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先日開催しましたトライツコンサルティング営業DXセミナー『御社のSFAを蘇らせる5つの施策』では、現在入力されているSFAのデータを分析することで、SFAの入力項目を改善できる、というお話をしました。とは言え、単純に出現回数が多い単語を見ながら、選択式の入力フォームに変えれば良いというわけではありません。入力したデータを使って意味や価値のある分析をするためには、さらに一工夫が必要なのです。
そこで、セミナーの中ではお伝えしきれなかった、SFAのデータ分析結果をもとに入力項目を改善して「SFAを育てる」方法についてご紹介したいと思います。SFAのデータ分析にこれからトライしようという方、SFAの入力項目の見直しを考えている方はぜひお読みください。
セミナーのおさらい:SFAのデータ分析結果をもとに入力項目を改善する
先日のセミナーの中では、日報化しているSFAのフリーテキスト記入欄をテキストマイニングという手法で分析することで、意味のある選択式の入力フォームを考えるヒントが得られる、というお話をしました。テキストマイニング・ツールの中には、単語ごとの出現回数を数えてリスト化する機能と、受注した商談と失注/停滞した商談とで単語の出現の仕方を分析する機能があるので、出現回数が多くかつ商談の受注/失注と関連性が強い単語を簡単にピックアップできるのです。
実際にある会社の営業組織で使用していたSFAのデータをお借りして分析したときには、いわゆるBANTCという顧客にヒアリングするべき項目(予算=Budge、決裁者=Authority、課題/要望=Needs、時期=Time frame、競合=Competitor)の5つと、その営業組織オリジナルの2項目を合わせた計7項目が見つかり、それらを選択式の入力フォームに採用したことで、営業担当者が自分でそれらの項目を意識しながら営業活動する環境を作ることができました。
とここまでが、先日のセミナーでお伝えしたことなのですが、実はこのお話には続きがあります。と言うのも、単純にBANTCなどの項目を選択フォーム化するだけでは、後になって分析しづらいデータになってしまうからなのです。
ヒアリング項目の多くを占める「空欄」データとは
先ほどの営業組織のSFAデータ分析の中で、出現回数が多くて受注/失注との関連性の高い7項目を選んだと説明しましたが、これらの項目がフリーテキスト欄に記入されている割合は、1商談当たりたったの10~15%。1訪問当たりだと5~10%しかありませんでした。ということは、選択フォーム化して意識付けすることで入力される割合が高まったとしても、これらの項目の値が「空欄」となる商談データが続出するということです。そして、厄介なことにこれらのヒアリング項目の「空欄」には様々なシチュエーションが含まれるため、そのまま分析すると結果を見誤ってしまう可能性があるのです。
BANTCなどの「ヒアリング項目が入力されている」という状態がどういうことか、改めて考えてみましょう。例えば「顧客の課題」がなにがしか選ばれているということは、顧客の担当者がそれを営業担当者に話してくれるだけの「関係性」があって、顧客の担当者が自社の課題を知っている「キーマン」であって、当たり前ですが、営業担当者が顧客の担当者に課題について「質問」している、という3つの条件をクリアしていることを意味します。
ということは、「顧客の課題」項目が空欄だというデータの中には、「関係性」が不十分で教えてもらえていない、相手が「キーマン」ではないため知らない、そもそも営業担当者が「質問」していない、という3つのシチュエーションが混在していることになります。このようなデータでも数が少なければ分析結果の大勢に影響しないのですが、半分以上となってくると話は変わってきます。いろんなシチュエーションがないまぜになっているままでは、質の高い分析ができないのです。
「空欄」データの内訳を見える化することで、データ分析や次の打ち手の質が上がる
そこで、先ほどの会社ではヒアリング項目の選択肢の中に「質問していない」「質問したが顧客も不明」「質問したが教えてもらえていない」という3つを付け加えることにしました。これによって、以前は同じ「空欄」で処理されていたものが、関係性不足によるのか、相手を間違えていることによるのか、営業担当者のスキルや手法によるのかを見分けられるようになりました。
関係性を高めることに多くの営業担当者が悩んでいるのであれば、関係性向上に役立つツールや活動を調べて展開すれば良いわけですし、ヒアリング相手を間違えているのであれば、キーマンの特徴を分析すれば良いのです。もし多くの営業担当者がそもそも質問できていないのであれば、商談の初期からでも使えるようなヒアリングツールを作ってあげることで問題は解決するでしょう。このように、「空欄」の内訳をデータで見える化してあげることで、次の打ち手を考えやすくなるのです。
ちなみに、この「複数のシチュエーションを含むデータを分解して意味づけする」と言うのは、SFAデータ分析に限らず有効な手法だと私は考えます。
以前に、銀行のプロジェクトで中小企業向けビジネスローンの与信審査モデルを設計するということで、貸借対照表や損益計算書の中の数値を指標化して危ない会社を見極めるという課題に取り組んでいました。経営分析のテキストを買い込んで色々な指標を作ってはモデルに入れていたのですが、判別の精度がなかなか上がりません。そんな中、元データを1件ずつ眺めていると空欄が多いデータとそうでないデータとの偏りがかなりあることに気付きました。そこで、ベテランの審査マンに会って話を聞いたところ、中小企業の中にはそもそも財務諸表をちゃんと作れないところがあってそれも判断材料にしている、とのこと。その話をもとにして、財務諸表だけでなく申込書まで含めて書類作成の粗さを計算する指標を作ってモデルに組み込んだ結果、判別の精度が上がり無事に実用化にこぎつけました。この話も、空欄の内訳を見える化した事例だと私は思っています。
入力項目見直しのヒントは営業会議の中にもある
ここまで、SFAのフリーテキスト欄に入力されているテキストデータを分析し、選択フォーム化する方法と、その際に気を付けるべき「空欄」データの内訳を見える化することについて説明しました。BANTCのようなヒアリング項目であれば、「質問していない」「質問したが顧客も不明」「質問したが教えてもらえていない」という3つの選択肢を追加すればよいのですが、他の項目だと空欄データに含まれているシチュエーションは異なってきます。そのような場合には、どうすれば価値のある分析が可能な選択肢を見つけられるのでしょうか。
そのヒントは先ほどご紹介した銀行プロジェクトと同じく現場にある、SFAデータの場合は営業会議の中にあるというのが私の持論です。会議の中でそれぞれの商談に対してマネージャーやメンバーがしている質問/アドバイスの中に、商談マネジメントのエッセンスが入っているはずです。それらの質問やアドバイスの切り口が選択肢の中に含まれているかを確認し、不足しているならそれを盛り込んでいくのです。
データ分析を通じてSFAを育てよう
そのようにデータ分析と現場のマネジメントという2つの観点からSFAの入力項目を見直すことで、実態をより深く理解できるデータ分析が可能になりますし、営業マネージャーの知恵や経験を盛り込んだデータ構造になっていきます。データ分析を通じて入力項目を見直すことは、設計や開発のコストを掛けずにSFAを自社オリジナルのものへと育成させる一番の近道なのです。