「価格を知りたい」「商品を見せてほしい」など、ビジネスをやっていると色々な問合せが飛び込んできます。ある企業の方に聞いたところ、最近ではWebページやSNSなどで情報収集をあらかた済ませてから、本当に知りたいことだけを質問するというパターンの問合せが多く、Web経由での問合せ対応が一番受注する割合が高くなっているそうです。Webを皆が仕事で活用するようになり、Webからの問合せ対応の重要性が高くなってきているといえるのではないでしょうか。

そこで、今回のトライツニュースは海外の調査レポートを題材に、「企業のWebでのカスタマーサービスの実態と課題」についてご紹介します。世の中の企業はWeb経由での問合せに対してどのように対応しているのか、一緒に見ていきましょう。

「Customer Service Benchmark Report」から見る問合せ対応の実態

CRM関連のシステム/サービスを提供しており、特にB2Bマーケティング領域では優れた調査レポートを各種作成していることでも有名なSuperOffice社が「Customer Service Benchmark Report」を最近発表しました。規模が偏らないよう1,000社を層別ランダム抽出して実施した、このレポートの結果がかなりショッキングかつ興味深いものになっておりますので、抜粋してご紹介します。

調査の結果を見る前に、このレポートの調査手法をご紹介します。

調査対象の企業に対して、2つのシンプルな質問が書かれたメールを1通ずつ送付しました。
質問1.直接話ができる電話連絡先はありますか?
質問2.Webサイトのどこに価格情報がありますか?

カスタマーサービスの品質を調査するにしては、拍子抜けするくらいにシンプルな質問ですが、このメールに対して調査対象となった1,000社がどのように対応したのか、見ていくことにしましょう。

調査結果1:問合せへの回答率

最初の調査結果は、先ほど見たシンプルな問合せメールに対する回答率からです。

私たち調査チームが1,000社に対してメールを送ったとき、当然1,000社すべてから当たり前に回答が来るものだと思っていた。62%(624社)から回答が戻ってこないと分かったときの、衝撃を想像してみてほしい。

ということで、「電話連絡先」と「価格情報ページ」を聞くだけの簡単な問合せメールに対する回答率は、たったの38%。調査レポートの中では回答率が低かった理由として、「Webサイトのコンタクトフォームでしか問合せを受け付けていない企業があった」などとコメントしていますが、それでも38%の回答率というのは何とも残念な結果です。

調査結果2:問合せへの回答時間

2つ目に紹介する調査結果は、問合せメールを送ってから回答が届くまでの時間です。

「迅速な顧客対応」はカスタマーサービスの質を測る上で最も重要なだと言われている。そのため、平均回答時間が12時間10分もかかっていたというのは驚愕の結果だったた。
最短回答時間はカスタマーサービス・ソフトウェア企業からの1分。一方、最長回答時間は電子製品販売店の215時間(8日)。回答があった企業のうちの75%は、問合せメール送信から12時間以内に回答があった。

しつこいようですが「電話連絡先」と「価格情報ページ」という極めて簡単で機械的に対応できそうな問合せなのですが、それでも平均回答時間が12時間超というのはちょっと長すぎる気がします。

調査結果1と2を組み合わせると、簡単な問合せメールを企業に送っても回答が戻ってこない割合が6割で、戻ってくる割合は4割。ただその4割のうち12時間以内に回答が来るのは3割で、残りの1割は12時間以上(最悪な場合は8日以上)経ってから、ということになります。

調査結果3:回答後のフォローアップ

Harvard Business Reviewによると、顧客からのクレームの最大の要因は『貧弱なフォローアップ』です。そして、ひどいフォローアップを経験した顧客のうち、65%はSNSやオンラインコミュニティなどでその企業の悪口を書き込み、48%は自分が受けたひどい体験を10人以上の人に話す、というデータもあります。それくらいに顧客フォローが重要だということをわかった上で、3つ目の調査結果を見てみましょう。

1,000社のうち、回答結果への満足度を質問したり、カスタマーサービスの質をレベル付けしてもらったりというフォローアップを行った企業は24社だけ。3%にも満たない結果だった。

1,000社のうち問合せに回答した企業は調査結果1によると376社なので、問合せに回答した企業のうちフォローアップまでしっかりした企業はたったの6%(24/376社)となります。これもなかなか衝撃的な数字だといえるでしょう。

まだまだ未熟なB2Bのカスタマーサービス

ここまでSuperOffice社の「Customer Service Benchmark Report」についてその概要をザックリと見てきましたが、正直に言って惨憺たる数字でした。「CX(顧客体験)」や「カスタマージャーニー」など、カスタマーサービスについてのキーワードが新聞や雑誌で頻繁に取り上げられるようになってきているものの、半分以上の企業は簡単な問合せにも回答できておらず、そのフォローアップまでできている企業は1割にも満たない、というのがB2Bのカスタマーサービスの実情です。

これは、私には非常に大きなチャンスだと思えます。顧客体験が重要だという論文や記事、書籍は星の数ほどあり、その重要性は確実だといえる状況であるにも関わらず、実践できている企業はほとんどない。問合せに対して12時間以内で回答し、数日後にそのフォローアップをするだけで、カスタマーサービスでトップ数%の優れた企業になれるチャンスが目の前にあるのです。

カスタマーサービスの充実がバイヤーイネーブルメントにつながる

そして、このカスタマーサービスを充実させることには、もう1つの意味があると私は考えます。現在、B2Bマーケティング/営業において、「バイヤーイネーブルメント」という大きな流れが起こりつつあります。これは、以前のトライツニュースでもご紹介したコンセプトで、Webなどを活用して営業マンに頼らずに購買のための情報収集を行っている購買担当者に対して、「分析」「診断」「比較」などの様々な機能を自社のWebサイトで提供し、顧客の購買活動を促進させようというもの。問合せに迅速かつ正確に対応しようというこれまで見てきたカスタマーサービスをさらに前進させ、顧客が自分で簡単に情報を手に入れられるようにしよう、という考え方です。

このバイヤーイネーブルメントに取り組むためには、自社商品を調査・検討している顧客がどのような情報を知りたいと思い、どのように問合せてくるのか、また自社の回答に対して何に不満を抱いているかを知っておく必要があります。そのため、将来バイヤーイネーブルメントに着手するためにも、「隗より始めよ」ではありませんが、まずはカスタマーサービスを当たり前に機能するものにしておく必要があるのです。

自社のカスタマーサービス・レベルを確認してみよう

そしてもう一つ、今回のご紹介したレポートで参考になるものがあります。
それは、SuperOffice社が実施した、単純な問合せメールを送ってみるという調査方法です。このやり方は、Web版のミステリーショッピング(覆面調査)であり、顧客の立場で自社のサービス・レベルを体験してみるというもの。「自社のカスタマーサービスがどうなっているのか分からない」「顧客が体験していることを知りたい」という方は、自社のWebサイトで試してみるというのも1つの手です。ただ、その際にはSuperOffice社がやったようにシンプルな問合せを1通だけにすること。ミステリーショッパーへの対応に手間取って、本当の顧客の問合せへの対応が遅れてしまっては元も子もありませんからね。

参考:
Customer Service Benchmark Report」(SuperOffice, 2018)
New Study: 62% of Companies Ignore Customer Service Emails」(SuperOffice, 21 May, 2019)