法人営業の現場には2種類の提案書があります。

商品カタログやキャンペーンチラシ、商品データベースを提案書がわりに使っている会社が多くあります。それ以外に主要な商品・サービスについて、どこに持って行っても紹介できるように提案書の体裁で用意している会社もあります。これらをここでは汎用提案書と呼びます。

それに対するのが個別提案書です。これは読んで字の通り、顧客ごとに個別にカスタマイズされた提案書のことです。大まかな商品・サービスは決められているものの、実際に導入するものが顧客の規模や使い方・環境によって異なるような業界では、顧客が購入の意思決定をするために個別提案書が必要不可欠になります。

しかし、様々な営業現場を拝見してきましたが、個別提案書を作るのに長けている営業担当者はごく少数派。汎用提案書に見積だけくっつけて持っていくような営業担当者も多く見られます。

今週のトライツブログでは、顧客によって提案する商品・サービスの詳細が複雑に変化するような難易度の高い営業における、個別提案書の作り方について考えてみましょう。

よくできた汎用提案書は商談初期の有効ツール

汎用提案書は多くの場合、商品企画やマーケティング、メーカーであれば実際に商品サービスを開発している部署によって作られています。よくできた汎用提案書は、商品やサービスの良さを端的に顧客に伝えることができ、また顧客に自社で導入する場合のイメージを持ってもらうツールとして、商談の初期段階では存分に機能します。

しかし、顧客の中でその商品・サービスの購入についての検討が深まる中で、クリアにしなければならないことが出てきます。
「自社の規模だとどれくらいのボリュームがいるのだろう」
「自社の使い方だとどのスペックの商品・サービスが良いのだろう」
「自社の環境だと追加で必要になるものがあるのではないか」
「結局全部でどれくらいのコストが発生するのだろう」

これらの疑問に明確に答えるために個別提案書が必要になってくるのですが、前述した通り、個別提案書を作ることを苦手としている企業が多いように思われます。個別提案書を作るには、営業が顧客の状況をよく理解し、商品・サービスに関する豊富な知識を持った技術部隊に伝えるという組織対応が求められます。さらに、顧客ごとに提案内容を調整し、資料に落としていくのにはかなりの手間を要します。

シンプルなテンプレートが個別提案のレベルアップを実現する!

ここで着目したいのは、「顧客の状況は1社1社異なるが、顧客が自社の商品・サービスの購入のために知らなくてはいけない情報は限られている」ということです。個別提案書と考えると、それぞれの顧客向けにお手製で資料を作らなければというプレッシャーに負けて、ついありものの汎用提案で済ませようとしてしまいます。しかし、個別提案書に書いてあることを分析すると、幾つかの要素で成り立っていることがわかります。その要素にガイドするような工夫をすれば、ゼロから毎回悩むようなことをしなくて済むのです。

あるB2Bサービス企業での例をご紹介します。
この企業ではセミナーや展示会の場で出会った顧客に合わせて提案しながら受注を獲得する営業スタイルをとっています。営業担当者はなるべく提案書を書かずに済むように話を進め、どうしても必要になった時だけ過去に誰かが作った個別提案書を皆で借用して部分的に書き直したり書き加えたりしていたのです。そのため、テンプレートのようでありながらできの悪く、肥大化した個別提案書が部署中で使い回されていました。これらの結果、新規受注で苦戦していたのです。

そこで、これまでに受注した案件の個別提案書を分析して、今後の個別提案書のページ構成を以下の必須5項目に絞ることにしました。
1.課題の背景と現在の運用方法
2.課題を解決する長期的なストーリー
3.課題解決に必要な商品・サービスとそのカスタマイズ案
4.商品・サービスの導入スケジュール
5.商品・サービス導入の体制案

この企業の最大の特徴は個別提案書の細かい中身ではなく、ページ構成を本当に重要な項目に絞り込んで汎用化(テンプレート化)したということにあります。これによって膨大な提案書づくりの作業から解放されたとともに、商談工数の削減につなげることができました。以前は100ページ近くに及ぶ個別提案書を作るために営業担当者と技術部隊が四苦八苦していたのですが、本当に必要な10ページを作ることに専念するようにしたのです。そして、構成要素ごとのノウハウが蓄積することにより、技術部隊にいちいち問い合わせなくても営業担当者が自分たちで個別提案のおおよそのページを作ることができるようにもなりました。

さらに、新しい個別提案書を事業部オフィシャルのテンプレートとしたことで、これまでにこの企業の中で流通していた「できの悪い提案書のテンプレート」を一掃することにもつながりました。

顧客の意思決定要素を知れば商談がシンプルになる!

少し話がそれますが、顧客が意思決定をするために必要な要素が有限である、ということは何も提案書だけに限った話ではありません。要素が例えば5つだとすると、そのうちのいくつまでを顧客と合意できているのかを知ることによって商談の状況把握やマネジメントにも活かせます。また、5つの要素を顧客と具体化し共有することが商談の基本ステップだと捉えるのであれば、この基本ステップをもとに商談スケジュールをよりロジカルに設計しなおすことも可能になります。顧客の意思決定要素を知ることは、営業のやり方全体に影響を与える大事なポイントなのです。

このように、一見取っつきにくくどこから手を付けたらよいかわからなく見える個別提案書ですが、その作成のポイントは「顧客が意思決定するために必要な要素を明らかにすること」にあります。
もし顧客ごとに作成する個別提案書に悩んでいるのでしたら、これまでの商談を思い浮かべてみてください。顧客の意思決定要素が明らかになることで提案書づくりも、商談のマネジメントももっとシンプルにできるでしょう。

B2B営業では顧客社内における意思決定プロセスが複雑であるため、提案書、とりわけ顧客別にカスタマイズした提案書の良し悪しが売上に大きく影響をおよぼします。トライツコンサルティングでは、この最も重要な営業ツールの一つである提案書づくりの支援にも力を入れています。具体的な事例をもとに提案書づくりについてご紹介したいと思いますので、ぜひお気軽にご相談ください。