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メルマガ、ブログ、各種のWeb広告にSEOやSNS。数多くのWebマーケティングの手法・ツールが世の中に溢れています。
ただこのWebマーケティングも、流行りの手法やツールを一通り揃えておけばよいというものではありません。実際に見込み客を発掘して商談化できなければ費用の無駄使いになってしまいます。
今回は、あるB2B企業のWebマーケティングへの取り組み例を通じて、数ある手法やツールの中から自社の営業に本当に必要なものを見つけるためのポイントをご紹介します。
顧客不在のWebマーケティング
舞台は、企業向けの業務用システムを開発・販売しているシステム会社A社。
最近A社は業務用システムの1つを大幅にリニューアルし、それに合わせて専用のWebページを新たに立ち上げ、見込み客の発掘につながるWebマーケティングを導入しようとしていました。
Webページ立ち上げのためにA社の課長は、Web制作会社の技術者やマーケティング担当と何度も打合せを重ねてきました。その結果、ページ構成案やそこで使うWebマーケティングの手法やツールの候補が決まってきたものの、課長はどうも腑に落ちない様子です。Web制作会社から送られた提案書を眺めながら首をかしげています。
「確かに一般的にはこの構成なんだろうけど、本当にこれでいいのかな?」
「よく聞くWebマーケティングのツールも一通り入っているけど、本当にこれが全部必要なのかな?」
「そもそも顧客はどんなことを考えて、うちのページを見に来ているのだろう?」
そのようなことを考えているうちに顧客の立場に立って考えようとしたものの、顧客が何を知ろうとしてWebページを見に来るのかをわかっていないことに課長は気がつきました。ふだんの営業同行ではそのような話を聞く機会はないですし、自分が営業担当者だった頃とは状況が激変しているからです。
商談に隠れていた顧客の3つの購入ステップ
そこで課長は課員を集め、最近受注/失注した商談についてホワイトボードで整理してみたのです。顧客がA社に問い合わせてきたタイミングはいつなのか、そのときに顧客はどんな状況で、何を知りたいと思っていたのか、そしてA社はどんな対応をとったのか・・・。
その結果、顧客は以下の3つの購入ステップを進むことが分かりました。
1.顧客の業務における個別の問題が、組織として解決すべき「課題」として認識されるようになるステップ
2.その課題を解決する方法について、色々な情報を集めて比較・選定するステップ
3.選定した解決方法を導入するために社内を調整し、決裁を得る意思決定のステップ
この3つのステップで顧客の情報を整理してみると、A社とのコンタクトがある、なしに関わらず顧客はこのステップを進むもので、どこかが中途半端だと商談がふりだしに戻ったり、ダメになったりしていました。また、それぞれのステップにおいて顧客が必要とする情報はまったく違うこともわかりました。そして最近の特徴として1つ目の「課題認識」と、二つ目の「比較・選定」のステップを顧客が自らWebを検索して情報収集するように変わってきており、これに対応するようにWebマーケティングを考えていかねばならないことが確認できたのです。
顧客の購入ステップが分かれば、Webマーケティングに必要なものが分かる
課長は3つのステップが書いてあるホワイトボードの前で、改めてWeb制作会社から送られた提案書を読み直しました。顧客の購入ステップという視点で見ると、これから作ろうとしているWebページは自分たちのシステムの特徴とか、他社との違いなどを伝えるだけのものになっていました。3つのステップの二つ目の「比較・選定」には参考になる情報ですが、顧客が3つのステップを進むことを支援するには不十分です。課長が提案書を見て感じた違和感はここにあったのです。
さっそく課長はWeb制作会社の担当に電話をかけます。
「顧客が課題を表現する時に使うキーワードを見つけたので、これで検索されたときにウチのページが上位に並ぶようにしてほしい」
「比較・選定中の顧客向けに、ウチのシステムと他社のシステムとの違いを比較できるPDFをダウンロードできるようにしたい」
「顧客の中で購入ステップがどこまで進んでいるか確認できる質問項目を、問い合わせフォームの中に差し込んでくれないか」
そもそもA社がやろうとしていたWebマーケティングは、流行りのツールや手法を使ってはいるものの、結局のところは以前から行ってきた情報発信を組み替えただけのものでした。それが、顧客の購入ステップという考え方を見つけたことで、不足していること、もっと強化すべきところなどが明確になり、どんどんA社オリジナルのアイデアも出てくるようになっていったのです。
Webマーケティングを考えるための軸を見つけよう!
A社の事例では、そもそも顧客がどのようにして見込み客となり、最終的に購入の意思決定をするのかから顧客の立場に立って考えることで、顧客の購入ステップというWebマーケティングの背骨を見つけることができました。この軸がないと、流行りの手法やツールをかわるがわる取り入れてはいるものの見込み客がいっこうに見つからない、コストばかりかかるWebサイトができあがってしまいます。A社の課長は軸を見つけたことで、顧客が自分たちのシステムを買うために必要な情報が何か、それぞれの購入ステップの見込み客に対して有効なWebマーケティングが何かを自信をもって判断できるようになったのです。
皆さんも顧客の購入ステップを思い浮かべながら、自社のWebサイトを見直してみてください。どのような情報が足りないのか、どのようなWebマーケティングが有効なのかがきっと見えてくることでしょう。