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事例の概要

本事例は大手製造業C社で、消費財メーカーに原料を販売している部門が舞台です。新規商談の受注が進まない中で既存の採用品が販売終了になったり、他社原料へのリニューアルが起こったりするなど、売上の減少傾向が続いていました。

そこで、売上を減少傾向から回復基調に転じることを目的とし、自社原料がほとんど採用されていない大手顧客を改めて攻略する「重点顧客攻略プロジェクト」にトライツと一緒に取り組みました。

2年間の実践期間を経て、今までほとんど受注実績のなかった業界大手3社から大口受注に成功し、V字回復に成功することができました。

営業で勝てる会社へ改革する必要性

C社は長い歴史を持つ業界大手企業で、充実した研究開発組織に強みを持っており、かつ従来は高いブランド力と寡占状態の市場であったため、安定して顧客の商品に採用され続けていました。しかし、国内の新興企業の成長、安さが売りの中韓台などの海外メーカーの参入などにより、新規の採用がされづらくなり、また既存採用品がリニューアルされるときに価格を理由として切り替えられるケースが増えてきていました。

そのため、ブランド力を高めかつ効率的に売上を創出できる「業界で話題になるような大手顧客の商品への新規採用」と、リニューアルなどで容易に切り替えられない関係を作ることと、付加価値の高い営業活動で「勝てる」ようになることで、売上を安定的に回復させる必要があったのです。

寺島

最初から我々とこのような営業改革の取り組みをスタートさせたわけではなく、まずは合宿をやってV字回復のシナリオを作成することと、営業活動を客観的に診断し、課題を明らかにすることを行いました。
当初、C社トップはそこから先は自社で・・・と考えておられたようですが、一緒に議論し、問題が浮き彫りになっている様子を見ている中で「ここから先も力を借りた方が上手くいく」と判断されたようです。

営業コンセプトからツールづくり、実践サポートへ

重点顧客攻略プロジェクトで最初に実施したのは「新しいC社流の営業コンセプトを明確にする」こと。 C社の強みを上手く活かすことで、単なる原料の売り込みではなく、顧客の商品開発をサポートする営業のやり方があるのではないかという方向性が見えてきました。
このやり方を「コラボ型営業」と名付け、顧客の商品の企画段階から販売促進までを顧客とコラボする営業活動へと大きく舵を切ったのです。

寺島

ここで我々が取り入れたのが「ビジュアル思考」です。顧客の商品ポートフォリオや開発のロードマップなどを顧客と一緒に考えながら整理できる営業ツールを企画・開発し、現場でどんどん実践/検証していきました。
最初はかなり難色を示した営業担当者も多かったのですが、同行訪問したり、提案書を私が作成したりとかなり追い込ませてもらいまして・・・やってみることで顧客の反応が違うことを体感してもらうことができました。

営業担当者が顧客の開発会議に呼ばれる存在に変化

顧客との「コラボ」を進める中で、顧客にとってのC社の営業担当者の位置づけが変わってきました。

そして、会社として「これは成功モデルだ」と認識されるようになっていったのです。

寺島

週一度、重点顧客商談の作戦会議を実施していたのですが、ある日営業の若手リーダーが不在でしたので理由を聞いたところ、ターゲットにしている重点顧客の商品開発会議に同席しているとのこと。以前の関係性では考えられなかったことだったので、「本当にコラボ型営業になったのだ」と実感しました。

成果を出し、組織改革へ

「重点顧客攻略プロジェクト」の成果として、ターゲット顧客3社から大口の新規採用を獲得しました。

プロジェクトのゴールは、取り組みの「自前化」でした。そのために、商談の初期段階から営業担当者と一緒に動く技術/企画営業の組織を新たにマーケティング部内に立ち上げたり、顧客の新商品開発を会社としてサポートするプロジェクトマネージャーを本社に設置。組織として顧客とコラボできるように大きく改革することになったのです。

寺島

当初は営業にだけ焦点を当てていた取り組みでしたが、やがて開発などの部門も含めて、会社として顧客とコラボできる体制に変わることになりました。
営業起点の組織改革の一つの成功パターンのように感じています。