ここ数年、営業部門でのデジタルツール活用に関するセミナーが多く開催されています。その中には、トライツに講演の依頼をいただくこともありますし、そのようなセミナーはどこも来場者で会場がいっぱいになっています。また、トライツでも「営業デジタル改革」というキーワードでセミナーを開催しており、多くの方にご出席いただいています。

このように営業でのデジタルツール活用がブームになっている一方で、「ウチの営業にはデジタルツールは要らない」「取り組むメリットが分からない」という声も多くの現場から耳にします。本当にその営業現場ではデジタルツールは要らないのでしょうか。営業の効率化の役に立たないのでしょうか。

今回のトライツブログでは、「営業でのデジタルツールの活用メリットがない」の実態について見ていきたいと思います。

2つのタイプの「デジタルツールの活用メリットがない」

「営業にデジタルツールを活用するメリットが感じられない」というとき、大きく2つのタイプがあるように私は考えます。

1つ目のタイプは、「既に何らかのデジタルツールを導入しているが、当初の期待やかけている手間に見合ったリターンが得られていない」というものです。SFAを導入しているものの、入力の手間ばかりが増えていて業績が上向いてこない、というのが典型的な事例です。このタイプでは既にシステム利用費や運用コストなどの目に見えるコストが発生しているので、「もっと入力の手間を抑えられないか」「営業に役立つデータが得られないか」という課題が明確になっており、システム会社や営業企画部門などで既に打ち手を検討されていることが多いようです。

もちろん簡単に課題を解決できるわけではありませんが、課題や責任を持つ部署が明確になっていますし、入力されているデータをしっかりと分析することで打ち手を考えやすいという意味では、比較的に取り組みやすいタイプだと言えなくもありません。このトライツブログでも「SFAの活用法」などのテーマで何度も取り上げてきたトピックでもあります。

これに対し、2つ目のタイプは、「自社の営業ではデジタルツールを使ったメリットのイメージが湧かない」「何度か検討したが、そもそも情報共有に困っていないし、入力の手間が増えるだけなのでやらない」という考え方で固定してしまっているというもの。このタイプの営業現場からは、「ウチの営業は特殊」「職人技だからシステムになじまない」といった話をよく聞きます。実は1つ目比べてかなり厄介なこのタイプ。今回は、このタイプについて取り上げてみたいと思います。

このタイプが厄介だというのは、このような考え方がトップから現場までに根強くあることで、結果としてデジタルツールに限らず、営業に対する考え方が固定化し、新しいコンセプトや仕事のやり方が受け入れられにくくなっているということがあります。世の中ではいろいろ新しい考え方やツールが出てきているにも関わらず、なんでも「食わず嫌い」になってしまっているということです。

デジタルツールで営業を効率化するための2つのポイント

それでは、このようなタイプの営業部門には本当にデジタルツールは不要なのでしょうか。ここから先を考えるのに大事なポイントが2つあります。

1つ目のポイントは「営業デジタルツール=SFA/CRM」ではないということです。営業の仕事を効率化するためのデジタルツールとして有名で導入事例も多いのは、SFAやCRMではありますが、それだけに範囲を限定する必要はありません。

そして2つ目のポイントは「営業の仕事=客先での営業活動」だけではないということ。多くの営業担当者は顧客に相対する以上の時間を掛けて、社内の事務処理やマネジメント、仕事の手配を行っています。それらの業務もデジタルツールによる効率化の対象となります。

しかし、前述のような状況で躓いている企業の多くが、この2つのポイントを柔軟に考えることができておらず、表面的な議論で否定的な結論を出してしまっているように思います。また、そこをトップダウンで強引に乗り越えても、現場の不満を払拭することができず、大枚はたいて導入したSFAが使われない、いつまでも入力が進まない・・・ということになってしまうのです。

SFA/CRM以外の営業デジタルツール活用事例

そんな中、上手くこれらの2つのポイントに気づき、デジタルツールを使った営業の仕事の効率化に成功した企業があります。

ある会社では、顧客に合わせて多種多様な形態の商品をOEMで開発しています。そこでは、商品の形状、パッケージの種類、表示の仕方などによって必要な開発の作業が異なるため、営業担当者はそれぞれの商品の進捗管理にとても苦労していました。些細なチェック漏れや開発業務の抜けがあるだけで、納期遅延に直結してしまうからです。

そのような中で導入したのは、商品開発業務の進捗マネジメントシステムでした。自分たちの開発業務を棚卸し、どのような商品形状のときにはどのような分析が必要になるか、どのようなパッケージの場合はどのような試験評価が必要になるかを整理・体系化して、それを10の開発パターンにまとめ、開発パターンごとにスケジュール表を自動で作成できるようにしたのです。その結果、納期遅延につながるミスを事前で検知できるようになり、開発期間を30%圧縮することができました。

また別の会社では、顧客の製造現場に合わせた設備を一品一様で開発し納入しています。そこの営業担当者にとって、刻々と変化する状況に合わせて見積の内容を具体化していくのは、まさに職人技であると同時に非常に手間もかかる作業でした。

そこで、今まではExcelでバラバラに作成されていた見積書・注文書のフォーマットを共通のものに統一し、営業共通の見積単価データベースから必要な情報を組み合わせて見積を作れるようにしました。さらには、過去に作成した見積データを簡単に検索・参照できるようにしたところ、見積作成にかかる手間と見積の記載ミスが大幅に削減されました。

これらの事例では、営業現場でデジタルツールを活用していますが、どちらもSFAやCRMではありませんし、顧客と相対する業務でもありません。SFAやCRMありきでデジタルツール活用を考えるのでなく、自分たちの営業の仕事を機能別に分解して業務を分析したことで、商品開発の進捗マネジメント業務や見積・注文業務でのデジタルツール活用が進み、営業の仕事の効率化につながったのです。

営業の仕事を分解・分析・評価することから始めよう

もし皆さんの営業部門が「デジタルツール活用の価値が見出せないから、具体的に検討していない」タイプであれば、ぜひ一度自社の営業の仕事を棚卸してみることをお勧めします。そして、「業務量は適正か」「業務効率は満足できる高さか」といった観点で評価し、営業の仕事の効率化につながるデジタルツール活用の可能性を考えてみるのです。

その際に全体像を一覧できる参考資料として、「SalesTech Landscape 2019」を手元に置いておくときっと便利でしょう。一般的なB2B営業の機能が既に分解・整理されており、しかもそれぞれの機能で使えるデジタルツールが一覧となっていますので、イメージが湧きやすいはずです。

現在、SFAやCRMにとどまらず、営業コーチングや契約書作成など、様々な業務で便利なデジタルツールが市場に登場しています。「営業デジタルツール=SFAやCRM」「営業の仕事=客先での営業活動」から視界を広げることで、「特殊」で「職人技」で「一品一様」な営業にもフィットするデジタルツールを見つけることができるでしょう。大事なのは「ウチの営業にはデジタルツールは要らない」と安易に決めつけてしまわずに、自社の営業を機能ごとに分解し分析・評価してみることなのです。

トライツコンサルティングでは、現在の営業の業務の評価・分析から、最適なデジタルツールの選定・設計・導入までを一貫してご支援しています。「営業をデジタル化して効率を上げたい」とお考えの方は、ぜひご相談ください。

参考:「SalesTech Landscape 2019」(SalesHacker:Nicolas de Kouchkovsky, May 30, 2019)