に行う研修です。いわゆる新入社員研修のようなサラッとしたものではなく、配属先の業務をしっかり教えるタイプのものです。

この記事の内容にもからくりがあって、ProsessStreet社が提供するサービスではこのオンボーディング研修の進捗管理ができるようになっており、同社のサービスを導入するためには営業の業務を体系化しておくことが必要だ、というのがこの記事の背景になっています

とは言え、私も色々なクライアントに対して営業研修をおこなってきましたが、業務がどこまで体系的に整理されているかによって、研修設計の手間や研修の場で教えられる内容の深さが大きく変わるというのは紛れもない事実です。その意味では、人材育成の効率化とシステマタイゼーションとの間に密接な関係があるというのは確からしいと思います。

営業のシステマタイゼーションに今後も要注目!

今回はProsessStreet社の記事をもとに、営業のシステマタイゼーションについての調査データをご紹介しました。営業のテクノロジーや研修についての調査データは数多くあるのですが、その根幹となる業務の体系化・文書化に焦点を当てているものはあまり目にすることがないので、新鮮だったのではないでしょうか。

この「営業のシステマタイゼーション」という考え方は意外と古く、20年ほど前のSFAが広まってきた頃から「テクノロジー導入の前に、営業の業務を体系化せよ」ということがしきりに言われていました。現在でも、トライツが営業デジタルツール導入のお手伝いをするときは必ず、業務を体系化・組織化することからスタートしています。

そのような観点から今回の記事を読むと、「やっと良いコンセプトが出てきた!」と感じています。SFAやMAなどの営業デジタルツールが浸透し、インサイドセールスのような分業方式の営業スタイルが出てきている現在ではより一層大事な考え方になることでしょうし、その証左として、B2B営業のシステマタイゼーションを専門とするコンサルティング会社(3XO社)も海外で誕生しています。「営業の生産性を高めたい」「営業現場にデジタルツールを導入したい」「研修効果を高めたい」という企業にとって、その前工程としてのシステマタイゼーションは今も昔も重要なテーマなのです。

トライツコンサルティングでは、今回ご紹介した営業のシステマタイゼーションを、研修設計や営業マニュアル作成、デジタルツール導入の要件定義などに絡めてサポートしています。営業の体系化・組織化・文書化に興味をお持ちの方は、ぜひご相談ください。

参考:「22 B2B Sales Management Statistics, and the Processes You Need to Survive」(Benjamin Brandall, Jan 17, 2018)