世の中にはメモ魔という人がいます。有名なところでは大量の手稿を残したレオナルド・ダ・ヴィンチにアインシュタイン。日本では博覧強記の知の巨人・南方熊楠もメモ魔として有名です。そんな偉人たちには遠く及びませんが、コンサルタントという職業柄、私も人よりは多くのメモを取る方ですし、一緒に仕事をしている人から「打合せの間すごくメモを取りますね」と言われることもよくあります。

そんな私の自宅には、メモの書き方についての本が何冊かあります。試しに「メモ」という言葉でAmazonを検索したところ、Kindle版だけのものを除いた、日本語で出版されている本だけでなんと680冊。このことからも、私だけでなく多くの人がメモの書き方について悩んでいたり、工夫しようとしたりしていることがよく分かります。

このメモを取るということは、紙のノートかホワイトボードかPCかという道具に差はあれど、営業担当者として仕事をする上でも不可欠なものです。そこで、今回のトライツブログは「営業におけるメモの目的とその手法」について考えてみたいと思います。

営業にとってのメモの2つの目的

営業活動をしているとメモを取る場面が数多くあります。顧客との打合せや商談に、社内の会議・打合せ、提案書や報告書などの資料の準備などの各場面で、皆さんもメモを多く取っているのではないでしょうか。ちなみに、ここで言うメモとは、手元のノートや手帳に書くものだけではありません。ホワイトボードに書いたり、PCで入力しているものをプロジェクターに映しているものも含めた、広い意味でのメモだと捉えてください。

では、そもそも営業でメモを取る目的は一体何でしょうか。

1つは「正しく再現する」こと。顧客や社内の相手から聞いた話や一緒に議論したことを正確に再現することで、顧客の意図に沿った提案書が作れるようになりますし、現在の状況を社内や顧客に適切に報告できるようにもなります。当たり前のことですが、この「正しく再現する」というのが、一般的にメモを取る目的の主たるものです。

これに加えて、営業の仕事をする上で欠かせない目的があります。それは「人を動かす」というものです。

メモで気づきを与えて人を動かす

顧客に課題を見つけてもらい、そしてそれを解決しようと思ってもらう。そのための手段として自社の商品・サービスを選んでもらい、継続して使い続けてもらう。また、社内では技術やサービスなどの関連する部署や、外部のパートナー企業に提案内容を企画・設計してもらい、受注した暁には商品・サービスを構築・納入してもらうなど、営業という仕事をしていると人に動いてもらわなければならない場面が出てきます。

そのような場面で、気づきや発見が生まれたり、考えが深まったりするようなメモが取れると、相手に前向きに動いてもらいやすくなる、ということがあります。
例えば顧客との打合せの最中で
「そうか、これをやれば良いんだ!」
「モヤモヤしていたのがスッキリした!」
などと言われた経験のある方もいらっしゃるでしょう。そして、そのような変化を起こせた商談は、そうでない商談と比べて顧客が積極的に動いてくれたのではないでしょうか。以前のトライツブログに「瞬間的なひらめきが顧客を動かす!営業における『アハ体験』の重要性」という記事もありますし、顧客に気づきを与えることで顧客を動かす「インサイト営業」という言葉を目にしたことのある方もいらっしゃることでしょう。営業において大事な「気づきを与えて人を動かす」ことに、メモを役立たせることができるのです。

気づきが生まれやすいメモの取り方と見せ方

それでは、具体的にどのようなメモを活用すれば、気づきを与えて相手を動かせるようになるのでしょうか。これまでの経験から、気づきが生まれやすいメモの取り方には3つの手法があり、その見せ方にも大事なポイントがあると私は考えています。まずは、メモの取り方から見ていくことにしましょう。

メモの取り方の1つ目の手法は、「相手が考えていることをすべて書き出す」というもの。これはブレインダンピングとも言われており、頭の中にある情報をすべて書き出してそれを一覧することで、考えがまとまりやすくなったり、新しいアイデアが生まれやすくなるのです。

2つ目は「図解/構造化する」。議論している内容を、フローチャートやピラミッド構造、表などのフレームワークを使って上手に整理しながら相手の盲点を見える化することができれば、相手の考えが深まったり新しい気づきが生まれたりして「そういうことだったのか!」と言われることがあります。また、図解/構造化することで体系的に議論できるようになりますし、論点の抜け漏れを防げるようにもなるなど、多くのメリットがあるメモの手法です。

最後に紹介する手法は、「一言で表す」というもの。例えば顧客の中で起こっている問題や、目指す姿、取り組む施策のイメージなどを切れの良い言葉でビシッと言うことができれば、強烈な気づきを与えることができますし、そのキーワードを手にした顧客は、その目指す姿の実現や施策の取組に向かって前向きに動いてくれるようになります。

この3つの手法、場面に応じてそれぞれの手法を使い分けられるのが理想ですが、必ずしも3つすべてをマスターしないといけないというものではないと私は思っています。私自身は「図解/構造化」が得意な方で、「一言で表す」のは少し弱い傾向がありますので、プロジェクトの大事な局面では「一言で表す」のが得意なメンバーと一緒に動くようにしています。皆さんも自分の得意不得意をわかった上で、それを補えるように対応されるのが良いのではないでしょうか。

メモの見せ方の大事なポイントは、メモの内容を相手と共有しながら議論するということです。自分の手帳にチョコチョコと書くのではなく、顧客にも読みやすいようにホワイトボードや大き目のコピー用紙などに大き目のサイズでメモを書き、それを相手と一緒に見ながら議論を深めていくというのが、相手を動かすためには欠かせない条件なのです。

メモの書き方/書く場所を工夫してみよう

誰もが小学校のころから社会人になってもメモを取っていて、それでもメモ術の本を買ってしまうほど、メモというのは難しく奥深いものです。

顧客との打合せなどを「正しく再現する」だけでなく、顧客や社内外の関係者を「前向きに動かす」ためにも、普段何気なく取っているメモを工夫してみてはいかがでしょうか。今回ご紹介した3つの手法の中から1つを選んでメモの書き方を変えてみる。そのメモを書く場所を手元のノートからホワイトボードなどに変えてみる。そのような工夫でいつもの商談や打合せがきっと前向きになるはずです。

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