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「MA(マーケティングオートメーション)が向いているのはどんな企業ですか?」

先日、ある企業の営業企画の方からこのような質問をいただきました。

その方はMAに興味があり、いろいろなMAベンダー主催のセミナーなどに出かけて情報収集しておられるのですが、セミナー会場でこの質問をしたら、「ホームページがありビジネスをしているところであればどこでも有効」と自信満々の答えが返ってきたそうです。

B2Cの世界ではすでに当たり前になっているMAですが、これからB2Bでも普及が期待されており、我々トライツもここ最近は頻繁にMAについての情報発信をしています。ただ、本当に自社に有効か?という疑問を持っておられる方もまだまだ多くいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、今週のトライツブログはMAベンダーがあまり口にしない「MAが向いている企業&向いていない企業」をテーマにしたいと思います。

そもそもMAに向き不向きはある?

確かにMAを導入し活用していくと、誰が(どの企業が)自社のどんな商品に関心を持っているかということがある程度わかるようになりますし、それはどの営業形態の営業にとってとても価値のあることです。従って、ホームページがあって、法人相手にビジネスをしている企業では何らかの効果が期待できると言えるでしょう。

しかし、そこに至るためには多大なリソースの投入が必要であることも事実。だからこそ、「ちょっとやってみよう!」という判断は難しく、「そもそも自社は向いているのか?」と知りたくなるのは当然のことだと思います。

まず結論から申し上げると、我々がこれまでいろいろな企業の方とMAについてお話をさせていただく中で感じるのは「MAに向き不向きは明確にある」ということです。

そこで、トライツとして考える「MA導入に向いていると思われる会社と、そうでないと思われる会社」について特徴をご紹介しましょう。

MA導入のバロメーター。展示会とチャネルがキーワード?

■MA導入に向いている会社の特徴
1)未接触の顧客が市場に沢山ある
2)毎年複数の展示会に出展し、名刺を集めている
3)代理店/特約店のチャネルがない/弱い
4)経験の浅い営業担当者を多く抱えている
5)営業支援スタッフに余裕がある

簡単にまとめると、まだまだ新規顧客開拓を積極的にやりたい、やらないと会社が存続しないと本気で考えている会社です。展示会など販売促進費を使っているので、その費用の一部をMAに回すというような方法でコストの確保も比較的可能です。また、代理店など顧客を紹介してくれる人・組織も十分ではないし、営業担当者の数が足りないと、組織内に新しいものに対する期待も持たれやすいという面もあります。

■MA導入に向いていない会社の特徴
1)すぐに売上を何とかしなければならない
2)自社商品が売れる顧客は限られており、ほぼ接点がある
3)昔からの代理店/特約店のチャネルが機能している
4)ベテランの営業担当者が沢山いる
5)営業支援スタッフがいない

そもそもMAは短期的な売上拡大に有効なツールではありません。そしてそれ以外の項目に該当するのは、比較的歴史があり、限られたマーケットで結果を出してきた会社に多いように思います。既存の代理店や特約店が果たしている役割と被る部分もあり、何かを止めてMAに投資するという考え方もしにくいので、プラスになる費用をどう判断するかという問題に直面しがちです。

また、新規事業を立ち上げている場合、ゼロからのスタートなのでMAとの親和性は高いのですが、まずは目先の商談を何とかしないといけない中で、リソース的にも余裕がないために、余程金銭的も人的にも余裕のある大手企業での新規事業でない限り、「そこまで手が回らない」という状況になることが多いように思います。

既存のしくみにMAをオンできるかどうかがポイント

さて、皆さんは自社を評価してみていかがでしょうか。皆さんの営業はMAに向いている?あるいは向いてない?どちらでしょう。

向いているという結論になった企業は、ぜひ何らかのカタチでスタートするべきです。例えば展示会への出展が盛んな場合は、MAの導入によって、展示会で集めた名刺の顧客にこれまでよりも綿密にフォローすることが可能になるでしょう。既存のしくみにオンすることで、その精度を高めることができるはずです。

これに対して、向いてないと判断された企業では、少し冷静に考えてみることが必要です。

チャネルがしっかり機能している会社では、それを飛び越えて直接コンタクトをするとチャネルから文句を言われたりしますし、ベテランの営業ほど自分のパターンを持っているので、MAで集めたリードに対してレスポンス良く動いてくれなかったりもします。

従って、これらの企業でMAを活用しようとすると、いろいろ調整したり、しくみを変えないといけなかったり、時には教育や意識改革まで必要だったりして大変に「面倒」です。既存のしくみにオンしても簡単には機能しないということです。

MAを既存のしくみにオンできるかどうか・・・実は向いている、向いてないの大きな差はここにあるのです。

既存のしくみを壊して更に生産性向上を目指せるか?

ただし、そのように向いてないと判断できる企業において、MAを導入する価値はないのか?と考えると答えは必ずしもそうでないのがややこしいところです。

例えば、これまでチャネル経由でビジネスをしてきたメーカーが、既存の全国の契約チャネルの数を半分にして、代わりにインターネットでエンドユーザーにダイレクトにビジネス展開ができるようにする・・・などというようなビジョンを明確に持てば、MAは不可欠なツールになるでしょう。

そして、そのようなことに成功すれば、硬直化した業界内での自社のポジションが大きく変わる可能性があります。

今回ご紹介したように、現時点ではMAに向き不向きがあるのが事実です。しかし、向いていない=価値がないということではありません。それだけいろいろな障害があり、苦労はするけれど、成功すれば他社に先駆けたしくみになる可能性があるということです。

結局のところは、そのような状況を自社としてどう捉え、どう動くか?・・・その考えを明確に持つことが大切なのです。

トライツコンサルティングではMAの導入・活用支援だけでなく、そもそもMAが自社の営業に必要/有効なのかを考えるところから相談に乗っています。「競合他社がMAを始めたけどウチもやるべきか・・・」「MAをやるとしたら何から手を付けたらいいのだろう・・・」とお悩みの方は、お気軽にご相談ください。