先日からセミナーで「プログラミング的思考」と「ビジュアル思考」についてのお話をしているのですが、どちらも「目から鱗」のようで、いくつかの企業から研修のご相談などもいただいています。

なかでもデジタル化の中で、人間しかできないことを求められるようになってきている営業担当者にとって、顧客と「図で考える」という「ビジュアル思考」はとても強力なスキルになると考えています。

ただ、巷にある本などではビジュアル思考の「やり方」とか「コツ」についてはいろいろ紹介されているのですが、B2B営業においてそれにどんなメリットがあるのか、なんとなく良さそうな気はするけれど本当のところはやってみないとわからない・・・ということでないかと思います。

そこで、今回のトライツブログでは、「図で考える」という「ビジュアル思考」を顧客とのコミュニケーションの場で活用することで実際にどのようなメリットがあるのか事例をベースに解説していきます。

メリット1)その場の空気を変えることができる

ある原料メーカーでは、ターゲットとする大手顧客から次の商品リニューアルの情報を入手することが課題でした。そのきっかけを掴もうといろいろな切り口から興味付け提案を行うのですが、なかなかうまくいかなかったのです。

そこで、その企業のWebサイトから商品の画像ファイルを拝借し、それを並べてマグネットシートに印刷したものをカットして、商品の「駒」のようなものを作成し、A4サイズのホワイトボードに張り付けて、客先訪問時に「商品ポートフォリオ」を一緒に作ることを提案してみることにしました。

こちらで狙いを定めて提案を繰り返すという方法でなく、顧客の商品の全体像を図示し、それを一緒に整理する中で顧客の課題がどこにあるのかを探っていこうというアプローチです。

準備したものを持参したところ、それを見た顧客は最初、「え?これどうしたんですか?わざわざ作ったんですか?」と驚きの後、笑顔に。「面白いですね。やってみましょう」と手を出してくれたのです。その営業担当者によると、それまでと明らかに空気が変わり、和やかに会話が進むようになったそうです。

メリット2)相手も気づいていない本音を引き出すことができる

そして、一緒に商品ポートフォリオ作成を進める中で、顧客から「実はね・・・・この商品なんですが、売上が低迷していまして、本当は商品企画担当としては廃番にしたいんですよ。でも、社長のこだわりが強く、誰もそれを言い出せないという問題がありまして・・・」という発言が出てきました。

これまでの面談の中でこのような発言は全く出てこなかったことで、営業担当者としても全くのノーマークだった商品。しかし、その商品のリニューアルを成功させることができれば、大きな実績になる可能性が見えてきたのです。

通常の会話ではどうしても的を絞ることに意識がいきがちですが、このように全体像を図にして顧客と一緒に整理してみることで、顧客自身も気づいていかなった課題を共有することができました。

メリット3)デキる営業担当者をアピールできる

また、別の企業では顧客の業務フローを整理し、課題を抽出するということをやったのですが、顧客の業務上であらかじめわかっている「機能」を整理しておき、マグネットの「駒」として準備しておきました。

「一般的な機能としてはこのようなものがあると思うのですが、御社ではどのような関連になっていますか?」

というような投げかけを行い、顧客と一緒に業務フローを整理していくような流れで進めていったのです。そうすると、顧客から「ウチはこの機能とこの機能のつながりがあいまいなんです。ルールが不明確で、現場でそれぞれ処理しています」

などという発言があったそうなのですが、そこで営業担当者が、
「なるほど。そうなるとここだけじゃなくて、この先のところでも問題が発生するリスクがありますね。そこはどうですか?」

「おっしゃる通りです。なるほど。今までは後ろの方ばかり問題視していましたが、そもそもここから見直さないとダメですね」
などと言われたようで、営業担当者は簡易的な業務コンサルのようなことができたと喜んでいました。

顧客の発言をその場でメモするだけで、会社に帰ってから整理しようと考えている営業担当者は少なくありませんが、それでは顧客は一方的に話すだけで、気づきは得られにくいものです。それに対し、その場で図示する中で気づいたことをフィードバックすることができれば、「デキる」営業担当者であることをアピールすることにつながるのです。

このようなスキルを顧客から評価され、顧客の社内会議に当たり前のように参加するようになった営業担当者がいますが、これからのB2B営業の一つの目指すべき方向性ではないかと思います。

メリット4)顧客との認識のズレをなくすことができる

図示することの大きなメリットとして、「お互いに見て確認できる」ということがあります。手帳にメモしているだけでは、仮にこちらが間違った認識をしていても、それを相手から指摘されることはありませんが、図示していれば「そこ違う」と相手が指摘してくれます。

ただ、必ずしもこれは図示することに限りません。相手に見えないような小さな字で手帳にメモするよりも、大きめのノートに大きめの字でメモすれば、相手はそこを見ながら話をしてくれますし、部屋のホワイトボードを「ちょっとお借りします」と言い、そこにメモしていけば間違いを防ぐことができます。

このように「相手に見せながら話を聞く」ということは、コミュニケーションを効率化する上での重要なポイントなのです。

メリット5)顧客との距離感を縮めることができる

これまでご紹介してきたようなやり方をやってみた営業担当者が皆さんおっしゃるのが、「顧客との距離感が変わった」ということです。

それまでは「売り手」と「買い手」という少し距離感のある関係だったものが、一緒に課題解決に取り組むパートナーというような感じになり、顧客との距離が縮まったように思えたそうです。これは図というアウトプットを作っていくというプロセスを共有することで得られたものなのです。

メリット6)その後の社内報告や資料作成の時間を削減できる

そして最後に、客先で顧客と図示して考えたものをその場でスマホで撮影し、持って帰って上司や社内関係者に見せることで、情報共有の時間を大幅に削減することができます。わざわざ報告のための作文の時間がいらなくなるからです。

また、次回に顧客に持参する提案書では、そのまま画像をトップページに張り付ければいいですし、見やすくするためにPowerPointで改めて図を作るにしても、箇条書きメモから図を考えるよりずっと短時間に作成することができるはずです。

このように時間削減という大きなメリットもあるのです。

まずはしっかり準備することが必要

このようにメリットだらけの「ビジュアル思考」なのですが、実は最も大きな阻害要因は、営業担当者の心の中にあります。「こんなことやってお客さんを不愉快にさせたら・・・」「上手くいかず、グタグダになったら・・・」「そもそもお客さんに失礼では・・」などといろんなことを考えてしまうからです。

それを乗り越えるためには、とにかく最初は「徹底的に準備する」ということに尽きます。トライツがご支援する際には、前述のようにマグネットの駒を作ったりして、ツール化しますし、何回も練習して、自信を持ってできるようにしています。

ただ、そうやって上手くいくことで自信をつけることができれば、仮にツールがなくても客先で「ちょっとホワイトボードお借りしますね」と言って、商品ポートフォリオを顧客と一緒に作ったり、業務フローを整理したりすることができるようになるのです。

これから営業の世界はどんどんデジタル化の流れで大きく変わっていくことになると思いますが、その中でも存在価値のある営業担当者をいかに育成していくかが大きな課題になると考えています。

そこでこの図で考える=ビジュアル思考というのは、これまで営業担当者が培ってきた専門的な知見を顧客との面談で活かし、その存在価値を高めていくために有効なスキルなのです。

トライツコンサルティングでは、それぞれの企業向けにビジュアル思考に基づく営業ツールを作成し、それを実践につなげていくまでの実践型研修を行っています。ご興味のある方は下記よりご相談ください。