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B2B企業のマーケティング/営業施策としての展示会やカンファレンスなどの集客型イベント。これを読んでいる皆さんの中にも「自社は定期的に出展している」という方も多いのではないでしょうか。

毎年国内だけでも数多く開催されている展示会。展示物は最新の技術を活用したものになっていますが、その運営のされ方はあまり変わっていないようで、多くの来場者が会場のあちこちで大きな地図を広げて、お目当ての展示を探しています。私は面倒くさがりなので、「スマホでお目当ての展示が検索できて、そのブースまでナビしてくれたらいいのに」と思うのですが、残念ながらそのような展示会に行ったことはありません。

その一方で、海外ではB2B向けの展示会でも最新技術がいろいろと取り入れられているようです。今回のトライツブログでは、アメリカの展示会での最新技術をご紹介し、これからのB2B展示会のあり方について考えてみましょう。

注目度こそ低いが、多くの人が重要視している「展示会」

展示会などの集客型イベントは、アメリカのマーケティング担当者にとっても重要な施策として見られているようです。Forrester Research社とBoston Consulting Group社が共同で作成した調査レポート「The State of Association Marketing 2017」(May 1, 2017)によると、85%のB2Bマーケティング担当者が展示会などの集客イベントを「決定的に重要」または「とても重要」だと回答しており、マーケティング費用のうち20%を展示会などに使っているようです。

このように重要視されている展示会ですが、マーケティング/営業の記事で取り上げられることはそんなに多くありません。このトライツブログでこれまでに取り上げてきた記事を振り返ってみても、SFAやMAなどのシステムやそこで使用されるAIなどの技術に注目が集まりがちです。

しかし、そのような展示会も最新技術の導入で様変わりしてきているようです。コンテンツマーケティングに関する専門サービス会社であるContently社の調査記事「How Technology Is Revolutionizing B2B Events」に、その様子が紹介されていますので要点を抜粋してご紹介します。

調査レポート:最新技術の導入で変わる展示会

多くのマーケターはすでにSalesforceなどのCRMシステムに展示会の情報を連携させて、商談を加速させている。(中略)展示会施策をMarketoなどのMAシステムの中に組み込むことも一般的になっている。MAシステムに展示会施策を組み込むことで、展示会の直後に迅速かつパーソナライズされたフォローが可能になる。

この記事によると、すでに85%以上の企業では展示会で得られた見込み客の意思決定者データをCRMやMAのシステムに取り込んでいるということです。最新技術の活用は展示会で集めたデータをCRMやMAシステムに取り込むだけではとどまりません。展示会会場の風景も変わってきているようです。

今年のContent Marketing Worldでは、来場者はそれぞれのセッションに参加する際にRFIDバッジをかざして入室するようになる。
(中略)他の展示会では、スマートフォンのアプリやウェアラブルビーコン(訳注:カードホルダーなど身に着けられるタイプの情報端末)を使って、自動的かつ効率的に来場者がどのような展示をどのような経路で見て回ったのかを追跡できるようにしている。
これらの技術は、次に見るセッションを知らせて誘導したり、個人に合わせたおススメの展示を教えたりするなど、来場者にとっても役に立つものになっている。

日本のB2Bマーケティング/営業においても、展示会は大事な施策です。しかし、日本のB2B向けの展示会では調査記事のようなRFIDやアプリなどの活用はまだまだで、名刺やアンケートの量だけが追及されていることが多いように思われます。

それに対し、記事で紹介したような最新技術を使えば、来場者ひとり一人がどんなことに興味を持っているのか、どれくらい真剣に情報を集めているのかが分かるので、優先してフォローすべきターゲットがより正確に絞り込める、質の高いデータを得られるようになるでしょう。

日本のB2Bマーケティング/営業に根強い「アナログ・ファースト」という考え方

ここで、RFIDやアプリによる来場者ひとり一人の行動追跡というアメリカでの新しいトレンドを、別の観点から掘り下げてみたいと思います。

これまでHPやSNSなどの広い意味でのWebマーケティングでは、展示会やセミナーなどもともとアナログの世界でやっていたことをデジタルコンテンツ化し、HPやSNSといったデジタルの世界でより多くの人に見てもらえるようにすることが中心でした。例えば、デモ動画やWebinar(Web上で実施するセミナー)などがそうです。

本来はアナログで相手に合わせて人間がやるのがベストだけれども、みんなが使うようになってきたデジタルも効率を上げるために活用していこうという「アナログ・ファースト」とでも言うべき考え方は、日本のB2Bマーケティング/営業でかなり根強いものだと思います。そのため、Webなどのデジタルの世界はデモ動画やオンラインカタログなどアナログの世界でできることを代用するためのもの、展示会や対面商談などのアナログの世界に見込み客を集めるためのもの、という位置づけになっています。

これに対して、今回紹介したアメリカの展示会の例はまったく別の考え方に基づいているように思えるのです。

デジタルでできることをアナログでも!「デジタル・ファースト」という考え方

展示会に来た個人の行動を追跡して何に興味を持っているかを調べるというのは、Webマーケティングで言うところの「アクセス解析(動線解析)」とよく似ています。どうも私には、RFIDやアプリによる展示会での行動追跡は、「HPに来た見込み客のアクセスは解析してその傾向から優先順位付けができているのに、どうして展示会会場でのアクセスは解析できないのか」という観点から開発されたのではないかと思えてならないのです。

Webだと、どんなキーワードで調べたのか、どんなコンテンツを見ているのか、その中でも一番関心を持っている(資料をダウンロードしている、長い時間をかけてみている等)のは何か、ということを容易に知ることができます。アメリカの展示会の例は、そのような「デジタルでできること」が最初にあって、それをアナログの世界でも実現できるようにしようという、言わば「デジタル・ファースト」という考え方に基づいているように思います。

「デジタル・ファースト」で考えて、新しいアイデア・工夫を手に入れよう

アナログでできることをデジタルでも代用できるようにするなど、アナログを中心にマーケティング・営業を組み立てる「アナログ・ファースト」。デジタルでできることをアナログでも実現できるようにするなど、デジタルを中心に組み立てる「デジタル・ファースト」。もちろん、どちらが劣っていて、どちらが優れているということではないでしょうが、時代の趨勢として日本でもRFIDやアプリによる展示会会場での行動追跡など、アナログの場のデジタル化は今後広まってくることでしょう。

「展示会がマンネリ気味だから、何か新しい工夫をしてみたい」という方は、デジタルの世界でやっていることをアナログの世界に取り入れられないか、というこれまでとは逆の視点で考えてみてはいかがでしょうか。

すでに日本でもご紹介したような最新技術は一部のシステム会社で市販化されています。ただ、数百社もの企業が出展するような大規模な展示会に導入されるのは、もっと技術がこなれて価格が安くなってからになると思われます。ただし、皆さんが自社だけの展示会(プライベート・ショウ)を開催していたり、ショウルームを持っているのであれば、RFIDやビーコンなど新しい技術を先行的に試してみるのも良いでしょう。限られた時間の中で、ありきたりな名刺データやアンケート以外のもっと有効な顧客情報を手に入れられるはずです。

参考:「How Technology Is Revolutionizing B2B Events」(Contently, Aug 15, 2017)

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