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7月17日に閣議決定された2020年度「骨太の方針」では、「新たな日常」を実現するための、「デジタルニューディール」と称するデジタル化への集中的な投資が主軸の1つとなっています。昨年度の方針では「Society 5.0」を掲げ、デジタル化を強く推進する領域としてフィンテックやスマートシティ・農林水産業などを定めていましたが、今年度はさまざまな領域で「デジタル化」「DX」という文言が出てきており、デジタル化/DXがいよいよ避けては通れないものになっています。
そのデジタル化/DXの波ははるか以前にB2B営業領域にも到達しており、今ではSFAやMAなどのデジタルツールを導入し、使いこなしている企業が当たり前になりつつあります。また、緊急事態宣言等への対応としてWeb会議ツールも多くの企業に広まりました。
しかし、その一方で細々とした業務が非効率なままになっている様子も依然として見かけます。タスク管理表に審査や決裁のための書類、研修実施後のアンケートなど様々な書類が個別のExcelファイルで作成されており、それらが部署ごとに独自の変化を遂げているためにデータを集約・比較・分析できない状態になっていたりしますし、表計算ソフトとしての限界や作り手の限界のために非効率な部分が残っていたりします。
そこで今回は、営業現場に散在しているExcelファイルを効率化するために、トライツが日々のコンサルティングで行っていることについてご紹介したいと思います。
営業現場に散在する無数の非効率なExcelファイル
冒頭で述べたように、B2Bの営業現場では八百万の神様と同じくらいと言っても良いほど無数のExcelファイルが存在します。タスク管理のExcel、見積請求のExcel、各種申請のExcel、顧客データのExcel。しかもこれらのExcelが部署ごとや商品分類ごとなどに独自に変異しているので、パッと見は同じようなのにデータを1つにまとめられなかったり、他の業務システムであれば自動的に処理できるはずのものを手作業で対応しなければいけなかったりしています。
当然、これらのExcelは必要に応じて作られたものですし、業務を進めるために役に立ってはいますが、せっかくデータがあるのにそれを活用・分析して業務を改善する、処理を自動化して効率化する、といったことができずにいます。2018年に経済産業省がDXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して(中略)、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しているのですが、これによると業務には使えるものの改善には至っていない現在のExcel活用は、DX未満のデジタル化に過ぎないのです。
ExcelファイルがDX未満のデジタル化止まりになりがちな理由は、Excelの持つ特徴に起因します。SFAや社内の業務システムをExcelと比較すると、Excelは誰にでも理解しやすいツールです。一般的な業務システムは、データを人が登録/アップロードする「入力」、そのデータを保存する「データ管理」、データを組み合わせたり計算したりする「処理」、その結果を表示する「出力」という4つの機能で成り立っていて、それらがきちんとつながるように設計されています。それに対し、Excelは縦横に広がるセルが自由に使えて「入力」「データ管理」「処理」「出力」を1つのファイルで完結できるようになっていて、簡単な処理であればプログラミングは不要で数式などで対応可能です。また、一度作ったものを加工するのも簡単で、項目に過不足があれば行や列を削除・追加すればよく、誰もが好きなようにアレンジできます。
このように他の業務システムと異なり、面倒なことを一切考えなくてもよいExcelは、営業現場で誰もが使えるITツールとしてのポジションをキープしているように思います。
トライツによるExcelファイルの効率化事例
そのようにして作られたExcelファイルのせいで業務効率が低いままになっているという状態に対し、トライツは、Excelの限界を超えてより自動的・効率的に処理ができるように、そして入力されたデータを業務分析などの二次的な用途でも活用できるように、工夫を施して営業DXのお手伝いをしています。
事例1:煩雑なタスク管理をExcelVBAに変えて自動化&標準化
Before)A社では、顧客から受注した商品の生産から納品までの業務のタスク管理を、営業担当者各人がExcelの表を使って行っていました。ただ商品の種類が多岐にわたっていて、かつ顧客の要望に合わせて個別にカスタマイズすることも多いため、各人がタスク項目を慎重に洗い出していたものの、タスクの抜け漏れや重複、ボトルネックの発生による待ち時間の発生など、経験が少ない担当者ほどミスが多く非効率な運用になっていました。
After)実際の商品に合わせて個別にチューニングすることを前提に、タスクの標準パターンを何種類かにまとめ、「受注日」と「納品日」と「タスクパターン」を選んだら自動で基本的なタスクスケジュールが作成されるようなExcel VBAを開発しました。タスクの抜け漏れが大幅に減少し、また無駄な待ち時間が削減されることで、トラブルの発生率を抑えつつ納品までの期間短縮を実現できました。
事例2:スキル評価と面談の一連の流れをMicrosoft Power Apps化して使いやすく
Before)B社では、営業担当者に必要なスキルを明確化し、それをマネージャーが指導・育成できるようにするプロジェクトを進めていました。プロジェクト開始当初は、B社ですでに使われているExcelの目標管理シートを流用する予定でしたが、大勢いる営業担当者一人ひとりが入力しているかどうかを確認するにはファイルを1つずつ開いて確認せざるを得なかったり、運用側が意図しない入力をされることがあるなど、そのままでは使いにくい状態でした。
After)担当者がスキルを自己評価するための画面、マネージャーが一次評価を入力する画面、担当者とマネージャーとの面談結果を受けて確定評価を入力する画面、そしてそれらの進捗を一元管理する画面をMicosoftのPower Appsを使って作成し、各人が入力したデータを連携しながらスムーズに自己評価~一次評価~スキル面談~確定評価の業務が流れるようにしました。各担当者の入力状況を確認するのにかかっていた手間が省けるとともに、誤入力によるやり直し等の手間もなくなりました。
事例3:商談管理表と業務報告をまとめてKintoneで簡易SFAを構築
Before)C社では、新規事業を立ち上げたばかりで営業担当者は数名のみでした。本格的なSFAを導入・運用するには規模が小さ過ぎたため、商談管理用と業務報告用にそれぞれExcelシートを作って使っていましたが、使い勝手が悪く現場からは不満の声が出ていました。
After)Cybozu社のKintoneを使って簡易的なSFAを構築し、ユーザー管理や機能の追加などの運用業務をトライツが全面的にサポートしています。ただ安価に構築しただけでなく、同じ商談であれば入力内容を自動的に前回の商談から引っ張ってきて表示して、変更箇所だけを入力すれば済むようになっていたり、商談結果を入力する画面から新規顧客や新規商談の登録ができるようになっていたりと、通常のSFA以上に使い勝手の良いものにしています。現在そのチームの人数は10倍近くに増えていますが、原価計算や工数評価などの機能を追加してより一層積極的に利用されています。
Excelをアプリケーションに進化させることが営業現場のDXにつながる
ご紹介した3つの事例は、いずれも「脱Excel地獄」のアプローチとしては一般的なものです。それぞれの企業の環境などの条件を考慮し、「既存のExcelをアプリケーションに進化」させたものです。表計算ワークシート上で単純な入出力や計算だけができていたものを、より手間なくミスなく業務を進められるように自動化し、さらに後からデータを分析・活用できるように一か所に蓄積したりもしています。このように、今あるExcelを単にブラッシュアップするのではなく、一手間かけてアプリケーションへと進化させることには様々な意味・価値があります。
第一の価値は、ルールを徹底し、それに伴う業務データを蓄積できることです。Excelはその最大の特徴である「誰もがすぐに変更できる」ことによって、現場でどんどん改変されていきます。それによって、少しずつレイアウトが崩れたり、取り扱うデータの中身が変わったりしてしまうので、「エントロピー増大の法則」よろしく徐々に部分最適な情報が増えていってしまいます。それに対してアプリケーション化すると、現場での改変はしにくくなり、業務ルールが徹底できることに加え、データの蓄積ができるので、多目的な活用が可能になります。
そして第二の価値は、取組の目新しさを実感してもらいやすいことです。今までとは趣向を変えて新しいことに取り組もうとしているときに、その目新しさ・斬新さを伝える効果的な手法として、普段使いなれているものを刷新する、ということがあります。今まで見たことがないようなインターフェースや、自動化などの機能が新しく搭載されていることで、その取組に対する期待値を大きく上げることができます。
これらの価値を考えると、現場の「こんなデータを収集/活用したい」というニーズをまずカタチにして、とりあえずやってみるという役割をExcelが担い、ある程度業務が固まってきた段階でアプリケーションに進化させて、いつまでもExcelのまま運用を続けない、というのがB2B営業に限らず業務のDXをする上で有効な進め方だと私は思います。
Excelのアプリケーション化のポイントは「さっさとプロトタイプを作る」
最後に、既存のExcelをアプリケーションに進化させる際にトライツが大事にしていることは、よくあるシステム開発プロジェクトのように「仕様」や「画面イメージ図」などの書類作りに時間をかけずに、さっさとプロトタイプを作ってしまう、ということです。存在していないものについてどれだけくどくどと説明しても、100%正しく理解してもらえることは残念ながらありません。
その段階で議論を重ねるのではなく、まず目に見えるものを作って実際に操作してもらってから感想や意見をしっかり聞く。このようにプロトタイピングを優先して進めることで、営業現場に散在しているExcelの効率化を加速することができるように思います。
そして、「このExcelをこのやり方でアプリ化させよう」というアイデアは現場に行かないとわかりません。現場のミーティングや日常的な業務のやり取りを見たり、聞いたりしていく中で見えてくるので、営業現場のDX化においてはそのような役割の存在がとても重要だと考えています。
トライツコンサルティングは、テレワーク時代の営業改革の一環としての業務のデジタル化/効率化を支援しています。「営業で使っているExcelをアプリケーション化したい」「デジタルツールを使って業務の生産性を高めたい」という方はぜひご相談ください。