皆さんが顧客に提出している提案書はメタボになっていませんか?
一般的に提案書というものは経験を積んでいくと分厚くなっていく傾向があります。「あの時に使った資料もあった方がいい」「せっかくならこの情報も補足資料として添付しておこう」など、どんどんと足されていくからです。

また、分厚い提案書を準備するということは、妙な「仕事した感」があったりもしますし、顧客に誠意が伝わるのではないかという「期待感」や根拠のない「安心感」も出てきたりして、なかなかそれを断ち切るのは難しいものです。

今回のトライツブログでは、メタボな提案書に隠された問題とその対策について考えてみましょう。

A社の事例:うまい提案書=分厚い提案書?

つい先日、ある営業マネージャーから提案についての相談を受けました。

今までにまったく取引のない大手顧客(以下、X社)の開発担当者から、その営業マネージャーがいる会社(以下、A社)の営業窓口に1本の電話が入ったそうです。話を聞くと、A社が最近新しく発売開始した製品に興味があり、それを活用した新商品の開発を検討したいので提案を出してほしいとのこと。これに対応したA社の若手営業担当者は、営業マネージャーに報告・相談してから3種類にパターン分けされた大作の提案書を作り上げました。提案書は製品の技術データから始まり、関連する市場の統計情報や競合他社との比較など、新しい製品に関連する情報がパンパンに詰め込まれています。

この提案書を見た営業マネージャーから「X社は新規だが将来が期待できる企業。今回は大事な商談になるので、提案書をチェックしてより良い提案書にしてほしい」と連絡もらい、営業マネージャーと若手営業担当者と一緒にX社向け提案書打合せをおこなうことになったのです。

その打合せの冒頭で、最初に若手営業担当者から商談の経緯と作った提案書についての説明をしてもらいました。すると、そこで「説得」や「論破」という言葉が出てきます。その表現が気になったので、A社にとって「良い提案書」とはどういった提案書なのかを聞いてみました。

「まず基本レベルとして、顧客にとって二度手間にならないように、知りたい情報が揃っていること」
「さらに顧客の情報が不十分なときは、さまざまな仮説を考えてパターン分けした提案になっていること」
「今回の提案書は、この2点を意識して作ったものです」
と、営業担当者は答えてくれました。

彼らはどうやら提案書メタボに陥っていたようでした。

メタボな提案書は顧客が理解する気をなくす

提案の段階で顧客を「説得」しよう、反論されたら「論破」しよう、そもそもぐうの音も出ないほど完璧に練り上げた提案をしようと力が入れば入るだけ準備に時間が掛かりますし、提案書は分厚くなります。この若手営業担当者が作った大作の提案書も、新商品の開発について顧客がきちんと意思決定できるように、しかもその意思決定が自社にとっても良い方向の答えになるように、とあらゆる状況を考えて作った立派なものでした。そしてしっかりと「念のため」「せっかくだから」ということで添付資料も沢山付いているという典型的なメタボ状態になっていたのです。

提案書メタボの最大の問題は、「顧客が理解しようとする気を無くす」ということだと思います。直接面談をしている相手がたまたまそういうのが好きな人であっても、社内で話を通そうとすると誰もわかってもらえないという状況になってしまいがちです。
ただし、だからと言っていきなり急激な提案書ダイエットも良くありません。提案する側が不安を感じ、自信を持てなくなってしまうのはマイナスです。また、こちらの考えで減らしてみたものの、後で「やっぱりあった方が良かった」などということもあったりするのでダイエットは決して簡単ではないのです。

提案書で大切なことは、提案の後に顧客に動いてもらうことです。そのために提案書を相手にどう活用してもらうか。そういう提案書のあり方から考えることが大切なのです。

「提案する側」「提案される側」から仲間意識を持てる関係へ

結局、A社では若手営業担当者が作った分厚い提案書には一切手を入れませんでした。それはそれで一つの完成形になっていたからです。ただし、提案の際にステープラで止めていないバラバラの提案書を一組持参することだけアドバイスをしました。

提案の説明の後、「この後、御社内でご説明されると思うのですが、そこではどんな順番でお話しになられますか?そこで使われる資料の順番で並び替えた方が使い易いと思いますので、こちらで編集してお渡しします」などと言って、机の上にバラバラの提案書を並べるのです。そして、顧客に選んでもらいます。そこで「これとこれはまとめてもらって・・・」とか「ここはいらない」などというリクエストも積極的に聞くように伝えました。

商談には必ずと言ってよいほど「提案する側」と「提案される側」という2つの役割が存在しています。お互いにそれぞれの役割に納得・満足していればいいのですが、往々にして「必要な情報だけを漏れなく集めたい顧客」と「自社にとって最適な結論に誘導しようとする営業」という、対立する構図が見え隠れしています。

しかし、バラバラの提案書を机に広げて話し合う場面においては「社内をどう説得するか」を一緒に考える仲間意識を持つことができているはずです。もし、顧客がその行為そのものに関心を持たず、「今のままでいいです」などと言ってその場をすぐに終わらせようとしたら、そもそもその相手は買う気がないと判断できるでしょう。

顧客に選んでもらうことで何が大切なことかがわかる

結果、作戦は見事に成功。顧客はこちらが想定していたのとは全く違う順序で説明したいと言ったそうです。その理由は「なるほど」と思うものでした。そして、顧客も社内の関連部署に説明した結果から「次はこうしたい」などとハッキリとリクエストしてくれるようになったと聞きました。
また、どの資料が顧客にとって大切なのか、意味のあるものなのかということも理解することができ、次回以降の提案書に向けてダイエットの方向性がはっきりしたのです。

「とりあえず」「念のため」などと言ってメタボになりがちな提案書ですが、このようなやり方をしてみることで、顧客との仲間意識を高めたり、ダイエットすべきところがわかったりするものです。あなたも一度、提案書のあり方から少し見直してみませんか。