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22年末のChatGPTの発表以来、生成AIが日本でもブームになっています。先日はMicrosoft社がPowerPointやExcelなどのOffice製品に、Copilotという自社独自AIを今後搭載することを発表しました。事前に用意していたWordの文章をもとにスライドが作られたり、指示(プロンプト)を入力することでスライドの構成やデザインが自動で修正されたりする動画を見て、驚いた人も多いことでしょう。
そんな中、B2B営業向けのAIツール一覧が新たに発表されました。その数はなんと36個(2023年4月上旬現在)。どんなAIツールが世に出ていて、私たちの仕事をどのように助けてくれるのか、早速見ていきましょう。
B2B営業向けAIツール36選
今回ご紹介するのはB2B営業向け情報サイトSales Hackerに掲載された記事「The Generative AI Landscape for Sales (April 2023)」。実はこのサイト、B2B営業向けの各種デジタルツールを開発・販売しているOutreach社が運営しており、Outreach社のツールもしっかり紹介されています。
記事の中のリンクをクリックすると、Googleシートで作られたAIツールの一覧表を見ることができます。が、先ほどもお伝えした通りその数36個と膨大ですし、当然ですが英語表記なのでパッと見てわかりにくいので、用途ごとにどんなツールがあるかを以下に私なりにまとめてみました。
最新のAIができること12項目
- 見込客のLinkedInプロフィールから情報を収集し、コールドメールをカスタマイズして作成
→ Autobound, Copy.ai, Everylead.ai, Finalscout, Chatspot.ai(HubSpot), lavender, Lyne, Magical, Salesboom.ai, SmartWriter, Warmer.ai - 見込客のSNS情報から、見込客に喜ばれるプレゼントを選定
→ Giftpack - 見込客向けのボイスメールをカスタマイズして作成
→ Orum - 会議の予約、欠席者フォロー
→ Exceed.ai, Lindy.ai - チャットや会話情報を集約、整理
→ Botsheets - デモンストレーション動画をもとにハイライト動画を自動作成・送信
→ Demotime - 過去のコミュニケーション履歴から顧客向けのメールを自動作成
→ Outreach(Smart Email Assist), Regie.ai, Salesforce Einstein - 見込客の情報から課題と解決策、提案の目玉や訴求メリットの特定等のインサイト抽出
→ Craftly.ai, Salesforce Einstein - 複雑な資料の要約とFAQ作成
→ MapDeduce - 提案書やプレゼンテーションの自動作成
→ Beautiful.ai - 会議での発言の書き起こし、要約、タスク作成、CRMへの反映
→ Cogram, Lindy.ai, Magical, Outreach(KAIA) - 自撮り写真をアップロードするとプロが撮影したような写真に加工
→ HeadshotPro
このように見てみると、ChatGPTのような対話や文章の自動生成に限らず、B2B営業に取り組む中で発生する様々な作業を自動化・効率化してくれることがわかります。
「LinkedInなどのSNSから見込客の情報をリストアップして、個別にカスタマイズしたメール文面の作成」や、「顧客との打ち合わせをレコーディングして内容を書き起こし&要約して、CRMに自動で反映」といった王道の活用法だけに限らず、「デモンストレーション動画をかいつまんだハイライト動画の自動作成」や、「見込客のSNS情報をもとに喜ばれるプレゼントの自動選定」といった変わり種まであります。
指示を入力するだけで提案書の叩き台が作れる「Beautiful.ai」
私も早速いくつか試してみたのですが、その中で一番インパクトを受けた「提案書などのプレゼンテーション資料の自動作成」をしてくれるBeautiful.aiをここではご紹介したいと思います。
実はこのBeautiful.ai、以前は直感的な操作をするだけで自動でその名の通りビューティフルなデザインを整えてくれるのが売りのデジタルツールでした。そこに、ChatGPTを組み込んだ「スライド生成(Generate Presentation)」機能が搭載され、冒頭でご紹介したMicrosoftのCopilotのように自動でスライドを作れるようになったのです。
Beautiful.aiを使ってみよう
使い方はとても簡単。まず以下のように作りたいスライドの概要を文章で記述します。
言語を指定しないと全編英語のスライドが作られてしまうので、最後に「日本語で」と指定しています。文章を書いたら右下の「GENERATE PRESENTATION」をクリックします。すると、以下のようなデザイン(テーマ)を選ぶ画面に移ります。
今回は「Museum」というデザインを選びました。デザインを選んだら右下の「GENERATE PRESENTATION」をクリックします。すると、以下のようにそれらしいスライドが自動で作られました。
どんなスライドが作られているのか1つずつ見ていきましょう。まずはタイトルスライドから。
それらしいタイトルスライドができていますね。
2ページで目ではB2B営業にとって、営業プロセス標準化とプレイブック作成が重要であることを説明しています。ノートPCを持った人がホワイトボードに図解している画像が入っていますが、これはAIが自動で選んでくれたものです。
さらに続けて営業プロセス標準化に取り組むメリットを3つ挙げています。文章がぎこちなかったりしますが、それらしいデザインできれいにまとめてくれていますね。
ざっとご紹介してきましたが、そのまま顧客に出すわけにはいかないものの、基本的なストーリーを一応押さえた叩き台レベルのスライドをあっという間に作ることができます。もちろん、文章の修正やグラフの加工、使用する画像の変更などもできますし、作ったスライドをPowerPoint形式で保存することも可能です。
ここまでご紹介した機能は月額12ドルで利用可能。無料で雰囲気を試してみたい方は、Beautiful.aiのトップページで、1ページのスライドを自動生成する機能を1日3回まで体験できますので、ぜひ試してみてください。
誰でもある程度の提案書やメール文面を自動で作れてしまう世界で生き残るには
提案書の作成に商談記録のメモとCRMへの入力、見込客ごとにカスタマイズしたメール文面の作成など、B2B営業には膨大な事務作業がつきもの。今回ご紹介した各種AIツールは、そういった事務作業をサポートしてくれます。
しかし、これは見方を変えれば、その業界で未経験の新入社員でもある程度の提案書やメール文面を作れてしまうということでもあります。営業のプロフェッショナルとして生き残っていくためには、AIを使って資料の叩き台作りやCRMへの入力といった事務作業を効率化したうえで、その先の付加価値の部分で戦わなければならないのです。
顧客のことを深く理解したうえで、AIでは作れないようなストーリーを組み立て、AIからは返ってこないような成功のためのインサイト(洞察)を提供する。AI活用がB2B営業で当たり前になっていくこれからの世界では、単にAIを人並みに使いこなせるだけでなく、AIでは生み出せない価値を創出できるプロフェッショナル人材になる必要があるのです。
もはや対岸の火事ではない!いよいよ日本のB2B営業でもAI活用が当たり前に
ChatGPTなどのような生成AIでは、これまでのデジタルツールにつきものだった言語の壁がどんどんなくなってきており、今回ご紹介したBeautiful.aiのように日本語環境でも使えるものも増えつつあります。B2B営業のデジタル化/AI活用がとうとう日本の私たちのもとにも届いたのです。もう対岸の火事ではありません。まさに目の前で生成されている将来そのものなのです。
皆さんもぜひ、今回ご紹介した最新AIツールを使ってみて、その実力を体験してください。そして日々の業務にどのように活用するのか、AIを活用できる人材をどうやって育成したらいいのかを考えましょう。
トライツコンサルティングでは2023年5月24日に東京国際フォーラムにて、「営業幹部/マネージャなら知っておきたい!ChatGPT時代に活躍できる営業人材を育てるには」というタイトルのセミナーを開催します。ChatGPTなどの生成AIに興味をお持ちの方、AI時代の営業人材育成についてお考えの方は、ぜひお越しください。
参考:「The Generative AI Landscape for Sales (April 2023)」(Colin Campbell, Sales Hacker, March 31, 2023)