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緊急事態宣言が出されてから1か月余りが経ちました。多くの企業でリモートワークが普通のこととなっており、この記事をお読みの方もおそらく、ZoomやSkypeなどのWeb会議ツールを使って社内会議や既存顧客との打合せを行っていることでしょう。
そのような中、Web会議を使った新規顧客との商談について、相談を受けることが増えています。コロナ禍で企業の業績が悪化し財布の紐が固くなっているということとは別に、対面でなくWeb会議を通じた新規顧客とのコミュニケーションについて悩んでいると言うのです。
そこで、Web会議を使った新規顧客とのコミュニケーションについて、実際にトライツがこの1か月余りで経験したことも踏まえて、考えてみたいと思います。オンラインでの営業コミュニケーションでお悩みの方は、ぜひお読みください。
Web会議を使った営業コミュニケーションで起こる3つの困りごと
顧客と日時を調整し、ZoomやSkypeを設定して相手を招待し、当日決められた時間にそれぞれが参加する。文字に表すと、社内グループウェアを使ってスケジュールや会議室を調整する対面型の商談と大差ないように見えますが、実際にWebでの商談を経験した方は、対面とはずいぶんと勝手が違うことに驚いたのではないでしょうか。
私が実際にWebで商談をやってみて困ったことを整理すると、以下の3つになりました。
1つ目は、自宅で作業している人同士が初めて話をすることによる「ちょっとした気恥ずかしさ」です。私服姿や背景に映り込む自宅の風景に、かすかに聞こえる生活音など、社内のメンバーや気心の知れた既存顧客とならあまり気にならないものを初対面の相手と共有するという、ちょっとした気恥ずかしさをお互いに感じながら商談がスタートします。
2つ目は「集中することの難しさ」です。商談をしている最中であっても、Webのために開いているまさにその画面に社内外からのチャットやメールが届くので、どうしても集中が削がれてしまいます。また、対面での商談では同じ資料を一緒に眺めながら話ができますが、非対面のWebですと相手が同じ資料の同じ個所を見てくれているかどうかは確かめようがありません。先のページを読み進めてしまっているかもしれませんし、まったく別のものを見ているのかもしれません。このように、商談の中身にお互いが意識を集中させ続けるのが非常に難しいのです。
3つ目は「込み入った話のしにくさ」。会話が進んでいくことで、顧客の課題の構造や、提案する商品・サービスの構成、取組スケジュールなどの込み入った話をしなくてはならなくなります。対面であればその場でノートやホワイトボードにササっと絵を描きながら込み入った話もできますが、Webではなかなかそうはいきません。もちろん各社のツールには、PC画面を共有する機能や簡単なメモを書ける機能がついていますが、ノートやホワイトボードと比べるとどうしても使いづらいものですし、画面サイズという制約から複雑な内容を大きく図解するのには向いていなかったりします。そのため、話が込み入ったところに進むと、うまく図解して共有することのできないもどかしさを感じるのです。
3つの困りごとを打ち消すメリットが、Web会議を使った営業コミュニケーションにはある
気恥ずかしさを感じながらスタートし、集中するのが難しいまま話を進めざるをえず、込み入った内容をうまく共有できないのでもどかしい。このようにまとめてしまうと、Webを使った商談にはまったく良いところがないように思えますが、これらのデメリットを打ち消して余りあるメリットがあります。それは、「短いスパンでアポイントを取りやすい」ことです。
Webの商談では、混み合っていることの多い会議室を予約する必要がなく、移動時間などの前後のバッファを取る必要もなくなるので、対面の商談よりもお互いにスケジュールを調整しやすく、商談のスパンを短くできます。
そして、この「短いスパンでアポイントが取れる」というメリットを活かして商談を進めてみたところ、「集中することが難しい」や「込み入った話をしにくい」というデメリットをうまくカバーできるヒントが見えてきました。
Web会議での営業コミュニケーションのポイントは「小さく刻むこと」
それは「小さく刻むこと」です。
これまで、特にソリューション型の営業の場合はできるだけじっくりと時間を掛けて相手の話を聞き、その内容に沿ったしっかりした何ページもの提案書を持参することが一般的でした。
これに対し、Webでは細かく内容を刻み、短時間で何回もコンタクトを重ねていきます。プロジェクトの目的とか、コンセプト、課題、進め方・・・それぞれをスライド1枚にまとめ、それについて話し合う短時間のコミュニケーションを続けていくようなイメージです。
時間を短くすることで、顧客は集中できますし、テーマが絞られる上に一度にこちらから相手に伝える情報量が減るので、顧客が自分のことを話すことが増え、つい本音が出てくる・・・ということにもつながります。結果として顧客とのコミュニケーションの総量を増やし、Webのネガティブな部分を補うことができるということがわかってきたのです。
担当者に求められるスキルとマネージャーの仕事が変わる
ただ、問題はこの「小さく刻む」コミュニケーションは、誰もがすぐにできるものではないということです。
そもそも営業担当者の意識の中に「お客さんの時間を使うのだからそれなりにしっかりした資料を準備しなければならない」「しっかり説明して、お客さんを説得しなければならない」という意識が強いと、「今日お伺いした内容を簡単に1枚に整理してきますので、3日後に20分お時間いただけますか?それについてまたご意見聞かせてください。」とは言えません。
そして、頭の中で情報を整理しながら顧客と会話をし、顧客の表情や声のトーンを見ながら理解度を推察して商談を区切る。間髪を入れずに、聞いた内容と次の面談で確認・検討する内容を手早く資料にまとめて商談を進めていく。これはこれまでの商談で求められてきたものとはかなり異なるスキルが必要になります。
また、営業マネージャーの仕事も大きく変わります。対面型の営業を管理するときのように、部下から週間の営業ミーティングで報告を聞いて指示を出すというやり方ではスピードが出せないですし、これまでの営業プロセス管理の概念も通用しなくなります。そこでマネージャーは、各営業担当者が自立してこのような営業活動ができるように教育していくことが大事な役割となるでしょう。
これからのニューノーマルになるWeb会議での営業コミュニケーションに、今のうちに慣れておこう
最近よく引用される文章として、マイクロソフトの決算資料の中の「2年分のデジタル変革が2カ月で起きた」があります。まさにその通りのことが多くの日本のB2B営業でも起こっており、多くの企業が手探りの状態でリモートワークを導入し、Web等で社内外とコミュニケーションを取っています。そしてこの2か月は、不便なところももちろんありつつも、リモートワークの便利さを多くの人が体験した期間だったのではないでしょうか。
そのため、リモートワークやWeb会議は日本企業の働き方の1つのオプションとして、今後確実に定着することでしょう。つまり、現在のWebを使った営業活動は一過性のものではなく、これから各企業が対応しなければならないニューノーマルになるということであり、多くの企業が試行錯誤をしている今こそが、それを試して慣れておく格好のタイミングなのです。
それから最後に、1つ目の困りごとの「自宅で作業している人同士が初めて話をする『ちょっとした気恥ずかしさ』」ですが、初対面の顧客との関係性を簡単に上げられる絶妙な仕掛けなのだと思うようになりました。私服や自室の風景といったプライベートをお互いに少しずつ自己開示することで、いつの間にか自然と打ち解けた雰囲気になって、実際に次のアポイントに繋がりやすくなっていたのです。そう考えると、Webでの新規顧客とのコミュニケーションは実に面白く、工夫のしどころがたくさんある魅力的な顧客接点だと言えるのではないでしょうか。
トライツコンサルティングは、Web会議の活用などアフターコロナへの営業デジタル改革を支援しています。「Web会議などのツールを営業の武器にしたい」「リモートワークでも営業できる組織を作りたい」とお考えの方はご相談ください。