この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。
メーテルリンクの「青い鳥」という童話をご存知ですか。チルチルとミチルという兄妹が幸せをもたらす青い鳥を探す旅に出るものの、それは結局自分たちの手元にあったというお話です。この話をもとに、本当の自分や天職、自分の真の居場所を見つけるために職場や学校を転々としてしまうことを、「青い鳥症候群」とも呼ぶようです。
この青い鳥症候群は、青年が大人へと成熟する過程でよく見られる症状だそうです。私が就職活動をしていたときにも「自分探し」という言葉はよく使われていましたし、せっかく有名企業と言われる会社に入ったのに、すぐに他の会社に転職してしまったり、一念発起して難関の資格試験を目指して苦労していた友人もいました。
今回のトライツブログでは、B2B営業の世界でも見られる「青い鳥症候群」について見てみたいと思います。
B2B営業施策はより取り見取りの時代に
20年前や10年前と比べると、現在はB2B営業の世界における営業改革は実にバリエーション豊富になりました。以前は営業改革と言っても、世に出たばかりのSFAや、おなじみの営業研修、マトリックス型組織など当時流行っていた組織体制変更というものが主だったように記憶しています。
ところが、現在ではSalesforceなどのようにSFA/CRMソフトは長足の進歩を遂げていますし、コンテンツマーケティングなどのWebマーケティングも当たり前のものになってきました。SNSも普及してソーシャルメディアの活用もテーマになりつつありますし、それらを半ば自動で運用するマーケティングオートメーションも徐々に広がりつつあります。
従って、営業施策は今や百花繚乱のより取り見取り。余裕がある営業部門では複数の施策を並行して進めているところも多くなっています。
B2B営業改革の成功を阻む「青い鳥症候群」
ただし、そのように取り組む組織においては、そこで期待できる成果を上げることができているところと、そうでないところにはっきり分けることができるように思います。
後者に共通しているのは、「もっと自分達にピッタリフィットした施策があるはずだ」と考え、「良い答え」を探します。同業他社の事例の研究に熱心で、できるだけ効率的に答えにたどり着こうとしがちです。しかしながらなかなかそのような施策はないので、いつまでも探すことになってしまいます。まさに「青い鳥症候群」です。
また、このような組織でも突然トップダウンで新しい施策をスタートさせたりすることがあるのですが、途中でピッタリとフィットしていないことに気付き、いつの間にかフェードアウトしてしまうことが少なくありません。中途半端で食い散らかすことになってしまいます。比較的利益率が高いビジネスで、安定している企業に多いように思います。
これに対し、上手くいかせることができるところは、「最初から自分達にピッタリとフィットするものなどあるはずがない」と考えています。大切なことはそこに至る過程であり、そこに時間と労力を惜しんではいけないとわかっているのです。いるかいないかわからない青い鳥を探すのではなく、卵から自分を幸せにしてくれる鳥を育てようというスタンスです。
このような考え方の組織にとっては、新しい営業改革のトレンドは自分達を更に成長させてくれるきっかけでしかなく、それを自分達のモノにできるかは自分達次第と割り切っているように見えます。
これらのことから、営業改革を成功させるためには、最初から完成度の高い施策がどこかにあるはずだ・・・と探すのでなく、自分達の営業を進化させてくれるような施策のヒント、アイデア、ツールというような「営業改革の卵」を探すという姿勢が大切なのではないかと思うのです。
今付き合っている取引先はパートナーになりえるか?
とは言っても、そうやって見つけた卵を自分達に合ったものに育て上げていくのは大変なことです。そこで大事なのはパートナー企業の選定です。
あなたが今施策を導入しようとしている、または導入している商品・サービスを扱う取引先はどんな企業でしょうか。彼らは、自分たちの商品・サービスにこだわらずに自社に最適なものが何かを考えてくれるパートナーになりうる企業と判断できますか。
答えがイエスなら幸運です。さっそく彼らを自分たちのパートナーとして、相談に乗ってもらうことにしましょう。与件を伝えるだけでなく、現在の課題ややりたいことなどを一緒にディスカッションすることで、新しいアイデアを手に入れることができるでしょう。
もし、今付き合っている会社がパートナーとしては不十分だという場合にやるべきことは、より良い答えを持っているベンダーを探すことではなく、パートナーとして一緒に考えてくれる相手を探すことです。一つの商品・サービスにこだわらずに相談に乗ってくれるか、施策導入後も面倒見が良さそうか、といった観点で見ることで新しく声を掛けてみたい会社が見つかるかもしれません。
青い鳥を探すのではなく、自ら作り上げることで営業改革を成功させよう
色々な営業施策を試すことができる現在、営業改革のハードルは今までにないほど低くなっています。ただ、どんな施策であっても、自分達に合ったものにしていくためには、自ら作り上げるということの大切さを忘れてはいけないのです。
安易に新しいものに飛びついているだけでは、様々な施策をつまみ食いするだけで、大金をはたいて現場にも負荷をかけたのに、営業改革が上手くいかない、ということになってしまいます。
逆に、いつまでも「どこかにウチにピッタリのいい施策ないかな・・・」と探しているだけでは、自社の営業が世の中の流れに取り残されてしまうでしょう。
自分たちは「最適な施策があるはずだ」と青い鳥を探していないでしょうか。
このような視点から自社の営業改革を改めて見直すことで、次にやるべきことがきっと見えてくるのではないかと思います。