この記事を読むのに必要な時間は約 11 分です。

働き方改革にDX(デジタルトランスフォーメーション)など、限られた人員・時間の中でいかに労働生産性を高めるかが多くの企業にとって重要課題となっています。「24時間戦えますか」というCMが流れていて、まさにそのような企業戦士として働いている父親を見ていた小学生の頃を思い出すと、隔世の感があるものです。

KDDI株式会社の調査によると、企業の社員は1日のうち平均37%(3時間)を会議に使っているそうですが、皆さんの営業組織はどうでしょうか。「ウチは会議時間を短縮できている」という方も、はたまた「平均よりも会議の時間が長そうだ」という方もいらっしゃることでしょう。

しかし、時間を短くしたりTV会議システムを導入して移動のコストを抑えたりはしていても、「生産的な会議ができているか」と聞かれると答えに窮する方も多いのではないでしょうか。と言うのも、今まで多くの営業会議に同席させていただいたのですが、そのほとんどが「1つ1つの商談の進捗状況を共有・確認して金額や時期を修正する」だけの場になっており、決して生産性が高いとは言えませんでした。また、営業マネージャーの方々も営業会議のやり方について指導を受けることはなく、自社流/自己流で進めているために、およそ4割の時間を費やしているのにも関わらず、自分たちの営業会議の生産性が低いことに気が付きにくいのです。

そこで、「営業会議の生産性向上」を実現するための方法として、営業DXの筆頭であるSFAの活用を考えてみたいと思います。「営業会議は問題だと思っていたけど、どう手を付けたらよいか分からない」「SFAを導入してはいるけど、営業会議とは別で運用している」という方はぜひお読みください。

営業会議のアウトプットを意識しよう

「SFA活用による営業会議の生産性向上」について考えるにあたって、そもそも営業会議の生産性をどう測るのかということからスタートしましょう。

ご存知のように生産性とは、インプットからアウトプットを生み出す効率の程度のことを言います。営業会議のインプットは、会議そのものの時間に、準備のための時間、あとは会議室の場所代や、会議にアクセスするためのコスト(移動の時間と費用や、TV会議システム代など)といったもので、簡単にイメージできるかと思います。が、かたやアウトプットとなると、営業組織によって大きくばらつきます。より正確な見込数字をトップに報告するExcelシートを作るための営業会議もあれば、営業メンバーのモチベーションを高めるための鼓舞や激励のためのものもあるからです。

しかし、営業に求められる究極的なアウトプットは売上や営業利益といった目標数字の達成であり、営業会議のアウトプットもそれを意識する必要があると思います。そこで、トライツは営業会議のアウトプットを「目標達成のためのアクションプランを明確にする」ことに設定することが多いです。

このように、営業会議の生産性向上の第一歩は、「そもそも営業会議のアウトプットを何にするのか」を考えることです。現状のアウトプットが社内報告用のデータ整理にとどまっているとすれば、それを「目標数字の達成につながるか」と言う観点から見直すところから始まると思います。

営業会議の中には生産性向上のためのチャンスが隠れている

営業会議のアウトプットを「目標達成のためのアクションプラン」と定義しましたが、次にSFAを使ってどのように生産性を向上できるのかについて考えてみたいと思います。

まず、いわゆる生産性の低い営業会議についてイメージしてみましょう。

そこでは、1つ1つの商談に対して過去の経緯と現状をマネージャーに理解してもらうために、メンバーが現状を報告することに時間がかかっており、今後のアクションプランを考えることに十分な時間が充てられていません。

また、メンバーからの報告を受けてマネージャーがフィードバックをしていますが、その内容は今までの個人的な経験にもとづくものなので、マネージャー本人以外にとっては感覚的なフィードバックだと思われてしまっています。

そして、以上の内容はメンバー本人が自分の手帳やノートなどにメモしているだけなので、本当にアクションプランが実行されるかどうかは不確かですし、毎週同じような説明と同じようなフィードバックが繰り返されています。

もし皆さんの営業会議がこのようになっているのであれば、生産性向上のチャンスが数多くあります。どのようなチャンスがあるのか、見ていくことにしましょう。

チャンス1「今後のアクションプランを考える時間を増やす」

1つ目のチャンスは、「現状把握はSFAに任せて、今後のアクションプランを考える時間を増やす」ことです。

平均的な日本人の読むスピードは1分間に400~600文字なのに対し、ニュースのアナウンサーが話すスピードは300文字。ということは、同じ量の情報を耳で聞くよりも、目で読む方が1.3~2倍効率化できるということです。幸いにして、現在多くのB2B営業組織でSFAが導入され、商談の進捗状況が入力されるようになっています。商談の背景情報の理解はSFAデータを各自がサッと黙読して、分からないことだけを質問してから、さっさと今後のアクションプランの検討に移る。いちいち口頭で説明するのではなく、SFAに入力されているデータを読む習慣をつけることで、営業会議の生産性向上につなげられるのです。

とは言え、話すのは上手だけど文章を書くのが苦手なメンバーもいることでしょう。その場合は「簡潔に」「意見と事実を分けて」など、そもそもの文章の書き方の指導や訓練が必要です。現在の営業は、提案書など顧客向けに文章を書くことも求められますので、SFAへの入力に限らず、分かりやすい文章を書くのは必須のスキルだと思います。

チャンス2「ロジックを活用してフィードバックのムラをなくす」

2つ目のチャンスは、「マネージャーの思いつきではなく、SFAのロジックに従ってフィードバックする」。

皆さんのSFAの入力画面はどのようになっているでしょうか。少なくとも、取引先名に商談名、金額と受注予定日、商談のタイプ・種別に商談のステップ、今後の課題などを入力する項目が設定されているでしょう。思い付きで感覚的にフィードバックするのではなく、ロジカルにフィードバックしようとするときにこのSFAのロジックが使えるのです。

例えば商談の種別ごとに商談ステップが別に設定されていたり、今後の課題の選択肢が異なっていたり、確度の設定の仕方が変わっていたりするのであれば、そこには「商談の種別によって、商談の進み方や受注に至るポイントが異なる」というロジックが含まれています。SFAの画面を開いてそれらのロジックを参考にすることで、ポイントを外さずに客観的に見ても納得しやすいフィードバックとなるでしょう。

もし、現在使っているSFAの入力項目が非常にシンプルでパターン分けもされておらず、ロジックと言えるようなものがほとんどないような場合は、SFAのロジックをもとにフィードバックするのではなく、普段のマネジメントでフィードバックやチェックをしている観点・ポイントをロジック化してSFAに実装することが必要になります。

どちらの場合でも大事なのは、営業のマネジメントを感覚的なものではなくロジック化し、それをSFAとリンクさせるということ。自社の商談はどのようにパターン化できるのか、受注までのステップはどうなっているか、ステップごとのチェックポイントは何かを明確にすることで、フィードバックのムラがなくなり生産性の向上につながるのです。

チャンス3「記録に残してムダを減らす」

最後のチャンスは、「言いっぱなしではなく、会議内の情報を記録に残して共有する」ことです。

せっかく考えたアクションプランが記録されていなかったがために実行されなかったりするのは、会議の生産性ダウンにつながります。現在、いくつかのSFAで音声入力機能がついていますし、会議の音声を拾って自動で議事録を作成するツールも出てきています。音声入力機能を使わない場合でも、若手社員が仕事内容を理解するのに、営業会議の板書を取るのは手っ取り早いOJTにもなります。商談の背景情報やアクションプランなどをしっかりと記録に残して共有するということは、当たり前なのですがついつい見落とされがちなポイントです。

営業会議の生産性向上のヒントがSFAの中にある

SFAを導入している営業組織でよく見られるのが、営業日報や商談情報の集計など、狭い機能でしか活用されていない姿です。そしてそのように狭い機能でしかSFAが活用されない原因として、導入時にSFAの機能や入力・集計の方法についての勉強会はするものの、営業会議をはじめとする日々の業務をどう改善/変革していくのかについては、ソフトウェア会社もSIerも教えてくれない、ということがあります。どう活用するかは自分たちで考え、試してみなければならないのです。

SFAに入力されているデータや、入力項目の設定のされ方の土台となっているロジックは、営業会議をはじめとして様々な業務の生産性向上のために活用できます。およそ4割の時間を費やしている会議を効率的なものとして、今後のアクションプランを生み出すための場に変えるヒントは、営業にとって最も身近なDXツールであるSFAの中にあるのです。

トライツコンサルティングではSFAを活用した営業会議の生産性向上や、営業のマネジメント方法の再設計をサポートしています。2月12日にはSFA活用についてのセミナーを開催いたしますので、営業会議の生産性向上以外にもSFAを活用した営業DXについてご興味のある方はぜひお越しください。