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あなたの組織は大丈夫?営業組織を蝕む『想定仮説依存症』

あなたの組織は大丈夫?営業組織を蝕む『想定仮説依存症』

特定の物事や行為に執着して、抑えが効かなくなることを「依存」や「依存症」と呼びます。依存症になるとそのことばかりを行って、他のことができなくなるという弊害があります。この依存症、有名どころではアルコールやギャンブルなどがありますが、最近では買い物依存症やゲーム依存症にスマホ依存症なんていう言葉も新聞や雑誌で目にするようになりました。

このように種類も多く深刻な問題となっている依存症ですが、B2B営業の世界にも依存症のような状態になってしまっている営業組織が少なからずあります。今回のトライツニュースでは、B2B営業で見られる依存症の1つである「想定仮説依存症の症状と治療法」について考えてみたいと思います。

想定仮説依存症の2つの症状

想定仮説依存症は私が名付けたものですので、当然ですが実際にそのような病名はありませんし、一般的な用語でもありません。これは、顧客から課題を十分に聞けていないうちに営業マンが自分たちで想定した課題や、その解決策などの仮説に依存してしまうということを意味しています。
自分で想定した仮説が見事に顧客に的中し、「さすがですね」などと言われて商談を成功させることができると、顧客からも喜ばれますし、社内でも評価されます。それを繰り返すことで、「もっと優れた仮説を」「まず仮説ありき」という仮説に依存したスタンスになってしまうのです。

この想定仮説依存症には、2つの症状があります。

1つ目の症状は、商談の早いタイミングからとにかく「仮説」を持つことにこだわります。「営業マンは仮説を持って顧客と接するべきだ」と思っているので、手ぶらで顧客を訪問することをとても嫌がり、顧客からまだ具体的な課題の相談も受けていない商談の最初の段階から、分厚くて立派な提案書を用意しようとしたりします。

2つ目の症状は、自分たちで想定して作った仮説を軸にしたコミュニケーションをしようとするということです。顧客の課題についてフリーで話し、自分たちで対応できない話になったりするのを好みません。多少、顧客の課題とずれていても、自分たちの仮説を説得することに力を注いでしまったりします。

このように、想定仮説なしではいられないところがまさに依存症であると考えられる所以なのです。

想定仮説依存症の問題

では、この想定仮説依存症にかかると、具体的にどういった問題が出てくるのでしょうか。私は、2つの大きな問題があると考えています。

1つ目の問題は、顧客の声を軽視してしまう、ということです。自分たちの想定仮説と関係しない顧客の話などは、たとえそこに本当の課題を含まれていてもそれらの情報への感度が低くなり、顧客の声や変化に気付けなくなってしまいます。
また、最初から立派な提案書を持っていくので、顧客はそれを売り込まれているんだと感じて「買う」「買わない」の判断をすることに意識が向かいます。結果、顧客が課題について話しにくい状況を作ってしまっているという問題もあります。

2つ目の問題は、営業活動が非効率になる、ということです。顧客の課題を十分に把握していないのに時間をかけて分厚い提案書を作り、それありきで商談を進めてしまうので、軌道修正が難しく最終的には失注することが多くなります。

想定仮説依存症の怖いところ

しかも想定仮説依存症の怖いところは、自分ではこれにかかっていることに気が付かず、どんどん依存の度合が高くなっていくことです。自分たちの想定仮説が外れて失注すると、本来なら「顧客からちゃんと課題や要望を聞いてから提案しよう」となるはずなのですが、想定仮説依存症にかかっていると「仮説の出来が悪かったからだ」と考えるので、より精度の高い想定仮説を求めるようになってしまい、より依存度が高くなります。

しかし、先ほど触れたように顧客の声をしっかりと把握できていないので、提案書はさらに分厚く立派になっていくものの想定仮説の精度は高くならずにまた失注してしまう、というように負のスパイラルに陥ってしまいます。

「下手な鉄砲数打ちゃ当たる」という諺がありますが、ちゃんと相手の方を見ずに、すごく時間を掛けて準備した弾をいくら打ってもなかなか当たらず、生産性が低いのは当然のことです。その時に「もっと強烈な弾が必要だ」と思ってしまうのが想定仮説依存症の怖いところなのです。

想定仮説依存症にかかりやすいのは

では、この想定仮説依存症にかかりやすいのはどういう営業組織でしょうか。

私がこれまで見てきたところでは、企画提案型の営業に慣れていて、自信を持っている営業組織で発症していることが多いようです。こまめに顧客対応したり、顧客の関係者とじっくり関係性を構築していくことよりも、スパッとできの良い企画の仮説が評価されるような組織ほど、かかりやすいように思えます。

また、自分が提案していることに自信がない営業組織ほど、想定仮説を素晴らしいものだと思っていて依存してしまっているようにも見えます。提案する内容に自信がないので、「良い武器がないか」と常に探しまわっていますし、その結果として顧客をより力強く説得できるようにと提案書がどんどん立派なものになっていくのです。

想定仮説依存症の診断と治療法

と、ここまで想定仮説依存症の症状や問題について見てきました。自分たちの組織がかかってしまっていないか、不安になっている方もいるでしょうから、ここからは診断方法と治療法について見ていきましょう。

自分たちの組織が想定仮説依存症になっていないかをチェックする方法は、普段の商談準備や営業ミーティングの中で「仮説」という言葉をどれだけ使っているか、「仮説」をどれだけ重要視しているかを客観的に見てみることです。また、商談の最初に持っていく提案書の厚さを見てみましょう。商談の初回であるにも関わらず、提案書が想定仮説でパンパンに膨らんでいて、しかもその仮説の的中率が低いようなら、想定仮説依存症の可能性が高いです。

自分が想定仮説依存症になってしまっていることに気が付いたときの治療法は、顧客と課題について話をする場を設けるのを意識することです。例えば、自分が分からない部分や自信がない箇所、自分たちだけでは決めきれない部分は白紙のままにしてある「不完全な提案書」を持っていき、顧客と話をしながら白紙の部分を穴埋めしていきましょう。こうすれば、「顧客のところに手ぶらでは行きにくい」という営業マンでも、想定仮説依存症から抜け出しやすくなります。

不完全な提案書を穴埋めしていくのに慣れてきたら、商談の最初の段階で持っていく資料を少なくしていきます。商談の最初の訪問では、顧客の現状や課題についてディスカッションする1枚モノと、自社が持っているソリューションの一覧だけ、などとこちらの想定仮説の割合を少なくして、顧客と一緒に作り上げていく企画の割合を増やしていくのです。こうすれば、商談が進んでいくにつれて、顧客と一緒に作ったページも増えていきます。このように最初から分厚い提案書を持っていくのではなく、最初は1枚モノや数枚だった提案書が商談回数が増えるにつれて少しずつ厚みが出てくるようになったなら、想定仮説依存症を克服したと言えるでしょう。

ただし、ここでの注意点は顧客と会う間隔を空けないようにすること。会う間隔が空くと顧客からは「1ヶ月もあったのに、増えたのは1ページだけ?」と思われてしまいますし、営業マン自身も分厚い資料を持っていきたくなるものです。マメに顧客と会って、顧客と一緒に企画を作り上げていくことが大事なのです。

あなたの組織は大丈夫?想定仮説依存症

今回のトライツニュースでは、企画提案力を大事にしている営業組織がかかりがちな「想定仮説依存症」について見てみました。「自分たちの営業組織は大丈夫か?」「かかっている営業マンがいるかも」と思われた方は、ご紹介した診断方法でチェックし、治療法を試してみてください。これを治療することができれば、より顧客の本音をしっかりと聞けるようになるので企画提案力が高まるでしょうし、商談の受注率も高まりますので営業活動がより効率的になることでしょう。

投稿者プロフィール

寺島 孝輔
実際に現場で成果が出るまでお手伝いします。現場の力を引き出し、現場に新しいアイデアを加えることで、顧客から選ばれるビジネスへの変革を実現します。
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