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最近、『AI(人工知能)』についてのニュースを目にすることが増えてきています。今年の3月には韓国のプロ棋士がAIの「アルファ碁」に完敗したというニュースもありましたし、4月には経済産業省がAIやビッグデータなどの技術革新にうまく対応できなければ2030年度には735万人分の雇用が失われるという試算を発表しました。また、6月12日の産経新聞に、AIを実現する最新の技術とそれらによって日本経済にどのような影響があるのか、をまとめた特集記事「AI新時代」が掲載されました。
今回のトライツブログでは、産経新聞の「AI新時代」を参考にしながら、AIの登場がB2B営業に及ぼす影響について考えてみたいと思います。
人間の仕事を代替するAIの登場
週末を控えた米東海岸の事務機器メーカー。オフィスのパソコンに向かう営業担当者に、1通の電子メールが届いた。
「フランクへ。君は今週、2件で4万2550ドルの契約をとって、26社の潜在顧客と接触したね。素晴らしい成績だ。でも、まだ年間ノルマの達成ペースからは遅れているよ」
上司からの厳しい指摘にも見えるメールだが、“送り主”は人間ではない。米ノースカロライナ州のIT企業、オートメイテッド・インサイツが開発した人工知能(AI)「ワードスミス」が、自動で作成した社員の管理・評価書だ。
6月12日の産経新聞に記載された「【AI新時代】社員に「クビ」を宣告したのはAI上司だった…記者も接客もAIが人間の仕事を奪う時代がすぐそこまで来ている」の冒頭では、オートメイテッド・インサイツ社が開発したAI「ワードスミス」の活用例を紹介しています。
「ワードスミス」はさまざまなデータベースを読み込んで、機械が作ったとは思えない文章を自動で生成する変換エンジン。アメリカの大手保険会社オールステートでは、社員の業績データをもとに、まるで生身の上司からのフィードバックメールのような文章を社員向けに送信するシステムを導入しています。
また、このような「AI上司」以外にも、「AI記者」としてAP通信では企業の決算記事の作成に、Yahoo!スポーツではスポーツの実況記事の作成にワードスミスは活用されているそうです。まさに、AIが人間の仕事を代替しつつあると言えるでしょう。
AIの活用でB2B営業も変化する
ただ、実際にこのワードスミスでできる機能を見てみると、現在のところでは羅列された数字データを自動で分析して、その傾向や割合などについて分かりやすく文章化するという「データから自然文への変換エンジン」でしかありません。そのため、この記事のタイトルに書かれているようにAIにマネジメントの仕事がすべて奪われてしまう、ということはまだなさそうです。
とはいえ、B2B営業でもワードスミスのような技術が導入されれば、活用の方法はいろいろとありそうです。
「SFAの入力内容に応じて、営業メンバーにフィードバックを自動で送信する」
「売上データを読み取って、社内向けの報告資料を自動で作成する」
といったレポート作成機能以外にも、
「前回の購入から一定期間が経った顧客に対して、『不具合はないでしょうか』『在庫はまだありますか』といった案内を自動で送る」
「前回の顧客訪問からしばらく期間が空いている営業メンバーに対して、『そろそろあのお客さまをフォローしたら?』といったアドバイスを自動でする」
といったリマインド/フォロー機能でも使えそうです。
複雑な洞察を示したり相手によって伝え方を工夫したりといった難しい作業はまだできないものの、数字データを集約して表現することや、リマインドメールのようなルールに基づいた作業はむしろAIが得意とするところです。そういった作業はこれからはAIに任せて、生身の人間はもっと別のことで価値を作り出す、B2B営業もこれからそのように変化していくことでしょう。
AIでコミュニケーションのオートメーションが現実になる
これまで、B2B営業でのIT活用と言えばSFA(Sales Force Automation)でした。しかし、その名に反して従来のSFAには、ほとんどAutomation(自動化)の機能はありませんでした。せいぜい、営業メンバーが自分たちで入力したデータを複数の切り口で集計できるという「集計のオートメーション」どまりでした。
しかし、ワードスミスのようなAIが開発・導入されたことによって、まだ一部には過ぎないものの、社内外との「コミュニケーションのオートメーション」が現実のものとなってきました。AIと生身の人間が役割分担をして、対顧客・対社内のコミュニケーションを進めていく、そんな時代が目の前に来つつあるのです。
これからの営業はAIの活用の仕方を考えよう
6月20日に総務省が「AIネットワーク化の影響とリスク -智連社会(WINS)の実現に向けた課題-」という報告書を公表しました。この報告書ではAIネットワーク化によって新たな製品・サービスやビジネスモデルが創出される一方で、人間はAIに代替されない能力を身につけなければならない、と警鐘も鳴らしています。
これまではSFの世界でしかなかったAIが、これからは私たちの生活の中に確実に入り込んできます。B2B営業においても、そのトレンドは変わらないでしょう。その結果として、さまざまな雑誌で取り上げられているように、営業という仕事の担い手が人間からAIにとって代わられてしまうのか。それはまだわかりません。しかし、AIのような新しい技術をどう使いこなしていくか、ということは今後考えていかなければならないでしょう。
参考:「【AI新時代】社員に「クビ」を宣告したのはAI上司だった…記者も接客もAIが人間の仕事を奪う時代がすぐそこまで来ている」(2016年6月12日、産経新聞)
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