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2022年がスタートしました。
この年末年始も新聞や雑誌などの各媒体で、新しい1年がどのような年になるのか、何がトレンドとなるかについての予測が紹介されていました。各媒体で共通して取り上げていたテーマは、半導体などの供給不足の解消時期、食品等の値上の広がり、脱炭素および自動車のEVシフト、リモートとオフィス出社を組み合わせたハイブリッドワークの定着、などでした。この1年も、コロナの動向を見つつ、SDGsやデジタル化、そして経済の正常化などの様々な課題にも併せて取り組まなければならない、難しい1年になりそうです。
私たちが携わっているB2B営業・マーケティングの分野においても、海外の各企業が2022年のトレンドを予測しています。そこで、今回のトライツブログでは各企業の記事を見比べながら、B2B営業・マーケティングの2022年のトレンド予測を俯瞰的にご紹介します。新しい1年で何が課題となるのか、そして私たちはそれに対してどう対応していく必要があるのか、一緒に考えていきましょう。
予測①:CRMツールで有名なZendesk社が挙げる5つのトレンド
最初にご紹介するのは、中堅~中小企業で多く導入されているCRMツールで有名なZendesk社のブログ記事「5 sales trends to watch for 2022」です。この中で紹介されている5つのトレンドは以下の通りです。
1. 顧客はこれまで以上に情報武装する
2. カスタマーエクスペリエンス(CX)へのニーズが急上昇
3. 営業担当者の幸せに目を向けよう
4. データ分析を駆使して収益を高めよう
5. 営業のデジタル化とテクノロジー活用に適応しよう
2番目の「カスタマーエクスペリエンス(CX)」が意味しているのは、個々の顧客に対するパーソナライズ(個別)対応と、SNSやチャットボットなどによるカジュアルな雰囲気でのコミュニケーションです。確かに、ここ1~2年の間で、FacebookのMessengerなどを通じて、既存や新規の顧客とやり取りする機会が増えたように思います。対面の機会が減っている分、親しみやすいコミュニケーションを顧客が求めているということなのでしょう。
また、3番目の「営業担当者の幸せに目を向けよう」についてですが、特に歩合の割合が大きく成果を出すために一生懸命に頑張っている営業担当者の「燃え尽き症候群」が欧米で問題となっています。また、「大転職時代(Great Resignation)」と呼ばれるより良い職場環境を目指した転職ラッシュが起きていることもあり、メンバーの心のケアがこれからも重要になってくるというのです。
ただ、この2つ以外は、Web活用による顧客の情報武装や、データ分析に営業のデジタル化など、見慣れた内容が並んでいるように思われます。
予測②:ECツール「GOb2b」を開発・提供する企業が挙げる5つのトレンド
次にご紹介するのは、B2B向けのECツール「GOb2b」を開発・提供しているAspidistra Software社のブログ記事「Top 5 B2B Sales Trends for 2022」。こちらでも、2022年のトレンドを5つ予測しています。
1. 購買のオムニチャネル化が継続
2. 対面中心の営業からハイブリッド営業へ
3. デジタルセルフサービスの躍進
4. Web会議は今後も必要不可欠
5. リアルなオフィス/拠点の縮小
いくつか耳慣れない言葉がありますので。簡単にご説明します。
1番目の「購買のオムニチャネル化」とは、顧客が対面やWeb会議、Webサイトなどの複数のチャネルを好きなように使って購買活動を進めていくということ。そのために、営業担当者は対面だけでなく、Web会議でも顧客と信頼関係を構築できる「ハイブリッド営業」(2番目)にならなければならない、ということです。
また、3番目の「デジタルセルフサービス」とは、顧客がWebサイトやアプリなどを通じて営業担当者とやり取りすることなく、自分で商品・サービスを試用したり見積や支払条件を確認したりできるもの。私たちがAmazonや楽天で快適にB2Cの買い物ができるのと同じような体験をB2Bでも提供しようというもので、コロナ禍がスタートしてから一気に普及しているコンセプトです。
この記事で紹介されているトレンドも、用語こそ見慣れないものがありつつも、考え方自体は皆さんもよく知っているものが多かったのではないでしょうか。
予測③:営業支援デジタルツールの雄 Unbound B2B社が挙げる11のトレンド
そして最後にご紹介する記事は、新規見込客の発掘やアポイント取得など、営業活動を支援するデジタルツールを提供しているUnbound B2B社の「How Will B2B Sales Develop & Accelerate in 2022」。この記事では2022年のB2B営業のトレンドを11個も挙げており、総集編と言える内容になっています。続けて見ていきましょう。
1. オンラインでの営業活動は今後も必要不可欠なものに
2. 営業プロセスのオムニチャネル化に取り組もう
3. セルフサービス式の購買環境を構築しよう
4. 顧客の環境・ニーズを理解して対応をパーソナライズしよう
5. アカウントベースド・マーケティングに取り組もう
6. ソーシャルプルーフを有効活用しよう
7. ハイブリッド化を前提に営業組織を見直そう
8. 顧客の購買活動の変化に注視しよう
9. 顧客データのセキュリティを確保しよう
10. 「顧客中心営業」に合わせて営業プロセスを見直そう
11. 顧客が購買活動で必要とする情報を充実させよう
「オムニチャネル」や「セルフサービス」「パーソナライズ」「ハイブリッド化」など、これまでに出てきたキーワードが数多く出てきています。ただ、ここでも見慣れない言葉がいくつか出てきていますので、簡単に解説します。
5番目の「アカウントベースド・マーケティング」とは、見込客一人ひとりに対して個別に施策を打ったりマネジメントするのではなく、その人が属している企業や事業部などの意思決定単位ごとにまとめて見るようし、その中での上位層やキーマンに対して集中的に施策を打つようにしよう、というマーケティングの考え方です。
6番目の「ソーシャルプルーフ」を日本語に直訳すると社会的証明となりますが、これはSNSでのクチコミやレビューサイトなど顧客が参考にする情報媒体のこと。これらのサイトに顧客の声をシェアしたり、サイト内の情報を収集して自社と競合の評判を比較・分析するようなサービスがコロナ以前からありましたが、コロナ以降改めて注目されるようになっています。
10番目の「顧客中心営業」もコロナ以降に多くのメディアで使われるようになったコンセプト。これは、Webサイトを自分で見てセルフサービスを活用するなど、顧客が自ら主体的に購買活動を進めるようになってきていることを指しています。このような購買活動の変化に注視しつつ(8番目)、顧客が必要とする情報をWebサイト等でどんどん提供しよう(11番目)、というのもここ数年のB2B営業の大きなトレンドとなっています。
2022年は新奇なトレンドではなく、B2B営業の本質的なテーマに腰を据えて取り組む1年に
ここまで3つの「2022年のトレンド予測」を見てきましたが、総じて言えるのは「トレンドというわりに新しいコンセプトやテクノロジーがない」ということです。例年ですと、各社がこぞって新しいコンセプトを打ち出したり、話題になりかけの最新テクノロジーを一足先に紹介したりするものですが、今回各社が挙げているトレンドは見たことがあるものばかりで異例の状態だと言えるでしょう。
そして、もう1つ私が気になったのは、コロナが始まってすぐの頃に話題になったテクノロジーや手法が、いつの間にか姿を消しているということです。例えば、数分程度の短い動画を撮影してメール等で送信する「ビデオ・セリング」や、仮想現実(VR)の中に顧客を招待して製品デモを見せたりプレゼンテーションを行う「デジタルセールスルーム」などは、影も形もありません。その代わりに今残っているコンセプトは、コロナになってから大事だとずっと言われ続けてきた、いわば勝ち残ってきた精鋭ばかり。現在のB2B営業の本質的なテーマが浮き彫りになっているリストなのです。
夏目漱石が学習院大学の学生に向けて話した講演の中に、「浮華(ふか)を去って摯実(しじつ)に就く」という言葉があります。これは、茎や根がなく水面に浮かぶ花のような、新奇だが中身のないものを追いかけるのではなく、物事の根幹である大事なものに実直に取り組まなくてはならない、ということを意味したものです。
今回ご紹介したB2B営業の2022年のトレンドに新奇なものがなく、購買活動のオムニチャネル化とそれに合わせた営業のハイブリッド化、顧客中心営業に合わせたデジタルセルフサービスの拡充など、現在のB2B営業の課題として本質的なものばかりが残っているのは、「浮華」ではなく「摯実」に腰を据えて取り組まなくてはならないというメッセージなのではないかと私は思います。
今回ご紹介したトレンドのリスト、特に最後にご紹介した11の項目のうち、いくつに皆さんの組織では取り組んでいるでしょうか。そして、4月以降の新年度の計画ではいくつの項目が網羅されているでしょうか。新年を迎え、営業の新しい姿を設計・計画する際に、今回ご紹介した本質的な課題のリストをぜひ参考にしていただければと思います。
参考:
「5 sales trends to watch for 2022」(Donny Kelwig, Zendesk Inc., December 21, 2021)
「Top 5 B2B Sales Trends for 2022」(Aspidistra Software Ltd., December 23, 2021)
「How Will B2B Sales Develop & Accelerate in 2022」(Gaurav Roy, Unbound B2B, January 7, 2022)