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公共事業やシステム系の案件で必ず出てくる言葉にRFPというものがあります。これはRequest For Proposalの略語で、日本語にすると提案依頼書。課題の背景や目的、期間、解決策の条件や事業/打合せの進め方、提案書の評価基準などが記載されていて、これに沿って各企業が提案を行います。

このRFPですが、以前は公共事業やシステム系の案件でしか利用されていませんでした。しかし、発注先の選定プロセスや選定理由が明確になって記録に残しやすくなるということから、建設や機械などの高単価の案件を中心に広く使われるようになっています。RFPという名前は使われていないものの、実質的にはRFPと同様の説明を受けて提案対応をしたことがある方も多いのではないでしょうか。

このように活用が少しずつ広がっているRFPですが、提案をしたことがある方の中には「面倒なもの」というイメージをお持ちの方がきっと多いはず。短い期間で書類を用意しないといけませんし、その量もたいていの場合は膨大です。また、それぞれの発注者・案件の個別事情に合わせて提案を組み立てる必要もありますので、一言でいうと「コスパが悪い」活動になりがちです。

今回のトライツブログでは、このRFP対応を効率的に進めるコツをご紹介します。面倒で厄介なRFP対応をもっと楽にするためにはどうしたらいいのか。公共向けやシステム関連の営業をされている方だけでなく、提案活動全般の効率化の参考になる内容ですので、ぜひお読みください。

面倒なRFPをビジネスチャンスに変えるには

今回ご紹介するのは、Sales HackerというB2B営業向けのWebサイトに寄稿された記事「6 Ways to Transform RFPs from Obstacles to Opportunities in 2023」(2023年に面倒なRFPをビジネスチャンスに変える6つの方法)。

この記事を書いたザック・ヘムラジ氏がCEOをしているLoopio社は、RFP対応用の営業システム(ソフト)を開発・販売している企業。そんなニッチな商品でやっていけるの?と思ってしまいますが、Loopio社の主なマーケットであるカナダ・米国では公共事業以外でもRFPが広く活用されているそうで、導入済み企業は1,400社以上。ちゃんと成功したスタートアップ企業なのです。

RFP対応を効率化する6つのコツ

RFP対応の知見を蓄えているヘムラジ氏が考える、RFP対応を効率的に進めるコツとはどういうものなのか。早速、記事の要点を抜粋して見ていきましょう。

1. RFP対応専任チーム/メンバーを指名する
調査によると、トップパフォーマー企業には責任をもって一次受付と案件フォローを行う、専任チーム/メンバーが存在します。専任チーム/メンバーがいることで、営業チームがより多くのRFPにスピーディーに対応できるようになります。

2. 受け身で公示を待つのではなく、先回りして準備する
RFPを受け取ってから動き始めるのでは遅すぎます。今後のRFP/案件公示の徴候を把握したらメンバーに事前に伝えて、余裕を持ったスケジュールで入札に勝つために必要な要素をしっかり考えられるようにしましょう。

3. 対応する価値のあるRFPを選ぶ
平均的なRFPには115個の質問項目があり、それらにすべて回答するには平均して23時間もの時間がかかります。そのため、入札するかどうかを判断する基準を明確にし、効率的な意思決定プロセスを整備しておくことで、事業にとって意味のある案件に集中して対応しなければなりません。

4. 質問への対応を自動化する
RFPシステムは、過去の作成資料の内容を学習してRFPの質問への回答を自動で入力するため、ドラフトを数分以内で作成できます。RFPシステムを利用している組織は、利用していない組織と比べて、年間平均43件多くRFPを提出しています。

5. 営業コンテンツのライブラリを作成しよう
営業チームが簡単にアクセスできる、一元化された営業コンテンツのライブラリを持ちましょう。専用のRFPシステムを利用するのが最も簡単ですが、MicrosoftのSharePointやGoogleドライブも一時的なツールとして有効です。

6. 提案作成に協力してくれる専門家チームを構築しよう
トップパフォーマー企業では、1件のRFP作成に対して平均10人の専門家チームが協力しています。協力してくれるメンバーが増えることで、提案品質と受注可能性の向上が期待できます。

4番目の「自動化」と5番目の「コンテンツライブラリ」で、Loopio社のシステムの宣伝がしっかり入っていますが、この6項目が一貫して主張していることを要約すると、「属人的に対応するのではなく、しくみ/体制を構築してシステマチックに対応しよう」ということです。

営業担当者が片手間で対応するのではなく、専任チームが責任をもって対応する。
場当たり的に判断するのではなく、入札の判断基準や意思決定プロセスを明確化する。
手作業で属人的に対応するのではなく、システムを活用して効率化する。
一人で抱え込むのではなく、専門家チームに協力してもらって提案を作成する。
確かにこのようなことができたら、コスパが悪く締め切り間際でバタバタになりがちなRFP対応が、もっとスムーズで効率的なものになりますよね。

事業拡大や効率化を進める際のヒントとして考えよう

私も公共系の営業組織の事業拡大をお手伝いしているのですが、その組織でもやはり課題になっているのは、先ほどのリストに挙げられている「専任窓口をどこに置くか」「入札の判断基準をどうするか」「誰がどのプロセス/会議体で判断するか」「ノウハウや資料をどのように蓄積・共有するか」「専門家チームをどこまで広げるべきか」「専門家チームにはどこまで支援してもらうのか」といったこと。最初のころは数名の特命メンバーで実施していたので問題にならなかったのですが、全国組織として拡大しようとなると、どうしてもしくみ化しないといけなくなったのです。

そのため、今回ご紹介したリストは、公共案件や入札タイプの売上を大きく伸ばしたい、全国展開したいとお考えの組織にはピッタリの内容だと思います。また、もうすでに全国体制になっているものの残業時間が多いなど、効率化が必要な組織にも参考にしていただけるはずです。

低コスパ/ムダなものだとあきらめずに、システマチックに効率化することをRFP対応でも目指そう

今回私がこの記事を読んだときの第一印象は、組織体制や業務プロセス、システムなどを整備して「とにかくシステマチックにして効率化しよう」という強い執念でした。

それぞれの自治体や企業への個別対応が必要ですし、経験値や人間関係などがものを言うのでどうしても属人化してしまいがちな公共/入札案件。「このビジネスは昔から今までずっとこういうもの」「ムダが結果的に受注につながるんだから仕方がない」と、効率化をあきらめている組織をよく見かけます。

しかし、そうではなく「とにかくシステマチックにして効率化しよう」という、いわば欧米的な仕事観を公共/入札案件にも導入する。この考え方の転換こそが、RFP対応を効率化する第一歩なのではないでしょうか。

参考:「6 Ways to Transform RFPs from Obstacles to Opportunities in 2023」(Zak Hemraj, CEO & Co-Founder Loopio Inc., Sales Hacker, January 1, 2023)