この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

以前のトライツブログで、BtoBにおいても買い手がWebを使って独自に商品情報を収集することが一般化しており、企業のマーケティング担当者が改めて「顧客を理解する」ことが課題であると認識しているという米国での調査結果をお伝えしました。
WebやSNSの発展により、顧客は商品や企業について今までよりはるかに多くの情報を集められるようになっています。そのため、顧客はあなたとコンタクトを取りながらであっても、あなたの見えないところで情報収集を進め、自分で意思決定までしようとしています。

このような見えない顧客の生態について今回のトライツブログでは、米国の複数の調査結果をご紹介しながら、Webの向こう側にいる顧客とどのようにコンタクトをとり、コミュニケーションを進めていくことが大切なのかを考えていきましょう。

Webで情報収集している顧客の生態は?

まず、Customer THINKというサイトの中に最新の調査データをまとめた記事(40+ B2B Marketing Statistics and Benchmarks to Inspire Performance Throughout 2015|customer THINK)がありましたのでご紹介します。

  • B2B購買者の67%は、一年前と比較し、商品探索や購買決定の際にコンテンツに頼ることが増えたと回答しています。
  • B2Bテクノロジー購買者の約64%は、購入前に2~5 のコンテンツに目を通す傾向があります。
  • ビジネスオーナーの68%は、新規のB2B販売者の信用度をはかるためには、外部(その企業に関連性のない個人や組織)からの評価が最も重要な要素であると考えています。
  • エージェンシーやブランドの約60%は、コンテンツマーケティングは自社のマーケティング戦略にとって「非常に重要である」と考えています。

そして、KoMarketing / Huff Industrial Marketingでの調査結果もご紹介します。

  • 53%の回答者は、販売者の信憑性を確かめるために「連絡先についての詳細な情報」が最も必需な情報であるとしました。第2位に挙がったのは「企業について/社員情報」で、その割合は14%です。
  • 多くの企業ウェブサイトに欠けているコンテンツの種類とは何かを質問した場合、51%が「完璧な連絡先の情報」と回答しました。
  • 回答者の58%は、オンラインでフォームを提出する際に電話番号は提出したくないと考えています。
  • 回答者の37%は、購入を決定するまでに販売者のウェブサイトを3~5回訪問するとのことです。

さて、あなたはこれらの調査結果からどのようなことを考えますか?

Webの向こう側の顧客はまるで・・・・・・

調査結果からすると、顧客は購入の検討にあたり、多くのコンテンツを見ていますし、何回もサイトを訪問しているようです。その企業から提供している商品やサービスの情報だけでなく、外部からの評価も知りたがっています。

そして、顧客は「どんな会社なんだろう」「どこにあるんだろう」「この会社のバックにはどんな人がいるんだろう」「何か問題が起こった時に誰かが対応してくれるのか」「自分が送った情報を適切に扱ってくれるのか」など購入先の詳細な情報を具体的に知りたいと思っています。

また、自分についての情報を出すことを嫌がります。特に電話番号のような、相手から直接的にコンタクトされてしまう可能性のある情報を出すことを極端に嫌がるようです。

まるで恋い焦がれる先輩のことをもっと知りたいのに、先輩に直接声を掛けることはできず、遠くから見ているだけの恥ずかしがり屋でナイーブな乙女(古い?)のようではありませんか。

きっとこんなことを言うと笑う人もいるでしょう。しかし、Webの向こう側にいる顧客は、不安を感じたままでは決して近寄ってきませんし、不快感を覚えたら二度と戻ってきてくれません。それはFace to Faceでは言いたいことをズケズケ言ったり、ぐいぐい質問してくる人であっても、Webでは相手の顔が全く見えないので、そのようにふるまいがちであるという人間の特性に依存しています。

BtoCであれば逆にWeb上でだけ攻撃的になる人もいますが、BtoBでは会社の看板を背負っているという意識が働くために、ダメだと判断すれば黙って立ち去るという行動に出るようです。

このようなWebの向こう側の顧客特性が分かっているかどうかで、マーケティングに大きな差が生じてきます。あなたの会社ではそんな顧客特性をどこまでわかった上でWebサイトを考えていますか?

日米の企業ホームページ比較

この「乙女の視点」で企業のホームページを見てみると、海外、特にアメリカのサイトは、非常に工夫されていることがわかります。

商品やサービスの担当者が顔写真付きで紹介されていて、その下にはtwitterやFacebookなどのSNSへのリンクが張られていたり、ブログが紹介されていたりするサイトをよく見かけます。それらを読んでいくことで、担当者がどのような思いでその商品に携わっているのかということや、仕事以外で考えていることまで知ることができ、親近感を覚えられるように工夫されています。
それによって連絡先としての『個人』をうまく前面に出し、知らない会社に問い合わせをするという行為の敷居を下げているのです。

その一方、日本の企業のホームページを見ると、担当者や連絡先としての『個人』が前面に出ているホームページは、Web系やベンチャーなどごく一部の企業だけです。多くの企業は「商品紹介ページ」と「問い合わせフォーム」があるだけ。売り手側が発信したい情報を発信し、「何かあればここに問い合わせてください。内容によってこちらで判断して対応しますので」と、顧客には事務的なドアしか開けていません。これでは恥ずかしがり屋でナイーブな乙女はなかなか扉を開いてくれないでしょう。顧客は益々、こちらの見えないところで何とかしようと動くことになってしまいます。

Webだからこそ人を売らないといけない

では自社のWebサイトに個人名を出し、「私がご相談に乗ります」と担当者の顔写真を出せば解決するか?というとそのような簡単なものではありません。
そもそも組織体制がそのようなことを前提にした体制づくり、役割分担、リソース配分、評価制度になっていないので、今の組織の今の役割にプラスオンされるだけになりがちです。それでも最初のうちで問い合わせの少ないうちは何とかなるでしょうが、沢山の玉石混交な問い合わせが来るようになるときっと破たんするでしょう。従って、顧客が「問い合わせして良かった」と思える対応が安定してできるように組織体制から考える必要があるのです。

また、Webの向こう側の顧客が、実際に問い合わせるという行為に出る前に、その人の書いたブログなどのコンテンツを探し、目を通します。そして自社の商品だけでなく、その人に興味を持つことで問い合わせをしてくるのです。これはWebの時代だからこそ、伝わりにくい「人」というものに焦点を当て、あえてその「人を売る」ということが重要になってきていると言えます。

そうしないと、Webの向こう側の顧客はあなたとの接点を持つことなく、あなたの発信する情報だけを黙って見ているだけになってしまいます。

ここまで書いてきて、このトライツブログもまだまだだなあと思いました。
もっとこれからトライツという会社と、そこで仕事をする我々についても知っていただくことを考えていく必要がありますね。

参考:
40+ B2B Marketing Statistics and Benchmarks to Inspire Performance Throughout 2015|customer THINK