この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

トライツとして営業現場改革に取り組むにあたり、それぞれの企業の強みを活かした営業のしくみを構築し、現場に展開して定着を図っていくのですが、そこでは営業現場の様々な「常識の壁」に行く手を阻まれることがあります。

それらの「常識」について語る方々は、そのことに何も疑問を感じていないことがほとんどなのですが、実は営業改革の実践におけるブレーキとなることが少なくありません。

そこで、今回のトライツブログではこれらの営業改革の実践を妨げがちな営業現場の「常識の壁」について、営業に必要不可欠な「顧客の本音を引き出す」というシーンにフォーカスし、なぜそれが阻害要因となってしまうのか、どう対処するべきかについてご紹介します。

常識の壁1)本音を聞き出すためには、まずこちらに仮説がないとダメ

これは提案型の営業を得意としている現場に見られる発言です。顧客の課題やニーズを掴みましょうとお話すると「手ぶらでは客先に行けない。まずはこちらから仮説を提示したい」と返ってくるのです。

突っ込んで話を聞いていくと、その仮説というのは話のきっかけとなる「ネタ」ぐらいの位置づけで、業界のトレンドや調査結果などをもとに想定した顧客の課題やその解決策だったりします。

この仮説。当たればよいのですが、ピタッと当てはまることはなかなかありません。なまじ業界の情報を使って考えているだけに当たらずとも遠からず、という話になります。その結果、話は盛り上がるものの、顧客から聞ける話は仮説に対するYesかNoかという答えと、その判断をした理由や仮説に対する感想や批評止まりになることが多いのです。また、せっかく考えたものだからと営業が仮説にこだわってしまうと、顧客は仮説の内容を「売り込まれている」と感じてしまい、仮説がかえって逆効果になることもあります。

そうならないためには、作りこんだ仮説よりむしろザックリとした興味付けのネタを提供し、それはきっかけと割り切って本音を探っていくことがポイントで、それには営業のヒアリング能力が必要になります。

「仮説」の精度を磨くのではなく、ヒアリングの手順やツールを整え、ロールプレイングを行うなどヒアリング能力を磨くことが有効だと思います。

常識の壁2)顧客の本音を掴むためにはまず仲良くなる必要がある

営業として顧客がどうしたいと考えているのか、その本音を掴むことは重要なミッションです。特にソリューション型の営業には必要不可欠な活動です。そこでターゲットとした顧客の「本音」を掴むためにどうするか?と検討する際によく出てくるのがこの発言です。「まず仲良くなる必要があるので、しばらく時間が欲しい」と言われたりもします。

しかし、お医者さんに対して「仲良くないから自分の体調のことを本音では話せない」と考える人はいないでしょう。それはお医者さんに、プロとして健康のために必要な治療を施してくれる人だという「期待役割」と、相談相手としての「信頼感」があるからです。

逆に考えると、単に仲良くなったからと言って本音で話してくれるというものではないということです。いろいろな課題を本音で話したら、何か自分達にとって役に立つフィードバックをしてくれるという期待感を顧客に持ってもらうことが必要なのです。どれだけ仲良くなっても、営業に対する「期待役割」が「○○を売ってくれる人」に固定化されていると、必要以上の話をしようとは考えないですし、ましてや本音を話そうとは思いません。

大切なことは「仲良くなる」という漠然としたイメージで考えるのではなく、どうやれば顧客が「期待感を持って営業に本音を話す状態」になってもらえるかを具体的に考えることだと思います。

常識の壁3)自社で解決できない顧客の本音を聞いても仕方ない

ソリューション型営業に転向していこうとしている営業現場で良く聞く声です。「自社にできることは限られており、その範囲外のことを聞いても対応できない」と考えているので、顧客の発言の中から自社で対応できることだけをピックアップして聞いてしまう癖がついている営業担当者は決して少なくありません。

これは、顧客から聞いてきた話に対して「どう対応すればよいか」ということを相談できる相手がおらず、むしろ「そんな話を聞いてきてどうやってウチの商売にするんだ!?」などとマネージャに聞かれて困った・・・という経験や、「そんなことまで聞いて何かやってくれるの?」と顧客に言われて冷や汗をかいた、という経験から、自分で(自社ではないことに注意)解決できる範囲しか話が聞けなくなってしまうのです。

このような意識を持ってしまっている営業担当者が顧客の困りごとを怖がらずに聞いて来るようになるためには、自社で解決した経験がないことでも前向きに相談に乗ってくれる「営業の相談相手」を作ることが不可欠です。

常識の壁4)本音を聞いて提案しているのに売れないのは聞き方が悪い

ソリューション型の営業を徹底していくと、とにかく目の前のお客さんの本音を聞こう、課題を掴もうと考えるようになるのですが、それを意識しすぎると、「聞いても商売にならない相手」の声までマジメに対応しようとしてしまうことがあります。

そんな時は、その企業の意思決定構造を整理し、本当に本音を聞くべき相手なのかチェックを促すことが必要です。

常識の壁5)本音を聞かせてもらうために相手の時間をわざわざ使うのは失礼

最後の壁は「営業は一を聞いて十を知ることが大切。相手に時間を取らせるのは失礼」だとする考え方で、営業トップを含め、ベテランの営業に多い考え方です。実は営業改革を進めるにあたってコレはかなり厄介なのです。

なぜなら、何をやろうとしても「そんなことで時間を取らせるのは相手に失礼」という自分の中での常識ブレーキが掛かってしまい、新しい取り組みが前に進まなくなるからです。

決して、お客さんから直接「失礼だ!」と言われたわけではなく、こちらが勝手に「失礼だと思う」ということでブレーキが掛かってしまうので、無理に進めるのはかなり難しいことになります。

そんな時は無理に前に進めようとするのではなく、まずは「失礼だブレーキ」が弱い営業マネージャや営業担当者から試してもらい、顧客に喜ばれ、成果につながっている状態を作ることから始める必要があります。

営業現場の「常識の壁」をクリアして営業現場改革を進めよう

さて、いかがでしょうか。トライツが取り組んでいる営業現場改革はこのような営業現場の「常識の壁」を乗り越えることの連続です。しかしながら、それぞれに突破口があり、上手くクリアできるとそこで働く人の意識も行動も大きく変わります。

今の営業現場はもっとポテンシャルがあるはずなのだが、それが十分に発揮できていない・・・と問題意識をお持ちの方、一度トライツにご相談ください。その解決策が我々にはあります。