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デジタルスキルを活用して新ビジネスの創造や既存ビジネスの改革を実現する「DX人材」の採用・育成が、一大トレンドとなっています。リクナビやリクルートエージェントを運営しているリクルートキャリア社によると、2020年4~6月期のDX関連の新規求人は前年同期比で約4倍とのこと。また、最近ではNTTや金融大手などの企業を皮切りに、DX人材育成研修の導入がニュースで取り上げられるようにもなりました。

DX人材をはじめとする育成の波はB2B営業にも及んでいるようで、昨年の緊急事態宣言発出の前後から、トライツにも営業人材育成のご相談を数多くいただいており、その数は昨年末からさらに増えてきつつあるように感じています。このような状況を受けて、前回のトライツブログ(「データドリブンで人材育成を考える『営業スキルモデル』とは」)では、体系的な営業人材の育成を可能にする「営業育成ロードマップ」とその分析手法「営業スキルモデル」をご紹介しました。

今回は、「営業育成ロードマップ」の分析結果から研修などの育成施策の企画・設計にどのようにつなげるのか、ポイントとなる考え方をご紹介します。研修などの育成施策づくりのヒントが欲しい方、データに基づいて研修を企画・設計してみたい方はぜひお読みください。

「営業育成ロードマップ」とは

データに基づいた育成施策の企画・設計方法を考える前に、「営業育成ロードマップ」について簡単におさらいをしましょう。これは、今後の営業人材に必要なスキルとそのレベルを体系的に定義・整理したものです。下の例をご覧ください。

このロードマップの構造は、①から始まる縦軸のスキル項目ごとに、横軸のA~Eでレベルを定義する、というもの。上の表にはサンプルとして、顧客の購買プロセスを理解してそれを後押しする「顧客の購買支援力」のレベルを定義しています。

この営業育成ロードマップの基本的な使い方は、半年~1年に1回の頻度で営業担当者のスキルを定点評価し、それを基にマネージャーが育成面接を行うというものです。そして、各担当者の評価データを分析して、どのスキルが課題になっていてどのような研修設計が有効なのかを明らかにすることができます。そのポイントをご紹介しましょう。

育成施策の企画・設計ポイント①ターゲットとするスキルの選び方

1つ目のポイントは、ターゲットとなるスキルを特定するための観点の置き方です。

ターゲットとするスキルを特定するために、トライツは以下の3つの観点で営業育成ロードマップのデータをチェックしています。
1.事業の方向性・優先順位に則した対象者・育成のゴールは何か
2.対象者に興味を持って参加してもらえるスキルは何か
3.期待する結果数字(売上など)との関連性が高い(投資対効果が認められる)スキルは何か
早速、それぞれについて見ていきましょう

「1.事業の方向性・優先順位に則した対象者・育成のゴールは何か」
研修などの育成施策を考えるに当たり、多くのメンバーを対象に底上げするボトムアップ型でいくのか、それとも次世代のリーダーなど特定のメンバーを対象とする選抜型でいくのか、また求める育成のゴールは売上や商談数などの短期的な業績指標なのか、それともじっくりと基本的なスキル開発を目指すのか、などの事業としての前提となる方向性・優先順位を確認する必要があります。

「2.対象者に興味を持って参加してもらえるスキルは何か」
メンバーが「学びたい」という気持ちを持っているということは、ターゲットスキルを選定するために重要な要素です。そのための方法はいくつかあります。例えば、現在のスキルレベルに加え「1年後に目指す目標」を回答してもらい、現在と目標との間の乖離が大きいスキルをターゲットとするというもの。また、メンバーに「今後重点的に強化したいスキル」にチェックを付けてもらい、チェックが多く付けられたスキルをターゲットにするという方法もあります。

「3.期待する結果数字(売上など)との関連性が高い(投資対効果が認められる)スキルは何か」
そして営業にとって「このスキルを強化することが稼ぎにつながる」というのは最も関心の高いものです。売上などの期待する結果数字と関連性の高いスキルを調べるのに使える分析手法は「回帰分析」があります。この手法を使えば、複数のスキル項目の中から育成のゴールとの関連性が高いスキルを絞り込むことができますし、その関連性の強さや関連性があるのが確かなのかを見比べることができます。

この回帰分析は、Excelの標準アドイン「分析ツール」の中に機能として含まれており、SPSSやRなどの分析専門ツールよりも手軽に使うことができます。この回帰分析の具体的な使い方は、以前のトライツブログ(「第三回「営業マネージャー/営業企画のための統計活用入門」営業分析に役立つ『相関・回帰』の使い方」)を参考にしてみてください。

このようにして3つの観点でチェックすることで、事業の方向性に適した対象者に向けて、その対象者に興味を持って参加してもらえ、かつ育成のゴールとの関連性が高く投資対効果を見込めるスキルを育成のターゲットとして選ぶことが可能になるのです。

育成施策の企画・設計ポイント②具体的な進め方の設計の仕方

2つ目のポイントは、ターゲットとなるスキルを選定した後に必要となる、研修の具体的な進め方を設計するためのデータの活用法です。

「商品知識をしっかり解説する」「事例をストーリー仕立てで紹介する」「実戦形式でロールプレイをメインに実施する」など、研修の進め方には様々なやり方があります。どのような研修の進め方にするかを考えるため、トライツでは営業育成ロードマップに入力してもらう際に、「スキルアップのために希望する人材育成施策」や「育成に関する要望」などのフリーテキスト欄を用意しておき、そこでメンバーからの生の声を集めるようにしています。

この際に使えるのがテキストマイニングのツールです。一般的なテキストマイニング・ツールにはデータ内の任意の単語に対して、「一緒に使われることが多い単語(共起語)は何か」や、「実際のローデータの中で、単語の前後の文章がどのようになっているのか」についての情報を一覧で見られる機能がついています。そのため、「研修」や「学習」といった用語の共起語や前後の文章をチェックすると、研修全般の進め方についてのヒントが得られますし、ターゲットとなるスキルが例えば「顧客課題把握力」の場合は、「課題」「ヒアリング」などのスキルと関連する用語の共起語や前後の文章をチェックすると、さらに詳しくそのスキルの背景や研修に期待することを知ることができます。

このように、テキストマイニングツールを使えば、フリーテキストで入力された「要望」欄の中から、研修全般の進め方や、個別のターゲットスキル強化のためのポイントを簡単に知ることができるのです。テキストマイニングの具体的な使い方についても、以前のトライツブログ(「SFAデータ分析の壁「テキストマイニング」をやってみよう!」)で詳しくご紹介していますので、興味のある方はぜひ参考にしてみてください。

データドリブンで営業研修を企画・設計しよう

ここまで、営業育成ロードマップの分析結果から研修等の育成施策の企画・設計につなげるための考え方のポイントを2つご紹介しました。1つ目は、「事業の方向性」「対象者の課題認識」「投資対効果」の3つの観点からターゲットとするスキルを選ぶこと。そして2つ目は、メンバーからの生の声を収集・分析して研修の進め方のヒントにすることでした。

これらは、一見当たり前の話のように見えますが、実際にここまでデータに基づいて研修の企画・設計をすることはあまりないようで、営業育成ロードマップの分析結果から具体的な研修プランを企画・設計して紹介すると、「こんなことができるんですね」と感心されることが多々あります。

DXと言われ始めるずっと以前から、データに基づいて業務を進める「データドリブン」という言葉が使われていました。今回ご紹介したのは、まさにそのデータドリブンな営業研修の企画・設計そのもの。営業向けに説得力や納得性の高い研修を企画したいという方は、今回ご紹介した2つのポイントを参考にしていただければと思います。

トライツコンサルティングでは目指す営業人材育成のための「営業育成ロードマップ」の作成と運用、そしてその分析結果から次の育成施策の企画・設計までを一貫してサポートしています。体系的な営業人材の育成を実現したい方、データに基づいて受講者の満足度と投資対効果の高い研修を考えたい方は、ぜひご相談ください。