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最近メディアやお店のチラシなどで「平成最後の」というフレーズを頻繁に目にするようになりました。

思い返せばこの30年間で色々なものが大きく変わってきたものです。特にPCやゲームなどのデジタルツールは30年前と比べればまさに隔世の感があります。どこの家にもあった黒電話は携帯電話へ、そしてスマートホンへと長足の進化を遂げています。コンピューターやインターネット接続機能が付いたことで、自動車や家電は今やデジタルツールになっています。

このようなデジタルツールはこれからどのように変化していくのか。今回のトライツブログでは、平成最初の年に発表されたDREAMS COME TRUEの「未来予想図Ⅱ」にあやかって、「営業デジタルツールの未来予想図」を考えてみたいと思います。

B2B営業に不可欠の存在となったデジタルツール

1995年(平成6年)ごろからB2B営業の世界にもデジタルツールが導入されるようになってきました。ちょうどWindows95が発表され、オフィスでも徐々にPCが一人一台支給されるようになり、個人がEメールアドレスを所有するようになってきた頃です。WordやExcelなどのオフィスソフトを使って皆が資料作成するようになり、第一次SFAブームもこの頃です。

それから20年以上経ち、B2B営業で使われるデジタルツールは増加、進化しています。携帯電話はスマートホンに変わり、PC以外にスマホやタブレットが一人一台支給されている企業も珍しくはなくなってきました。以前は紙の管理が主体だった名刺管理も、スマホで写真を撮るだけで自動で入力されるようになっています。以前は単なる電子営業日報だったSFAやCRMのソフトにはデータ分析機能やAIが搭載されるようになり、ターゲット客や案件を自動で優先順位付けしたり、ターゲット客ごとに最適なアクションを提案してくれるところまで進化してきています。

このように現在のB2B営業はデジタルツールなしでは成り立たないと言っても過言ではありません。では、これらのB2B営業向けデジタルツールは、これからどのように進化していくのでしょう。そして、それは我々にどんな影響を与えれてくるのでしょうか。

未来予想図1:次のあるべき活動がナビゲーションされる

これまで営業向けのシステムはどちらかというと、いかに簡単に入力できるかということに焦点が当てられてきました。それは基本的に上司への報告や社内外向けの資料づくりが主であり、報告した結果として戻ってくるのは、それを見た人間からのフィードバックが中心だったからです。

しかし、これからは「そろそろあの顧客をフォローしよう」「この顧客にはこんな資料を持っていこう」などと次の活動をデジタルツールがナビゲーションしてくれるようになっていきます。当然のことながら、それに必要な顧客向け資料の作成までやってくれるようになるはずです。そして、その精度がいかに高いしくみを持っているかどうかが企業の営業力に直結するようになるでしょう。

「機械の指示で動くなんてイヤだ」という声もあると思いますが、後になってから「もっと〇〇した方が良かった、もっと頭を使って営業しろ」などとお説教を食らうよりも余程ストレスはありませんし、生産的であり、営業活動に直接的に役に立ちます。クルマにナビゲーションシステムが導入され始めた頃は、「こんなのがあると道を覚えない」などと言う人がいましたが、今やほとんどの人が当たり前に使っています。それは単に道順を教えてくれるだけでなく、渋滞情報なども考慮したその時間の最適ルートを教えてくれるというような付加価値も得られるからです。

それと同じように営業向けのナビゲーションも、その営業担当者一人の経験値ではなく、会社全員の営業ノウハウからナビゲートしてくれるので、より精度が高く、一人では思いつかないようなアイデアも提供してくれることになるので、付加価値の高いものになるのです。

また、UberやAirbnbなどのシェアリングエコノミー(共有経済)の波がB2B営業の世界にも押し寄せてきています。現在は、個別の企業ごとに閉じた状態で使用されている営業活動や顧客のデータにブロックチェーン技術が適用されることで、自社以外のデータを加えたより多くのデータを使ってAIが学習できるようになるのです。つまり、自社の営業担当者が入力したデータに加えて、世界中の営業担当者が入力したデータをもとに、より賢くて精度の高い営業のやり方をSFAなどのツールがアドバイス/ナビゲートしてくれるということです。現実に日本でも、2018年初頭にデータのブロックチェーン化でSFAなどのデジタルツールの高度化を目指す会社が、新進気鋭のWebマーケティング会社によって設立されており、近い将来には実用化されるものと思われます。

未来予想図2:営業活動の主従が逆転する

すでに、Webの世界ではMAツールを使って、自動的に顧客発掘をしたり、あるレベルまで商談化させるまで自動化する技術は確立しています。ただ、そこではまだ「本来は人間がやるべきだけど、コストや手間を考えると手が出せない。でも、Webならできる」という考え方が主流です。あくまでも人間が行う営業活動が主で、デジタルツールを活用した営業活動はそれを補う従の関係ということです。

しかし、近い将来には完全に逆転するでしょう。「どうしても人間でしかできないところだけ人間が補う」ということです。

ただ、その部分はAIが得意ではない創造的な部分だったり、人の気持ちに寄り添って動かしたりするところだったり、以前にご紹介した専門家としてのインサイトだったりするので、これまでよりも高いスキルが必要になるはずです。機械に使われるようになるというよりも、人間しかできない仕事に集中できるようになるということだと思います。

未来予想図3:これまでのマネジメントを不要にする

現在多くの企業で作成されているマネジメント帳票のほとんどは、現状+予測情報の報告を目的としています。この「予測」のところで手心を加えたいマネージャーから重宝されているのがExcelです。根拠のあいまいな予測であっても、それを加えることが容易だからです。また、報告を受ける側もそういうところを「意気込み」とか「姿勢」と評価し、それを聞いて安心したいというところがあり、この状態はなかなか改善されない状況が続いてきました。

しかし、この「予測」は本来システムの得意とするところです。現状がどうなっていて、それにどのような対策を打つことでどの程度の結果が予測されるのか。これまでも過去の実績から係数を算出すればある程度のシミュレーションはできましたが、AIの活用によってはるかに精度の高い予測ができるようになります。現状に関する事実情報と、これからやろうとしていることを元にしたシミュレーション手法が確立すれば、今のマネージャーが作成している資料を作る作業は不要になるのです。

また、営業現場で部下の報告を聞き、マネージャーが行うアドバイスについても、わざわざミーティングの場で時間を掛けて報告をしなくても、もっと前の段階でナビゲーションすれば不要になるでしょう。
今はまだAIというと「営業担当者にあるべき活動をアドバイスする」ということで関心を持たれている方が多いように思いますが、実はマネジメントの方が大きく変わると思っています。

営業デジタルツールの進化で、最も大きな課題は人材育成

このような変化に伴い、営業担当者はもちろん、営業マネージャーや営業支援スタッフに求められることも大きく変わってきます。自社として進むべき方向性を考える、個別の営業担当者の気持ちに寄り添ってサポートする、新しい事業のタネを考える、などAIが進化しても代替することができない本来の営業企画・営業支援業務で存在価値を示すことが求められるようになるでしょう。

従って、これから上記のような方向性で営業のデジタル革命は益々進んでいくと思われますが、それは単にデジタルツールを営業現場で使うようになるとか、Webを使った営業が増えるとかいうことでなく、「人間しかできないこと」に人間が特化することになり、それができる人材育成が重要課題になるということがわかります。

「デジタルツールが進化すればするほど、人間は勉強しないといけない」なんだか変な感じもしますが、どうもそのような流れになっているのです。

トライツコンサルティングには、営業人材の育成について多くの実績があります。具体的には、営業担当者それぞれに「どうなってもらいたいのか」という考えをベースに営業育成ロードマップを作成し、そのロードマップ実現に向けて研修やOJT、現場での支援を組み合わせながら計画的に取り組みを進めます。詳しい事例など知りたいという方は下記よりお問い合わせください。