「トップダウンでSalesforceを導入することになった」「トップからの指示で、Salesforceを導入した」ということをよく聞きます。salesforce.com社はご存知のように米国カリフォルニア州に本社を置く、顧客関係管理(CRM)ソリューションを中心としたクラウドコンピューティング・サービスの提供企業です。全世界で年率30%以上の成長を続けており、既にユーザーである、あるいは導入を検討されているという企業も多いのではないかと思います。

そこで、「なぜトップダウンで?」と伺うと、「トップが顧客と会う時、どんな取引状態にあるかわからない。他社ではSalesforceを入れ、それを全て見ることができるそうだ。自社もやるべきではないか」などという話がトップから降ってきたことがきっかけということが多いようです。

今回のトライツブログでは、このSalesforceに焦点を当て、「トップから導入しろと言われた時にどうするか」を皆さんと一緒に考えてみることにします。

自らの成功手法を売るSalesforce

Salesforce.com社が設立されたのは1999年。今から20年前のことです。当時、私(角川)はその前の年に日経文庫「営業革新システムの実際」を出版しており、日本でもSFAが注目され始めていた頃でした。

当時はSiebelが有名(後にオラクルに買収)で、SalesforceはSFAの中では後発。クラウドが一般的になってきてから爆発的に成長してきたという印象があります。

そんなSalesforceは営業を科学的にとらえ、研究し、自らその考え方にのっとって営業してきたことによって急成長を実現しています。自分達の営業のやり方をオープンにし、「これを参考に皆さんも成功してください!」というのが彼らのスタンスです。クライアントの成功事例ではなく、自らの成功事例を語り、そのベースになるシステムを販売するのですから、とても説得力のあるビジネスモデルだと言えるでしょう。

毎年彼らが実施している日本での販促イベントは、とても大掛かりかつド派手なもので、凄い盛り上がりです。

信じる者のみ救われる世界なのだが・・・

彼らのように成功するためには、その営業のやり方を取り入れる必要があります。誤解を恐れず、ハッキリと言ってしまえば、「Salesforce教の信者になる」ということです。信じる者は救われるのです。

ただ、残念ながら多くの企業ではそのようなことをしません。Salesforceというシステムだけを導入しようとします。

特に多いのは「トップからの“Salesforceを導入せよ”という指示がありまして・・・」というものです。そのトップが「Salesforce教の信者」であり、「Salesforceのような営業を自社でもやりたい!そのためなら何でもやる!!」という覚悟があれば何ら問題はないのですが、そこまで高い意思を持っていることは稀です。

ほとんどは「Salesforce」というものを十分に理解することなく、イメージで判断してしまうようです。営業担当者がスマホで入力した情報をマネージャーもスマホで確認し、すぐに指示ができるのでわざわざ事務所に戻る時間が削減され、報告のための会議もなくなり、資料作成の時間も大きく減り、それは働き方改革につながる。また、プロセスを管理するので、見込み数字の精度も向上。トップは客先訪問前にシステムを覗けば、面談に必要な情報が取り出せる・・・・などというように、自分達の仕事が楽になる、効率的になるというような感じで話を進めてしまうのです。

上手くいかないのはシステムが悪いのではない

しかし、実際にはそれでスマホが常に「ブーブー」と通知音が鳴ってばかりになり、「いちいち見ていたら仕事になりません」と言っているマネージャーは少なくありませんし、入力されている情報がそのまま伝わってしまうと面倒だと、わざわざExcelで上司に忖度した資料を作っているというのも珍しくありません。また、トップが現状を理解しようとすると、膨大なテキスト情報を読み込まないとならないという話も聞きます。

これらはどれもSalesforceが悪いのではなく、「どう運用するか」というルール決めや、それに基づくシステムの設定などが不十分だったことに起因していることがほとんどです。事前に十分な議論をせず、「とりあえず・・・」と商談管理だけなど機能を限定して導入するのですが、短期間のうちに現場の声を上手く機能に反映していくことができず、現場の気持ちが離れ、「Salesforceは使えない」となってしまうということは少なくありません。

また、せっかく導入するのだから・・・と莫大なカスタマイズ費用を投入して、Salesforceを自社に合わせようとする企業もありますが、それではSalesforceの持つ本当の価値を活かせず、従来からの仕事のやり方に合わせた高価な管理システムを導入しただけになってしまいます。

実はこんなことはSalesforceに限ったことではなく、SAPなどのパッケージで繰り返されてきたことです。従来からやってきた自社の仕事のやり方にこだわり、システムをそれに合わせようとして、そのシステムが持つ思想、仕事のやり方を取り入れることができません。

これらはそのシステムが悪いのではありません。悪いのはシステムを導入する「姿勢」なのです。

ウチで使えるか?ではなく、ウチがこれやりたいか?で判断しよう

システムのデモを見た時、よくあることとして「このシステムはウチで使えるか?」ということで話し合いをされるのではないかと思います。
やりたいことが明確になっており、それに対するアプリケーションを探している場合は問題がないのですが、Salesforce のようにシステム側にハッキリとした思想のあるものに対し、そのアプローチは適切ではありません。

「このシステムで提唱している営業を自社がやれるか?やりたいか?」
「やろうとした場合、いろいろ出てくる社内の古い障壁に立ち向かう覚悟があるか?」

この投げかけに対して答えを出すためには、Salesforceというシステムでなく、彼らの営業手法をよく理解し、「それをやりたいか」で判断すべきだと思います。

そのためには、トップから「Salesforceを導入しろ!」と言われた際には、いきなり「自社でどう使えるか」と現場で議論するのではなく、トップを巻き込んでSalesforceの提唱する「営業文化」を学ぶことから始めることが必要なのです。

もちろんそれはSalesforceに限ったことではなく、他のSFAやCRM、MAなどでも同じですし、我々のようなコンサルタントの力を借りるにおいても同じようなことが言えると思います。それぞれに「思想」がありますし、「相性」もあります。それを理解し、そこから自社が学びたいかということをしっかり考えることが大切なのです。

トップダウンを拡大解釈し、営業改革につなげよう

それとこれが最も大切なことなのですが、トップから「Salesforceを導入せよ」と言われたということは「営業改革」の大きなチャンスです。「営業なんて現場でそれぞれ工夫するもんだ」などと言って興味を持たれないのと比べると雲泥の差と言えるでしょう。

ただ、その言葉をそのまま鵜呑みにするのではなく、「何らかの手段を導入して営業を改善せよ」と言われたと前向きに拡大解釈し、「そもそもこれから自社の営業をどうしたいのか?」というところから議論したり、Salesforceをネタにして「こんな営業をやりたいか?」を話し合ったりするきっかけにしていけば良いのではないかと思います。

逆に絶対にやってはいけないのは、現場の反発が起こらないようにこっそりと一部の部署にだけ導入して「お茶を濁す」ということです。これではせっかくの営業改革のチャンスをムダにしてしまうことになってしまいます。

また、既にトップダウンでSalesforceを導入しておられる企業は、もっと「どうしたらこのシステムの持つ思想を自社の営業に活かせるのか」という視点で考えていくことが、営業改革につながっていくことでしょう。

トライツコンサルティングではSFA導入に向けた営業の進め方の見直しや、SFA導入後の利用データ分析など、SFA導入を営業力強化につなげるための取組をご支援しています。「SFAを入れろと言われているが・・・」という方も、「SFAは入れたものの・・・」という方も、お悩みのことやご相談したいことがございましたら、お気軽にご連絡ください。