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「何を言いたいのか分からない」
「話が頭に入ってこない」
せっかく頑張って資料を作ったものの、このように言われて何度も資料を書き直したという経験がある人は多いのではないでしょうか。
見た目にもこだわり、時間もかけて一生懸命作ったのに、このように言われてしまうのはつらいもの。
そこで、今回のトライツブログでは、ビジネスマンの多くにとっての必須スキルであり、デジタル化を生き抜く営業担当者や営業支援部門にとってますます重要度が高まるであろう「論理的に分かりやすく、相手に伝わる資料を作る」スキルについて考えていきたいと思います。
なぜ「伝えたいことが伝わらない資料」がなくならないのか
パソコンが1人一台配られるようになって20年ほど経ち、中堅~ベテラン営業担当者のITスキルは高くなってきています。ましてや、最近の若手社員は、大学や高校からPowerPointやExcelなどに慣れ親しんでおり、今や仕事でPowerPointなどのオフィス系ツールで見栄えにこだわった資料を作るのは当たり前です。
しかしその一方で、見た目はキレイに仕上がっているのに、伝えたいことが良く分からない提案書や、デザインやアニメーションには凝っているのに、ストーリーがごちゃごちゃしているプレゼンテーションのスライドがちっとも減らないと感じたことはありませんか?
ITのスキルは高まっているはずなのに・・・いったいどういうことなのでしょうか。
その原因は、文章を論理的に筋道立てて組み立てる力が弱いことにあるのではないかと私は考えています。これは、小学校の時にやった「作文」とか、難しい言葉を上手く使ったり、流れるように読ませる文章を書くとかいう「文章力」とは少し異なるものです。
論理的に整合性が取れていて言いたいことが明快に伝わる文章を書く力、いわゆる「ロジカルライティング」に関するスキルが不足しているので、伝えたいことが上手く伝わらない資料がなくならないのです。
意外と知られていない「ロジカルライティング」の大前提
「ロジカルライティング」というと、ロジカルシンキングなどの研修を受けた人は「ピラミッド・ストラクチャー」などの論理構造の体系化が重要だと思われるのではないでしょうか。
20年ほど前にビジネス書でベストセラーになった「考える技術・書く技術」(バーバラ・ミント著、ダイヤモンド社、1999)でも、一番上に主題を置いて、その要素を段階的に分解・具体化していくピラミッド構造を使って論理的に組み立てていくという考え方が紹介されていましたので、覚えて実践されているという方もいらっしゃることでしょう。
文章の論理構成が体系的であることはロジカルライティングの基本です。ただ、その前に大切な「大前提」があることは意外に知られていません。
それは、「誰に、どうなってほしいか」という目的/ゴールを明確に設定することです。そして、その目的/ゴールを達成するために必要な要素を具体化して、相手に合わせたシナリオを作るのです。
ここでポイントとなるのは、「相手に合わせる」ということです。例えば、数字やデータを使って伝えた方が理解しやすい人もいれば、そうではなくイメージを伝えた方がすんなり頭に入る人もいます。私は二人子どもがいますが、子どもの算数の宿題を見ていても兄妹で頭に入りやすい教え方が違っています。上の子は、文章題の意味を国語で考えさせるとすんなり解けるのですが、下の子は数字と図だけで考える方が理解しやすいようで、同じような問題でもどうやって考えるのかを個人に合わせて考えさせる必要性を痛感しています。
このように、「相手を動かす」ためには、その相手に合わせたシナリオ作りが不可欠であり、それを前提にロジカルライティングを行うべきなのです。
主役は「自分」か、それとも伝えたい「相手」なのか
このロジカルライティングの大前提に対して、伝えたいことが伝わらない資料に共通しているのは、まず「自分が言いたいこと」ありきで、それに関係する情報を「自分が言いやすいように」つなぎ合わせて組み立てるというやり方で作られているということです。この場合、主役はあくまでも「自分」であり、資料は気持ち良く自分の言いたいことを伝えるための小道具にしか過ぎません。それでは、他の人が見ても意味がわからないのは当たり前だと言えます。
しかも、効率化や生産性向上を目指すあまり、情報を自分で集め、ゼロから自ら組み立てるのでなく、過去に誰かが作った資料をコピー&ペーストして作成する仕事のやり方をしていると、どうしても「伝えたい情報」を「つながり良くまとめる」ということに主眼が置かれることになりがちです。
もちろん「この情報をここに入れて・・・唐突すぎないか?」「流れに違和感はないか?」「言いたいことにヌケモレはないか」などというような視点で論理構成をチェックすることは意味のあることなのですが、主役が「自分」である限り、ロジカルライティングの大前提を外しており、どれだけ見直しを重ねてもなかなか人に「伝わる」資料になりにくいのです。
ロジカルライティングは「相手を知る」ことから始まる
では、どのようにしてロジカルライティングのスキルを向上すれば良いのでしょうか。
それは、まず伝えたいことを伝えることで、「こうなってほしい」と思う相手のことを良く知ることです。その上で、その人がその資料を見て、自分が期待するような反応をしてくれるためにどんな情報をどのように組み合わせて伝えればよいかを考えていくのです。
その時、既存の資料を前提に並び替えしながら考えるよりも、付箋などを使って一度ゼロから考えることをおすすめします。一通りの流れができてから、既存のもので使えるものと、新たに作成する必要があるものを整理する方が、既存の枠にとらわれないシナリオが作れるからです。
そして、実際にそのようにして作成した資料が期待する成果につながったかをしっかり検証し、次に活かすということを続けていけば、必ずロジカルライティング力は高まっていくでしょう。大切なことは「誰に、どうなってほしいか」を意識し続けることです。
ロジカルライティングが「営業のデジタル化」を味方につける鍵になる?
これから営業のデジタル化は益々進んでいきます。いろいろなツールが営業活動を代替してくれたり、支援してくれるようになっていくでしょう。
ただ、デジタルツールが勝手に営業をしてくれるわけではありません。営業担当者や営業企画部門の誰かが「誰に、どうなってほしいか」という明確な目的を持ち、シナリオを描いていかなければデジタルツールは「豚に真珠」にしかならないのです。
例えば、前述した営業担当者が作成する提案書以外にも、MAツールを使いこなすためには、マーケティングの知識があり、ロジカルライティングができる人が不可欠です。営業企画担当者も、いろいろな営業ツールを作ったり、作ったものを社内に展開する上でロジカルライティングのスキルが低い人では上手くいかないでしょう。
なぜなら、どれも「誰に、どうなってほしいか」というターゲットを明確にし、必要な要素を抽出した上で、その論理構成をしっかり組み立てることが求められるからです。
もしあなたが「ウチの提案書や社内会議のスライドは、言いたいことがよく分からないものが多いなぁ」とか「いろいろデジタルツールを導入しているが、どうも上手くいかないなぁ」などと感じておられるのでしたら、「ロジカルライティング」がそれを解決する一つの鍵になるかもしれません。