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商品やサービスが新しく市場に投入され、市場で受け入れられて成熟を迎える一連のプロセスのことをプロダクトライフサイクルと呼びます。導入期、成長期、成熟期、衰退期という言葉を耳にされたことのある方も多いのではないでしょうか。そして、商品やサービスがライフサイクルを持つように、ビジネスコンセプトにも導入期、成長期、成熟期といったステージの変化があるように思われます。

今回のトライツブログでは、以前から話題となっている「Webマーケティング」というコンセプトについて、最新の調査結果を見ながらそのステージの変化を考えてみたいと思います。

データ1:進む企業のWeb購買化

コンサルティング会社Accentureがアメリカで実施している調査では、企業の購買担当者のうちWebで購買をしたと回答した割合が2013年の57%から2014年には68%まで伸びていたとのこと。

企業におけるWeb購買の伸びについて、eコマース向けシステム会社CloudCrazeのCEOであるChris Dalton氏が2016年2月のMarketing Dive誌に語ったところによると、2000年以降に社会人になったミレニアル世代を中心に、各世代でのWebで問い合わせや発注などの購買活動をする傾向が強くなっているそうです。特にミレニアル世代については、「これらの若い世代はオンラインで買い物をするテクノロジーとともに成長しており、Web購買は自然な選択なのだ」と述べています。そして、多くのミレニアル世代が購買担当の職に就くようになっていることで、企業のWeb購買化が進んでいるというのです。

このように、「企業のWeb購買化」という大きなトレンドはこれまでと変わりなく続いていきそうです。それでは、一方で売り手であるB2B企業のマーケティングはどのようになっているのでしょうか。

データ2:Webマーケティングの利益率の低さに悩むB2B企業

Accentureのマーケティング専門グループ企業であるAccenture Interactiveが、『Organizing for Success』(成功のための組織づくり)という調査を最近実施しました。これによると、調査対象の企業の25%は売上の半分以上をWebで稼いでいます。

その中でも、Webマーケティングで特に先行している企業(売上の半分以上がWebによるもの)における最大の課題は、「マーケティング施策の運用管理(42%)」となっています。これは、Webでの売上が少ない企業が課題だと感じている「顧客維持(37%)」「プロセス管理(37%)」「顧客獲得(36%)」とはずいぶん傾向が異なっているように見受けられます。なぜ、このような差が生じているのでしょうか。

そのヒントになりそうな数字が見つかりました。Web関連売上の利益率です。これはB2B企業ではとても低く、同調査によると調査対象企業の40%は利益率が10%以下だというのです。B2C企業で利益率が10%以下の企業は18%しかいないこと、またB2B&B2Cの複合型企業でも利益率が10%以下の企業は22%しかいないことと比べると、B2B企業のWebマーケティングの利益率はかなり悪いようです。

つまり、Webマーケティングで先行している企業ほど、顧客獲得や維持による売上拡大よりも、マーケティング施策の運用にかかるコストや利益率が課題になっているというのです。

コンサルティング会社の提言:組織づくり

では、先に見たようなWebマーケティング運用における利益率を改善するためにどうすれば良いのか。
Accenture Interactiveの調査はそのタイトルにあるように、答えは「組織づくり」だと述べています。それも、現在多くのアメリカのB2B企業に設けられている、Digital Center of Excellenceという部門横断的な業務改善組織ではなく、マーケティング部門とIT部門が完全に統合された組織を作ることでより専門知識を蓄積できるようになり、優れた運用が可能になるというのです。

そして、「リーダーはこれらのWeb戦略への投資の必要性に対して敏感に察知すべきである」ことと、「多くの企業にとって、このような組織づくりは自社だけではとても難しい」ことを示して、このレポートは締めくくられています。

レポートから読み取れる「Webマーケティングのステージの変化」

私たちはこのレポートから何を読み取ればよいのでしょうか。

まず1点目として、企業のWeb購買化の流れは止められるものではない、ということ。2点目として、B2B企業がWebマーケティングに取り組めばそこにはバラ色の未来が待っているわけではなく、「顧客の獲得・維持」という難関をクリアしたその先にも「施策運用の利益率」という難題がひかえている、ということ。これらは上記のレポートで見てきたとおりです。

しかし、注目すべき点はこれだけではないとトライツは考えます。3点目として、Webマーケティング市場を先導するマーケティング会社やコンサルティング会社のメッセージが変わってきた、ということが挙げられます。

これまでのWebマーケティングに関する記事は、「Webマーケティングに取り組む企業が増えている」「こんな最新のサービス/技術が生まれた」「だから、乗り遅れないようにしましょう」というものがほとんどであったように思います。事実、このトライツブログでもそのような記事をいくつか紹介してきました。

それに対して、今回の記事は「Webマーケティングでの次の課題は『利益率』だ」「そのためには、組織のあり方を変えよう」というように、これまでとは課題の示し方がずいぶん変わっています。これは、Webマーケティングという業務やシステムが、アメリカの主だった企業には一通り導入されて、顧客獲得・維持もできるようになり、その先にある利益率や部門間連携という課題に直面するようになった。つまり、B2B企業のWebマーケティングは次のステージに突入しようとしている、そのように今回のレポートからは読み取れるのです。

レポートの見方を変えてトレンドの変化を確かめよう

上で見たような調査は、マーケティング会社やコンサルティング会社によって多く作成・公表されています。その中にある数字は、誰かに回答された現在のスナップショットなのですが、それが読み解かれてレポートや記事という体裁になるにしたがって、作成者として目指すべきだと思われる将来の姿を反映したものへと変わっていきます。そして、そのレポートの中で示されている将来の姿がこれまで通りなのか、それとも変わってきているのか、そこからトレンドの変化の兆しが見えてくるのです。

今回のトライツブログでは、コンサルティング会社のレポートから見えてきた「Webマーケティングのステージの変化」に着目しました。これからもトライツブログでは、B2B営業・マーケティングでの最新のトピックスだけでなく、トレンドの変化やステージの変化についても引き続きウォッチしていきます。

参考:Why hurdles still exist despite the rise in B2B digital sales|MarketingDIVE

今回ご紹介したWebマーケティングは、顧客の購買活動のWeb化に伴ってB2B営業でも当たり前の施策になりつつあります。トライツコンサルティングでも、Webマーケティングの立上からコンテンツ作成等の運用支援まで幅広く取り組んでいます。「Webマーケティングを始めたい」という方も、「もう一段上のステップに進みたい」という方も、お気軽にご相談ください。これまでの取組事例など、より具体的なヒントを差し上げられると思います。