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タクシーの中のディスプレイ広告を見ていて、「こんなサービスがあるんだ!」と驚かれた経験ありませんか? 

営業の世界においても営業活動をサポートする様々な新サービスが登場しています。それぞれに「このサービスを導入すれば売上拡大!!」などとアピールしてきますが、実際のところはどうなのでしょうか。 

最近、ビジネスの世界で注目されるワードの一つに「ビジネスエコシステム(事業生態系)」があります。これは複数の企業がそれぞれの強みやリソースを活かしながら連携し合い、共通の目標や利益のために協力するネットワークのことをいいます。 

これまで自前主義が強かった営業組織においても、急速な技術革新とグローバル化を背景として、「社外の力を借りる」ということを考える企業が増えてきました。ただ、多種多様なサービスがあるため、どのように考え、何を選ぶことが正解なのか悩む方も多いと思います。 

そこで今回は、このエコシステムを営業にフォーカスしてみたいと思います。タクシーの中で興味を持たれた特定のサービスに飛びつくのでなく、自社の生産性を向上させるために、営業を取り巻くエコシステムにはどんなものがあり、どのような考え方で活用していけばよいのか、まずは全体を見て考えてみましょう。 

今まで日本にはなかったB2B営業のエコシステムを全体像 

とはいえ、このような営業のエコシステムを概観できるようなものは、日本にはほとんどありませんでした。 

エコシステムを分類すると、営業関連のテクノロジー、いわゆるセールステック(SalesTech)と言われるものと、研修やコンサルティングといった人的サービスとに大別することができます。 

そのうち、特に海外で先行して整理・体系化が進んでいるのがセールステック。これらを一覧表にしたカオスマップをこのブログでも以前から「注目のコンセプト『SalesTech』で営業を効率化するために」(2019年)、セールステックが示すB2B営業の歴史的な転換点」(2021年)などで紹介してきました。ちなみに2024年の最新版はこちらです。 

表の中にある、小さな小さなロゴが企業を表しています。かろうじて読めるロゴもありますが、これだけ多くの営業テクノロジー企業が存在しているのかと思うと圧倒されますね。とはいえ、これらは海外、主にアメリカの営業関連テクノロジー。日本市場を対象にこのように網羅的に調べたものはこれまでありませんでした。 

いよいよ日本でも登場!マツリカ社の「Japan SalesTech Landscape 2024」 

そんな中、日本産のSFA/MA/BIツールを開発販売している株式会社マツリカが、日本版のセールステックのカオスマップをつい最近公開しました。SFAやMAといったおなじみのツールだけでなく、SNSを活用したソーシャルセリングに、自社製品に興味ある見込客に絞って効率的に働きかけられるインテントセールス。また、営業関連のコンテンツ管理など、営業活動を支援するテクノロジーとその主なプレイヤーを幅広く網羅しています。ご興味ある方はぜひこちらからご覧ください。
セールステックとは?7つの主要カテゴリーを徹底紹介【カオスマップ付き】 

また、この内容をさらに詳しく解説した書籍「SalesTech大全 攻めの営業DXを実現する最先端テクノロジー」も最近発売されました。ようやく網羅的な日本版のセールステックの一覧表が出来上がったと思うと、以前からウォッチしていた人間としては感慨深いものがあります。 

B2B営業を支える人的サービスの一覧表 

このようにセールステック関連の情報は増えてきましたが、その一方でテクノロジー以外の人的サービスに関する情報はまだまだ未整備です。そこで、カオスマップほどではないですが、営業を支える人的サービスの一覧を以下に列挙します。 

おおよそのB2B営業で使われることの多い基本的なサービスを13個選んでいます。これら以外にも、海外向けのビジネスをされているのであれば、翻訳や資料のローカライズや通関手続きも含めた物流サービスなどが必要になるでしょうし、システム開発をされていればSIerなどが不可欠のパートナーになるでしょう。そのように、業種や営業活動の内容によって追加されるものもあるでしょうが、ベースとしてはこのようなものでおおよそ間違いないはずです。 

これらのサービスを参考にして、皆さんの営業活動に足りないところや弱いところがないかを定期的に見直し、よりよいパートナー体制/エコシステムになるように入れ替えたり育成したりするということです。 

エコシステムマネジメントの2つのミッション:「守らせる」と「育てる」 

そして、このエコシステムを運用していくためには、そのマネジメントが重要になります。いわゆる外部業者として仕事を丸投げするというのでなく、「守らせる」と「育てる」の2つの方向性を持ち、関わっていかねばなりません。 

「守らせる」には、コンプライアンスやエシカル(倫理性)にSDGs、またセキュリティという観点があります。自社のパートナー企業が社会的に問題のある方法で従業員などを働かせていないかを確かめるのが当たり前になりつつあります。また、2022年にトヨタの関連企業が受けたサイバー攻撃では、トヨタのすべての国内工場での操業が停止するという出来事がありました。共存共栄なだけでなく一蓮托生ともなりうるパートナー関係では、この「守らせる」という観点がとても重要になっています。 

そして、「育てる」については、以前のブログで海外の人材育成カンファレンスに参加した際の様子をご紹介しています。
従業員だけじゃない!『エコシステム』まで含めたタレントマネジメント 

そのカンファレンスの中では、「今やタレントマネジメントの対象は社内の従業員だけではない。自社にとっての『タレント』は組織の内外で私たちの仕事とメンバーを支えてくれる人たちまで含む、いわば自社の『生態系』全体のことだ」という話がされていました。つまり、自社のビジネスを成長させるためには、パートナー企業と一緒になって、自社ビジネスに関わる社外のメンバーの育成にも取り組む必要がある、ということなのです。 

「育てる」対象はパートナー企業の人材だけではありません。一緒に技術を育てる、一緒に市場を開拓するなど、長期的なエコシステム全体の成長のために何が必要かを考える。実際に私がお話を聞いた企業では、顧客企業の経営課題の改善として、人材採用のためにWebページや動画の制作を手伝ったり、はたまた財務や事業承継といったテーマで専門家を紹介する活動をしています。これなどは、エコシステムを育てるの格好の例だと言えるでしょう。 

「自社のパートナー体制は十分か」
「自社が大事にしていることをパートナー企業には守ってもらっているか」
「自社はパートナー企業の成長と育成に取り組んでいるか」
この3つの観点から、皆さんのパートナー体制/エコシステムを見直してみることをおススメします。 

これからの事業成長にはパートナー企業とのエコシステムの構築と成長が不可欠! 

今年(2024年)の3月に「Ecosystem-Led Growth: A Blueprint for Sales and Marketing Success Using the Power of Partnerships」(エコシステム主導の事業成長: パートナーシップの力を活用して営業とマーケティングを成功させる計画書)という本が出版されました。この本の主張をまとめると、「これまでSaaS業界ではマーケティングや製品そのものの力が事業成長のエンジンとなっていたが、時代が変わった。現在大事なのは、パートナー企業各社との協業体制つまりエコシステムをいかに構築するかなのだ」というもの。このように、自社の組織能力を高めるだけでなく、エコシステム全体としての能力向上/成長がこれまで以上に重要視されるようになってきています。 

ぜひ今回ご紹介したマツリカ社のセールステックのカオスマップと、トライツで作成した人的サービスの一覧表を参考にして、皆さんの営業のエコシステムを見直してみてください。事業の成長や変革のためのヒントは、意外と皆さんの社外、パートナーが住まうエコシステム(生態系)の中にあるのかもしれません。