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昔から、コピーを取ることを「ゼロックスする」と言ったり、絆創膏=「バンドエイド」だったりと、一般的なモノや動作に対して特定の企業名や商品名が当てられることがありました。最近だと、Googleなどの検索エンジンで調べること=「ググる」という使い方が(まだまだ口語のみですが)メジャーになりつつあるようです。実際に英語辞典では10年以上前から「google」という動詞が辞書に掲載されていますので、国語辞典に載るのも時間の問題かもしれません。

それほどに当たり前のことになりつつある「ググる」。どうやらこれが、B2B営業/マーケティングにも大きな影響を与えているようなのです。

今回のトライツブログでは、Web時代のB2B顧客が行っている「ググる」に焦点を当ててみることにしましょう。

海外調査レポート:顧客がお目当ての企業を見つけるまでにWeb検索する回数は?

1万人以上もの専門家が調査記事やレポートを投稿するアメリカのビジネスコミュニティ「Business 2 Community」。そこに最近「Understanding the Modern B2B Sales Process」という記事が掲載されました。作者はWebマーケティングを得意とするマーケティング・コンサルティング会社Horizon Peak Consulting社の社長Jessica Mehring氏。この記事が大変面白かったので、要点をかいつまんでご紹介したいと思います。

記事の内容は、ざっくり言うとWebの活用がさらに進んでいることでB2B顧客の購買の仕方が大きく変わってきており、B2Bの営業プロセスを改めて見直すべきだ、というもの。これだけだと、これまでに何度も取り上げているお話にすぎませんが、参考データが秀逸なのです。

購買活動において現在のB2B顧客は営業担当者により依存しなくなっていると、57%の営業担当者が回答(HubSpot Sales Perception Survey)

B2B顧客のうち74%がWebでのリサーチから購買活動をスタートさせている(Forrester Research)

90%のB2B顧客は、お目当ての企業を見つけるまでに12回の検索行為を行っている(think with Google)

この中でも特に面白いと感じたのは、最後のGoogle社による調査結果です。世界中に星の数ほど会社がありますが、こんなデータを出せるのはGoogleだけでしょう。元の記事である「The Changing Face of B2B Marketing」には、他にも面白いデータがいくつもありますので、お時間がある方はぜひオリジナルの記事を読んでみていただければと思います。

このデータについてCaterpillar社のグローバル・マーケティング・サービス・マネジャーのRenee Richardson氏はこのように述べています。

顧客にとって営業担当者との接点は購買プロセスのかなり後の方になっています。そのため、B2B企業は自社の価値を伝える物語を、プロセスのより早い段階から明確かつシンプルに顧客に伝えられるように準備する必要があるのです。

12回もの検索をくぐり抜けないと商談相手として選ばれない!

これらのデータから見えてくるのは、営業担当者に会う前にWebを使って念入りに情報収集しようとするB2B顧客。しかも、目当ての企業のサイトだと確信を持つために何度も検索(調査)する慎重な買い手の姿です。そして、その慎重な買い手から候補として選んでもらうためには、12回の顧客の検索の結果として、買い手に「ここに声を掛けてみようかな」という候補に残っていなければならない、という現実です。

これまでWebの検索対策というと、最初の検索でいかに上位に表示されるようにするか、といういわゆるSEO(検索エンジン最適化)に重きが置かれていたように思います。しかし、今回の結果は従来のSEOだけでは不十分だ、ということを突き付けています。顧客は12回の検索・調査を通じて、どんどん情報を蓄えて賢くなっていきます。仮に最初に思いついた検索のキーワードで上位に上がっていたとしても、より賢くなった11回目や12回目の検索の結果として、顧客に認められる情報を提供できないのであれば意味がないのです。

最初の検索でただ上位に表示されるのではなく、12回もの検索・調査を通じて顧客に良い印象を与え、自社がふさわしい相手であることを認めてもらわなければならない。これは、Webマーケティングの中でも非常に高度なことが要求されるようになっていることを意味します。

営業担当者は社内に対して、顧客の代弁者になろう

では、営業部門は自分のあずかり知らないところで検索・調査を繰り返す顧客候補に対して、何もできることはないのでしょうか。

先ほども述べたように、顧客が自社のサイトにたどり着くまでに何回検索をし、どのようなキーワードを入力していたか、といったデータを網羅的に収集できるのはGoogleくらいのものです。しかし、営業担当者はGoogleでは集められないような情報を集められます。既存顧客や見込み客とじっくり話をし、Webでどんな検索をしたのかだけでなく、その背景や意図まで深く聞き出すことができるのです。

顧客はWeb検索で、どんなキーワードで何を知ろうとしていたのか、それをどのように評価・活用しようとしていたのかという情報を集める。顧客の代弁者として、集めた情報をマーケティング部門と共有する。そして、何回も検索する慎重な顧客に対して好印象を与えられるコンテンツをサイト上に用意する。このサイト改善活動の第一歩は、顧客による目に見えない検索・調査活動について、営業が理解しようとすることから始まると言っても過言ではないでしょう。

既存顧客や商談中の顧客が自分たちと会う前にWebなどでどんな調べ物をしていたのか、その時に自社のサイトを見てどのように感じていたのかを顧客から聞き出す。そのような会話の中に、もっと顧客から選ばれるサイトにするためのヒントが隠れているのではないでしょうか。

次回予告:Web時代に合わせた最新のB2B営業プロセスとは?

と、Googleの調査データについてご紹介したところで紙幅が尽きてしまいました。
次回のトライツブログでは、最初にご紹介したBusiness 2 Communityの調査記事「Understanding the Modern B2B Sales Process」の続き、Web検索を繰り返す現在のB2B顧客に合わせた「最新のB2B営業プロセスの姿」についてご紹介します。ご期待ください。

参考:
「Understanding the Modern B2B Sales Process」(Business 2 Community, June 13, 2017)
The Changing Face of B2B Marketing」(Google)

記事でもご紹介したように、Webを活用することで顧客の購買活動が大きく変化してきています。トライツコンサルティングでは「顧客の購買活動の変化」「変化している顧客に合わせた営業のあるべき姿の再構築」について、定期的にセミナーを開催していますし、同様の内容で個別企業向けの勉強会も行っています。ご興味のある方は下記よりお気軽にお問合せください。