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先日、ある企業から相談を受けました。自社の営業についてトップから現場まで問題意識を持ってはいるものの、何をしていけば良いか絞り込めない、SFAの導入やWebサイトの見直しなど具体策も出ているが、本当にその施策が適切なのか確信が持てず、なかなか前に進むことができない、というお話でした。
今週のトライツブログでは、営業支援部門が陥りがちな「営業施策の迷走スパイラル」と、そこから脱するための「売上拡大の公式」をご紹介します。
なんだか同じことを繰り返しているなあ
SFAの検討を進めていたA社。トップの「市場環境に合わせた営業の変革を!」というかけ声もあり、推進担当者は追い風を感じながら話を進めていました。しかし、いざ話が具体化し、必要な金額が明確になってくると多方面から「費用対効果を明確に示せ」とか「本当に上手くいく根拠は?」などというツッコミが入り、検討が止まってしまったのです。
ゴルフのドライバーを購入する時に、「このクラブを買えばスコアがどれだけ良くなりますか?」と聞く人はあまりいないと思いますが、なぜか営業施策の場合は「これでいくら売上が上がるのか?」と聞かれ、納得できる答えが出せないと停滞するということになってしまっています。
実はこの企業はこのような検討を過去に何度も繰り返してきました。何かをきっかけにして営業に対する問題意識が高まり、SFAや研修などの施策が検討されるのですが、「そもそも営業はこれからどうなりたいの?」「その施策が本当に適切?」などというツッコミに明確に答えることができず、挫折してしまうということになっていたようです。
これは正に「営業施策の迷走スパイラル」です。時間を掛けて施策の検討をしているのですが、結果として何も大きな意思決定にはつながらず、これまでやってきたパターンの中で手の届く範囲の施策しか実施されなくなってしまうのです。
スモールスタートは果たして賢い選択か?
実はこのような状況の企業が多いということは施策を提供する側の企業も良くわかっているので、小さくスタートさせることを積極的に提案しています。SFAなどは無料である期間は使えるようなサービスを行っているところもあり、「とにかくできる範囲でさっさとスタートさせましょう」とアピールしてきます。
ただ、それは本当に賢い選択なのでしょうか。
やりたいことが明確で、それに効果的かどうかを判断したいという場合なら問題はないのですが、そもそもやりたいことが不明確だったり、単に「売上拡大したい」というような大きなテーマしか持っていなかったりすると、スモールスタートさせても次のステージに進む判断ができず、結果として止まってしまうことになります。
実は世の中の多くの企業におけるSFAの展開が途中で止まってしまうのには、ここに原因があるのです。
かと言って「これからの自社の営業はこうしたい」という明確な意思を持てている企業は決して多くありません。「これからはソリューション営業だ!」などと言われてはいても、そのスタイルが合わない営業もたくさんあるでしょうし、なかなか一言で表現するのは難しいものだからです
売上拡大の公式を使ってやりたいことを明確にしよう
そこで有効なのが、「売上拡大の公式」です。
商談件数を増やす × 受注確率を高める × 商談単価を上げる = 売上拡大
当たり前のことなのですが、売上を上げるためにはこの3つの要素のどれかを増やす必要があります。例えば受注確率にフォーカスするのであれば、現在の受注確率が何%で、それを何%まで高めるのかを目標設定するわけです。仮に30%を40%にするとしたら、顧客とのコンタクトをどう変えるのかを明確にし、それに必要な商談ツールは何で、SFAのどんな機能を活用するのかを整理していきます。
このレベルまでロジカルに組み立てておけば、頭ごなしに「上手くいくイメージがわかない」「費用対効果を示せ」というようなことにならず、むしろ「もっと○○の方が良いのでは?」と建設的な意見にもつながるのです。
「このドライバーを買えばスコアがいくら上がりますか?」と店員さんに聞いても苦笑されるだけでしょうが、「平均スコアを5上げるためにティーショットの飛距離を伸ばしたいのですが、このドライバーだと20ヤード伸びますか」なら問題なく答えてもらえるでしょう。もしかしたらもっと適切な手段を提案してくれるかもしれません。それと同じことだと思います。
スタート時点で自社としての売上拡大の公式を作っておけば、進めていく中で検証もできます。「こんなことを明確にして後で責任を取らされたら困る」と逃げるのでなく、皆でその目標値に向けて知恵を出していくという流れが作れたら、その施策はきっと上手くいくはずです。
トライツコンサルティングでは、営業の現場力を高めるためにクライアント企業の「売上拡大の公式」を分解し現状分析することからスタートしています。「売上を増やす必要はあるが、どこをどう変えればよいか分からない」「まずは現状を知りたい」という方は、お気軽にお問い合わせください。