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「若者の電話離れ」という言葉が言われて久しくなります。わが家の子どもたちも小学生のころからスマートホンを使っているものの、友達とのやり取りはもっぱらLINEやメッセージ機能ばかりを使っているようです。

この「若者の○○離れ」という言葉は実に色々な分野で使われていて、メディアや国の機関で使われたものを集めただけで100いくつもあるとか。それだけ、若者はこれまでの世代が好んで使っていたものとは別のものを選ぶ傾向があるということなのでしょう。例えば、代表的なものに「若者のクルマ離れ」という言葉もありますが、それが最近話題のカーシェアにつながっているわけで、一概に「離れるのは良くないこと」と決めつけずに、そのような行動特性はどんなビジネスチャンスにつながるのかを考えるのが大事なのではないでしょうか。

そこで、今回のトライツブログは「電話離れ」していると言われている「若年世代のコミュニケーション特性」と、それがB2B営業に与える影響について海外の調査記事を見ながら考えていきたいと思います。

調査記事:ミレニアル世代のコミュニケーション特性は?

消費者行動論やマーケティングの著書が多数あるMichael Solomon教授(Saint Joseph’s Univ.)の記事がB2B News Networkに掲載されています。題名は「Professional Selling in the Age of Kardashian: Let Your Millennials Do Their Thing」。この記事では、タイトルにもあるミレニアル世代(Millennials)のコミュニケーションおよび購買活動の特性が上手にまとまっています。お時間がある方はオリジナルの記事をお読みいただきたいのですが、ここでは簡単に要約してご紹介します。

記事の紹介を始める前に「ミレニアル世代」について確認しておきましょう。ミレニアル世代とは1980年代中頃から2000年代初頭に生まれて2000年以降に成人した世代のこと。若いころから当たり前にインターネットやスマートホンが生活の中にあり、インターネットやSNSを自然に活用しているのが特徴です。

特性1:テキストメッセージを好んで使う

さて、記事はミレニアル世代のコミュニケーションの特性をちょっと変わった調査結果をもとに紹介しています。

Match.com社(訳注:恋愛マッチングサイト)の調査によると、30歳以下の人は30歳超の人よりも4倍以上の頻度でテキストメッセージ(訳注:eメールやチャットなど)を使って連絡をしている。

TextPlus社(訳注:LINEのような機能を持つメッセージツール&SNS)は13歳から17歳の若者の60%はテキストメッセージでプロム(訳注:学校で開催されるダンスパーティー)に相手を誘っている。

この傾向はビジネスでも同様で、ミレニアル世代の73%は電話や対面よりもeメールを最初のコンタクト手段として好んでいる。
(中略)明らかにミレニアル世代の購買担当者と営業担当者にとって、かつての対面での営業トークや営業電話でのやり取りは不幸の源となっているのだ。

このように、ミレニアル世代のコミュニケーションの特性の1つとして、eメールやチャットなどのテキストメッセージを他の世代よりも活用しているということを挙げています。

特性2:SNSが購買活動に大きな影響を与えている

記事では続けて、ミレニアル世代がいかにSNSを活用して購買活動を行っているかを熱く語っています。

「SNSで人となりや仕事以外の関心毎をシェアしている営業担当者から商品を買う」という購買担当者の割合は、ミレニアル世代がそれ以外の世代の倍以上となっている。
(中略)ミレニアル世代の購買担当者のなんと43%が、SNSで自分が投稿した質問に回答してくれた人から商品を買う傾向がある。

 

若い購買担当者は、すぐにビジネスの話をすることを好まない。そうではなく、まずは個人的な関係性を築いたうえで、自然に具体的な話へと進めていきたいのだ。

 

ミレニアル世代の生活を激変させているSNSを自社のビジネスの強みとして活用しよう。業務時間中にSNSにひっきりなしに投稿している若い世代をとがめるのはやめよう。若い営業担当者には業務時間中は自由にSNSを使わせて、どんどんツイートや投稿をさせよう。

若い世代はバックストーリーを求めている

そして記事は結論として、SNSやテキストメッセージを当たり前に活用するミレニアル世代が何を求めているのかを述べます。

ミレニアル世代には自分が買うものについてのバックストーリーを、そしてそれを売ってくれる人のバックストーリーを知りたがっている。これまで営業で重要視されてきたリレーションシップ・セリングは、今もなくなってはいない。ただ、今日のそれは以前よりもその姿が大きく変わっているだけなのだ。

記事の最後に出てきたキーワードは「バックストーリー」。これは、個人や商品の背景や生い立ちを意味する言葉です。このバックストーリーを上手く演出するためには、「自分をどういう風に見せたいか」という意図を明確にし、それがすんなりと受け入れられるような伝え方をする、ということが重要になってきます。

私もビジネスでお付き合いをしている人のSNSの投稿を読むことがよくありますが、バックストーリーを上手に演出できているなぁと思う人は確かに何人もいらっしゃいます。「自分は全国を股にかけて仕事をしている」ということを伝えようとしている人は、日本各地の名所や名物料理を定期的に投稿していますし、逆に「地元に根付いて仕事をしている」人は、地域のお祭りやイベントごとに絡めた投稿をしています。他にも、自分ならではのこだわりや、ユニークな考え方や一風変わった趣味など、自分のバックストーリーをSNSで見せるのが上手な人は皆さんのつながりの中にもいることでしょう。

売り込みではなく、バックストーリーを共有するための場としてのSNS

「SNSを営業に活用しろ」と言われると、SNSでまで売り込まないといけないのかと辟易する方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ご紹介した記事の中にあったとおり、いきなり仕事の話に入るのではなくまずはバックストーリーを通じて個人的な関係性を築いていくことを重視するというのであれば、印象が変わってくるのではないでしょうか。

営業担当者はSNSで売り込むのではなく、自分をどのような人間に見せたいのかを考えた上でそれに合った投稿を写真やテキストを使って上手に伝え、そしてそのバックストーリーに共感してくれる人とのつながりを大事にする。そのような仕事とプライベートの境目をあいまいにしたような使い方がこれからの若い世代の営業には求められるのだと私は思います。

営業担当者はSNSでも顧客から評価される時代に

日本でも徐々にですが、SNSが仕事でも当たり前に使われるようになってきています。名刺交換した人とはeightでつながり、職場でのやり取りにLINEを使い、取引先や顧客の中で親しい人とはFacebookのMessengerで近況報告や簡単な問合せをする、というのが普通のことになりつつあります。そして、はじめて会う人はどんな人だろうかとFacebookを調べてみるのが癖になっている人も少なくないことでしょう。

営業担当者は対面での商談の場面や電話やeメールでのやり取りだけでなく、自分が投稿したSNSの内容でも顧客から評価されることが当たり前になってきつつあります。そのような状況では、単純にコンプライアンスという観点でのSNS教育だけでは不十分になってくることでしょう。「自分のバックストーリーを魅力的にかつスムーズに受け入れられるように伝える」という新しい観点でのSNS活用法が営業担当者向けの必須カリキュラムとなる日も、そう遠くないのかもしれません。

参考:「Professional Selling in the Age of Kardashian: Let Your Millennials Do Their Thing」(B2B News Network, 18 Jun, 2018)