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皆さんは最近、ホワイトボードを使っていますか?
私は営業のコンサルタントをやっているので多くの営業会議に呼ばれるのですが、最近の営業会議はプロジェクターでスライドを投影するものが増えたように感じます。営業担当者が各自の端末をプロジェクターにつないで発表するため、会議にはみんながノートPCを持ってきているという風景も珍しくなくなりました。
そのように営業会議が変化する中で、ポツンと取り残されているのが、会議室の片隅にあるホワイトボードです。「そういえば、最近いつホワイトボードを使ったっけ?」という方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回のトライツブログでは「ホワイトボードを営業会議で活用する価値」について考えてみたいと思います。
板書を取ることで営業会議が変わる
職業柄、いろんな企業の会議室で営業会議を運営しているのですが、トライツが運営する営業会議の特徴の1つに、「フリップチャートやホワイトボードを使って大量に板書をする」というものがあります。
例えば、ターゲット企業を決めてその攻略を進めよう、そしてその進捗を定期的に共有して課題や困りごとがあれば作戦を考えて乗り越えるための営業会議を開こう、というプロジェクトがあるとします。そのような場合の営業会議では、前回会議からの活動進捗から、現状の困りごと、今後どうしたいかということをひたすら箇条書きで板書します。そして、みんなでそれを見ながら課題を乗り越えるためのアイデアを議論してもらい、それも板書します。今後の進め方が明確になったら役割分担と期限を全員で確認し、それも書き加えます。このようにすると、1つの顧客につき20~30行の板書をすることになりますので、会議終了後は会議室の壁1面がフリップチャートだらけになっています。
このようにホワイトボードやフリップチャートを使って板書をしているのには、いくつかの理由があります。
- 案件の概要が明文化されているので、皆で誤解なく共有しやすい
- 急な電話などで離席しても、ホワイトボードを読めば議論の内容が分かるので、すぐに議論に戻ってきやすい
- ホワイトボードの文字数を見れば、それぞれの案件が進んでいるか停滞しているかが一目で分かり、それについてマネージャーがコメントしやすい
- ホワイトボードに書いてあることがそのまま議事録になるため、写真を撮ってそれを共有フォルダ―に保存するだけで議事録が完成する
- 皆が顔を上げてホワイトボードを見ながら話をするので、皆が意見を言いやすく、前向きかつクリエイティブな雰囲気になりやすい
どんよりとしがちなプロジェクター形式の営業会議
このように、メリットがたくさんある「営業会議でのホワイトボード活用」なのですが、世の主流はプロジェクター派のようです。
報告用の資料をプロジェクターで投影し、結構複雑な議論に入ったりするものの誰も板書をしておらず、それぞれの営業担当が、手帳に大事だと思ったキーワードだけを1つ2つメモする程度。このような会議がまだまだ多数派です。たまにこういう会議にオブザーバーとして参加するのですが、「なんだか話が噛み合っていないなぁ」「結論が曖昧だけど、みんなに伝わっているかなぁ」「前回と同じ話をしているみたいだけど、誰も何も言わないなぁ」と感じることがよくあります。そして何より、皆が頭を下げて手元のノートPCを見ながら会議をしているためか、意見もあまり出てこず、どんよりとした雰囲気になっている会議が本当に多いのです。
習うより慣れよ!板書スキルを身に付ける
そこで、「会議室にはホワイトボードも眠っていることなので、さっそく次の営業会議から議事の内容を板書しよう」と思っても、これが意外と大変だったりします。
まず、会議の流れを中断しないようにメモを取るには、かなりのスピードで読める文字を書けないといけません。書いている途中なのに話がどんどん前に進んでいるときは、書き留められていない文章を覚えておく必要があります。また、話されている内容が整理されておらず分かりにくい場合は、誰が読んでも分かる日本語の文章に変換する国語力も求められます。
そして、パソコンやスマホで仕事をするようになった弊害なのか、特に難しくもなんともない漢字がど忘れで出てこないことがあります。その場で漢字が分からなければカタカナで書くしかないのですが、あまりにカタカナだらけなのも見栄えが良くないので、普段仕事で使っている用語は漢字で書けるだけの漢字知識も必要です。
ただこれらについてはほとんどの人が日常的に繰り返すことである程度まではできるようになるはずです。「習うより慣れよ」が基本なのが、この板書スキルなのです。
板書が上手くできないということは、日頃の営業活動でも正しくメモが取れていないということ
そして、やってみるとわかると思いますが、マネージャーは板書役のメンバーが思った以上に上手く書けないことに驚くことになるでしょう。具体的には、勝手に言葉を置き換えて書いたり、大事なことが抜けていたり、誤解して書いていることに全く気づかなかったり・・・ということに直面するはずです。そしてそれらは板書に限ったことではなく、顧客との面談の際に手元のメモを書く時にも起こっていると考えられます。
部下から報告を聞き、それについて自ら客から話を聞いたら、部下から聞いた内容とかなり違っていた・・・という経験はどのマネージャーにもあるのではないかと思います。その大きな原因の一つが、「聞いた話をちゃんと書き留める」ということができないことにあるのです。
そこで有効なのが、営業会議での板書役を繰り返しやってみるということです。特に経験の少ない若手を育成する機会として有効です。ちゃんと書かないと突っ込まれますし、本人も確認しながらわかりやすく書くという習慣付けにもつながるからです。
板書のスキルはコンサルティング営業でも活かせる
このようにして板書スキルをしっかり体得すると、顧客との打合せの場では武器にできるようになります。「ちょっとホワイトボードをお借りします」と言って、顧客との大事な打合せの中で議論の内容をホワイトボードにササッとまとめることができれば、相手から「この人、できるな!」と一目置かれることにもなるでしょう。また、顧客も立ち上がってペンを持ってアレコレ書き込むようになれば、即席でコラボレーションしている状況を作ることができるはずです。
そして、箇条書きで書くだけでなく、話している内容を図解できるようになれば、これは「ファシリテーション・グラフィック」と呼ばれる立派なファシリテーション・スキルにもなるのです。
進化したホワイトボードの活用も考えてよう
今回のトライツブログでは、営業会議でのホワイトボード活用についてお伝えしました。ホワイトボードとペンさえあればすぐにできることですので、さっそく次の営業会議や社内打合せから取り入れてみてはいかがでしょうか。それだけで、活発に意見を言い合える、前向きでクリエイティブな場へと変えることができますし、若手の育成の機会にもなる。まさに一石二鳥です。
また、最近ではホワイトボードそのものも進化しており、書いたことをそのまま電子データとして取り込むことができる、インタラクティブ・ホワイトボードという商品がOA機器メーカー各社から出ています。中には手書き文字をテキストデータに変換できるOCR機能付きのものもありますので、これらのデジタルツール活用と合わせて試してみるのも面白いでしょう。
今回のトライツブログでご紹介した「ファシリテーション・グラフィック」は、図解思考の1つとして営業担当者にとっても役に立つスキルです。トライツコンサルティングでは、このような図解思考型の個別研修も実施しておりますので、ご興味のある方は下記よりお気軽にお問い合わせください。