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顧客の購買活動のWeb化にコロナ禍で加速したDXなど、現在のB2B営業の環境に対応し成功するためには、営業プロセスやWebなどのチャネルの見直しだけでなく、個人および組織としてのスキルアップが不可欠です。そのため、トライツでも最近は営業プロセスやツールを進化させるだけでなく、育成ロードマップの作成・運用や研修といった人材育成に取り組む機会も増えています。 

そのため、私たち自身も改めてちゃんと人材育成について勉強し、最新のトレンドを押さえておこうということで、米国で開催された世界最大級の人事・育成系のカンファレンスに参加してきました。 

今回は第一弾のレポートをお届けしたいと思います。 

人事・育成系の世界最大級のイベント『UNLEASH』とは

今回私が訪れたのは2023年4月26~27日にラスベガスで開催された、UNLEASH AMERICA 2023Unleash(アンリーシュ)という単語はもともと「犬などに付けるリードやハーネスなどの革紐を緩める/はずす」という意味があり、そこから派生して「人の才能やスキルを解放する/解き放つ」という意味でも使われます。 

このUNLEASHというイベントは10年以上の歴史があり、毎回2,000人以上の来場者が集まる世界最大級の人事・育成系のカンファレンス。以下のように広大な会場が大盛況でした。 

営業人材育成にも役立つ情報が盛りだくさん

カンファレンスの中では、人材育成や組織変革に関するセッションが数多くあり、2日間で聞くことができたのは19セッション。そのうちのいくつかをタイトルだけご紹介すると、以下のとおりです。

  • 人事部門向け生成AI活用ガイド 
    HR Guide to Adopting Generative AI Technologies
  • リスキリング革命 
    Reskilling Revolution
  • 育成イノベーションを引き起こせ。次に来るのは何か? 
    Unleashing Innovation in Learning : What’s Next?
  • 現場マネージャーを育成リーダーに変える3つの原則 
    3 Principles for Turning Line Managers into People Leaders
  • 顧客の要望を実現し事業成長につなげる組織風土の作り方 
    How to Build a Culture That Supports Customer Demand and Drive Business Growth 

AIにリスキリングなど日本でもホットなテーマが扱われていますし、「現場マネージャーを育成リーダーに変える」は営業のマネジメントだけでなくメンバーの育成が求められるようになっている、まさに今の営業マネージャーにピッタリの内容でした。また、最後の「顧客の要望を実現し」のように営業部門に直接関係するセッションもありました。 

ちなみに日本ではこのようなイベント、無料のものがほとんどですが、UNLEASHのチケット代は1,895ドル(2023年4月末の為替レートでは約26万円)です。日本人からするとかなり高額です。 

しかし、それに見合った内容になっていると感じました。著名な外部講師の話を沢山聞けるとか、会場や飲食のクオリティが高いのはもちろん、自分の仕事を進める上での「パートナー」に自然に出会える工夫が見事なのです。 

強引な客引きをしなくても展示ブースに人が集まる工夫

UNLEASHでは、協賛企業各社による展示スペースも大きな見せ物になっています。日本で東京ビッグサイトなどの展示会に行った人はご存じだと思いますが、営業やマーケティングに関する日本の展示会では各社の展示ブース前でイベントコンパニオンや揃いの服を着た社員による、積極的な客引きが行われていますね。しかし、下の写真のようにこのUNLEASHでは、そのような積極的な客引きをしている会社は一社もありませんし、イベントコンパニオンも一人もいません。 

どのブースもゆったりと構えていて、こちらがブースに入ってしばらく展示物を眺めているのを確認してから、おもむろに声を掛けてくる程度です。それなのに最終日の昼休憩のときなど、どのブースにもしっかり人が集まっていて賑わっていました。この集客力を生み出す要因の1つが、巧みな会場レイアウトとスケジュール設計です。 

展示スペースを会場のハブにし何度も通らせるレイアウト&プログラム設計

上の図がUNLEASH AMERICA 2023の会場レイアウトです。最初にご紹介した広い講演会場は右下の「MAIN STAGE TENT」で、その上に協賛企業の展示スペースが薄いグレーであらわされています。そして、図の一番上に星形が集まっているように見えるのは大テーブルで、ここが参加者同士が交流したり、昼食や軽食、ドリンクなどを楽しめるネットワーキングエリアとなっています。このレイアウトと一日のプログラムの組み立て方が相まって、強引な客引きをしなくても展示スペースに自然に人が集まるようになっているのです。 

そのプログラムは、朝9時から講演が右下のメインステージで始まります。メインステージの3講演が終わると休憩と交流タイム。右下のメインステージからほぼすべての参加者が一番上のネットワーキングエリアへと向かうので、必ず展示スペースの中を通ります。その後は会場の右端にある青色のセミナールームやメインステージなどで各所で様々なセッションが行われます。その後のランチタイムや15時頃の休憩/交流タイムをネットワーキングエリアで過ごし、一日の最後はまた右下のメインステージに全員が集まるというようになっています。 

このように、展示スペースがハブのようになっていて、すべての参加者が一日のうちに何度もそこを通る。そのため、徐々に展示物に気が向くようになり、ついふらっと立ち寄ってしまいますし、立ち寄らないまでも協賛企業の社名ロゴがつい頭に残ってしまうのです。実際、ブースには立ち寄らなかったのに今でも覚えている協賛企業名がいくつもあります。 

また、会場レイアウトの下の方にはミニゴルフやビアガーデン、そしてラスベガスらしいカジノテーブルがしつらえられていて、これも全部協賛企業が提供しているもの。きちっとした講演と交流のための場。その使い分けとレイアウトが絶妙だと感じました。ちなみに左下にあった楕円形は、ラスベガスの観光名所の大観覧車「ハイローラー」です。 

日本のイベントにありがちな「売り手」と「買い手」の関係から始まるのでなく、共通の大きなテーマの元で、できるだけ自然に「パートナー」に出会える工夫がなされているのに感心しました。 

参加者同士の交流を促進するセッション内のアイスブレーク

また、人事・育成の専門家が講演していますので、セッション運営も巧みです。一日の最初のセッションの冒頭や、休憩時間から1時間程度が過ぎた3本目のセッションの冒頭、一日を〆るセッションの最後などでアイスブレークが用意されています。 

簡単なものだと隣の人同士で、カンファレンス名の「UNLEASH(アンリーシュ)!」と大声を出しながら両手でハイタッチをしたり、両手のこぶし同士を合わせるナックルスをしたりします。また、ちょっと時間をかけるものだと「この1週間で楽しかったことを隣の人に10秒以内で話す」といったものも。 

こうやって近くの席の人と自然と話す場面が生まれるので、一緒に先ほどのネットワーキングエリアに向かったり、たまたまネットワーキングエリアで見かけたら話し始めたりするようになっているのです。 

ちなみに、ネットワーキングエリアでは人事・育成に関連する様々な仕事をされている方の話が聞けます。その後に私から「日本から来ていて」「B2B営業・マーケティングのコンサルをしていて」「そこで営業人材育成のリサーチに来ている」「会社の規模はたった3人」と話すと、大概の人にびっくりされてしまいました。。。 

つい足を運びたくなるネットワーキングエリア運営も交流を生み出す大事な要素

このようなセッション中のアイスブレーク以外の交流を促進するもう1つの要素が、居心地のよいネットワーキングエリア運営です。 

休憩時間には焼きたてのマフィンといろいろな種類のコーヒーや紅茶が提供されますし、ランチも豪華でちょっとしたホテルビュッフェのようです。 

このようについつい足を運びたくなるネットワーキングエリアを用意・運営する、主催者のホスピタリティも参加者同士の交流を生み出す大事な要素になっているのです。 

UNLEASH AMERICAの中身は5月24日のセミナーでご紹介します 

 著名な講師のユニークな講演、工夫された環境で、あっという間の2日間でしたが、本当に充実した時間を過ごすことができました。 

今回はUNLEASH AMERICAの運営の工夫などを中心にご紹介しましたが、肝心の中身は5月24日に東京国際フォーラムで開催するセミナー『営業幹部/マネージャなら知っておきたい!ChatGPT時代に活躍できる営業人材を育てるには』にてご紹介します。ぜひお越しいただき、皆さんの営業組織の人材育成のヒントをお持ち帰りください。