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B2Bマーケティングのトレンドとして最近よく取り上げられる動画マーケティング。トライツブログでも2018年2016年の2回、話題のトレンドとしてご紹介していますし、国内でも「今年こそ動画元年」と書いてある記事が増えてきました。

その動画マーケティングの種類の1つとして、米国では最近「バーチャル・カンファレンス」なるものがいくつか出始めています。これは、東京ビッグサイトや幕張メッセなどで開催されることの多い展示会・EXPOを、オンラインで参加できるようにしたもの。参加者はパソコンやスマホなどのWebブラウザから、動画でプレゼンテーションを見たり気になる資料をダウンロードしたりします。

今回のトライツブログでは「バーチャル・カンファレンス」の実態を確認しながら、動画マーケティングのこれからについて考えてみたいと思います。

最新の動画マーケティング「バーチャル・カンファレンス」を見てみよう

先ほど簡単に説明したとおり、バーチャル・カンファレンスとはオンライン上で完結する展示会やEXPOです。参加者は「Auditorium」という展示会で言うところの講演会場のページに進んでプレゼンテーションを動画で見たり、「Exhibition」というそれぞれの出展企業のブースに当たるページでカタログをダウンロードしたり動画資料を視聴したりします。

凝ったものだと「Networking」というページが設けられています。海外の展示会に行かれたことのある方はご存知だと思いますが、大型の展示会ですと初日の夕方や最終日の午後がNetworking Dayとなっていて、参加者が軽食やドリンクをつまみながら交流する場があります。それをオンラインでも再現しようということで、さすがに軽食などは出ませんが参加者同士でチャットできるようになっています。

とここまで文章だけで説明してきましたが、百聞は一見に如かずという言葉もありますので、B2Bマーケティング関連のバーチャル・カンファレンスをいくつかご紹介します。

1つ目はTarget Marketing社が主催する「All About Marketing Tech Virtual Conference & Expo 2018」(以下「AAMT」)です。今年で2回目のバーチャル・カンファレンスで、OracleやSalesforceなどが協賛・出展しています。バーチャル・カンファレンスの中では比較的大規模なものですし、メニューも充実している方ですので、お時間のない方はこちらだけでも見ていただければと思います。

2つ目はMarketingProfs社が主催する「Top Marketing Trends for 2018」。これは開催期間が今週いっぱいなので、この記事をご覧のタイミングによっては見られないかもしれません。先ほどご紹介したAAMTと比べるとやや規模が小さく、Networking機能が弱い傾向があります。こちらにもSalesforceやプロジェクト管理ツール大手のWrikeなどが出展しています。

発展途上のバーチャル・カンファレンス:カギは動画の質

さて、これらのバーチャル・カンファレンスを体験してみて感じたのは、まだまだ発展途上の取り組みだということです。わざわざ現地に行かずに、オフィスや自宅で好きな時間にプレゼンテーションを何度でも見られるというのは大きなメリットではあります。しかし、サイトのデザインや肝心な動画のプレゼンテーションの質という観点では、まだまだ満足いくものにはなっていないように感じました。

動画プレゼンテーションのうち一部のものはしっかりとプロの手で撮影・編集されており、まるで3月末でNHKでの放送が終了してしまった「スーパープレゼンテーション」(TED Talks)かと思うくらいに見ごたえのある動画もあります。しかし、大部分の動画はパワーポイントのスライドを見せながら、講演者が話している音声が聞こえるだけの紙芝居形式がほとんどで、「わざわざ10分もかけてこれを見るのか」「ホワイトペーパーにしておいてくれれば1~2分でサッと流し読みできるのに」と思うようなものが多いのです。

確かに冒頭でもお伝えしたように、動画マーケティングが米国では大きなトレンドになっています。大手調査会社であるIDG社のデータでは、B2B企業の89%が2017年時点でマーケティング・コンテンツに動画を採用しており、企業の管理職のうち75%は仕事に関連する動画を週に1本以上見ています。

その影響なのか、バーチャル・カンファレンスにアップロードされている動画の多くは、「紙芝居でもいいから今あるコンテンツを取り合えず動画形式にしよう」というスタンスで作られているように思います。その結果、本来は動画でなくても良いコンテンツが動画化されてしまっているのです。

活用の流れが広がる動画マーケティング、軽い気持ちで手を出すのは要注意!

動画には他の形式のコンテンツにはないパワーがあります。機械やシステムの動作状況を見せるにはデモ動画に勝るものはありませんし、TED Talksの巧みなプレゼンテーションを見ると惹き込まれるものがあります。植物が成長する様子を早送りで見せるものや、昔の地図と今の街並みを重ね合わせるものなど、動画ならではの編集・加工がないと上手く伝わらないものもたくさんあります。

そのため、日本の企業でも自社のWebページに動画コンテンツを掲載しているところが増えてきています。しかし、バーチャル・カンファレンスと呼ばれるものをいくつか見てきた中で感じたのは、話題になっているからと言って軽い気持ちで動画コンテンツに手を出すのは危険だ、ということです。

私たちはテレビをはじめとして、さまざまな動画を目にしながら生活しています。特にテレビは、昨今制作費が下がったとは言われますが、視聴者を飽きさせないように編集が加えられクオリティの高いものを見慣れています。そのように受け手の目が肥えている状況で、紙芝居形式のプレゼンテーションを見てしまうと、なんともチープで手抜きをされているように感じてしまうものです。クオリティの低い動画コンテンツは、結果として企業のブランド価値を傷つけてしまいかねません。

冒頭でも述べたように、日本でも動画元年と言われ続けて数年が経ちました。確実に動画活用の流れは広がってきています。素晴らしい動画は人の心を動かす力を持っています。しかし、他社がやっているからと今あるスライドなどのコンテンツをただ動画にするだけでは逆効果になる危険性もあるのです。わかりやすいデモや、林先生並みの巧みな話術を持つ営業担当者のプレゼンテーションなど、「これはぜひ沢山のお客さんに動画で見てほしい!」と思えるコンテンツに絞って動画化するというスタンスで自分たちの動画活用を考えていくことがが大切だと思います。

参考:「All About Marketing Tech Virtual Conference & Expo 2018」(Target Marketing)
Top Marketing Trends for 2018」(Marketing Profs)