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2016年が始まりました。4月以降の新年度に向けて営業力強化の施策を考えている方も多いのではないでしょうか。

今回のトライツブログでは、アメリカでの調査結果をもとにB2B営業として何に投資すべきなのかを考えてみたいと思います。

マーケティング関連のコンテンツ、スキルトレーニングを提供するCorporate Visions社が、B2Bマーケティング・セールスに関する調査結果を発表しました。調査対象となったのは、世界中のB2Bマーケティング・セールスの幹部社員430名以上。その結果、企業が費用と時間を最も費やしているのは「セールス・プロセスに関する活動」であるのに反し、営業を成功させるのに最も重要だと考えられているのは「メールなどのメッセージのやり取りや対話」であることがわかりました。

Corporate Visions社のマーケティング戦略部門の主任であるティム・リーステラー氏は、「今回の調査で、企業が最も価値があると考えているものと、実際に最も時間や費用を費やしているものとの間にある大きな矛盾が明らかになりました」と言います。

「営業担当者にとって、どの顧客を訪問するか、どうやって商談を発掘するかを知ることはもちろん重要です。しかし今回の調査で、それよりも『商談の場で何を話すか』のほうが重要だと売り手側の企業の幹部が考えていることがわかりました」。

以下に調査結果の詳細を見てみましょう。

調査結果1:投資の優先順位

企業が営業教育に最も時間や費用をかけているのは以下の通りと回答しました。

  • セールス・プロセス(34%):営業担当者が顧客管理や商談の場面で「何を」「どのように」行うべきかを把握させる
  • 商品トレーニング(27%):商品の機能や特徴を営業担当者に教え、専門家に育てる
  • メッセージのやり取りや営業現場での会話(26%):営業担当者が商品の価値を際立たせるために、何についてどのように伝えればいいかを把握させる

また、オートメーションテクノロジー(営業担当者に最新のセールスオートメーションシステムや営業関連のテクノロジー/ツールを提供する)に最も時間や費用をかけていると回答したのは、回答者の13%でした。

調査結果2:B2B企業が最も重要であると思っていること

回答者の61%は、B2B営業を成功させるために最も重要な要素は「その商品が提供できるソリューションが、いかにユニークで独特なものであるかを伝えることができる能力」であると回答しました。第2位以降の要素は以下の通りです。

  • 優秀なセールス・プロセスを持ち、それを一貫して実施すること:19%
  • 商品ポートフォリオ全体の最新の状態を把握していること:11%。
  • 生産性向上のための最高のテクノロジーやツールを持つこと:9%

日本でも進むセールス・プロセスへの偏重と「対話離れ」

これは主にアメリカでの調査ではありますが、日本の営業現場での営業力強化のための施策に対しても、警鐘を鳴らしているように思われます。

日本のB2B営業でも、費用をかけているのはSFAやCRMのシステムばかりで、「正しい手順」「正しいやり方」で営業活動をするように矯正されつつ、訪問件数や提案件数といったKPIに追いかけられているということが多いように思われます。

その一方で、営業研修を定期的に実施している企業は本当に少なくなり、たまに商品勉強会をやる程度。顧客訪問前のロープレ活動も最近ではあまり見かけなくなりました。

日本での営業力強化の施策もセールス・プロセス一辺倒となり、営業担当者と顧客との対話にはほとんど目が行っていないのが実態ではないでしょうか。

大事なのは「何をするか」ではなく「何を話すか」

しかし、今回の調査結果により、B2B営業において成果を出すために最も大事なのは、ヒアリングや提案といった「何をするか」ではなく、顧客と接しているときに「何を話すか」だと、考えられていることが明らかになりました。

当たり前の話ですが、これはデートのときに「どのレストランに行って、いくらのコースを食べたか」によってそのデートがうまくいくかが決まるわけではない、というのと同じです。楽しいデートであればあるほど、食事のメニューよりもレストランの中や行き帰りの道のりで話している内容やその雰囲気の方が、より印象に残っているという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。相手との関係の中で「対話」はそれだけ大事な役割を担っているのです。

「顧客研究」が対話をうまくいかせるためのカギ

では、相手との対話をうまくいかせるためにはどうしたらよいのでしょうか。

デートする相手と楽しく話ができて喜んでもらえるようにと、相手の好みを事前に調べておくように、B2B営業の対話でも大事なのは顧客のことを知りたいと思い、顧客のことを深く研究することだと考えます。

しかし、日々の営業活動や営業会議の場面に立ち会っていると、「自分たちが何をしたか」「次に何をするか」ばかりが話されています。そこで私から「お客さんの反応はいかがでしたか」「お客さんはどんな気持ちだと思いますか」と質問すると、「よく覚えていません」とか「気にかけていませんでした」という答えが返ってくることがあります。これでは、営業担当者のひとりよがりになってしまっています。

大切なのは「何をするか」よりも「何を話すか」、そしてそれよりもっと大切なのは「相手が今どう思っているか」を常に意識し研究していること。
B2Bマーケティングの先進国であるアメリカでの調査結果から、顧客との対話の重要性、また顧客がどういう状態にいて、どういう気持ちでいるのかを研究することの重要性を再確認することができました。

新年度からの営業施策として、顧客との対話力を磨く教育研修や営業現場でのロールプレイ、また優先順位の高い顧客についての研究ワークショップなども候補として考えられてはいかがでしょうか。

参考:New Corporate Visions Survey Finds B2B Companies Agree Sales Conversations Have Biggest Impact on Closed Deals, But Still Primarily Invest in Sales Processes Instead

トライツコンサルティングでも、これまで多くの企業の営業研修や営業教育、はたまた育成のロードマップ作りをお手伝いしてきました。営業担当者の教育・育成にお悩みの方、事例を知りたいという方は、下記よりお気軽にご相談ください。