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「たまごっち」「もののけ姫」「マイブーム」。これらはすべて1997年の新語・流行語大賞トップテンの中の言葉です。1997年はこの記事を書いている2021年から24年前。身近に感じる人も、昔のことだと感じる人もいることでしょう。
そんな1997年にサービスが始まったのが、好きなメールマガジンを選んで登録できるメルマガスタンドの「まぐまぐ!」。当時はまだメールというものが目新しく、自宅のパソコンや、これまた出始めのころの携帯電話に配信された記事を読むのが楽しかったものです。このころからメールマガジンを使ったマーケティングが一般的なものになってきました。
そして24年後の現在でもメールマガジンはWebマーケティングにおいて、特に顧客/ユーザーと定期的にコンタクトを取って育成するリードナーチャリングのツールとして、中心的な位置を占めています。SNSが広く普及するなど、私たちのインターネット環境は激変していますが、いまだに多くの企業のメールマガジンが私たちの受信箱に届き、その中から興味がある記事を選んで読んでいます。
今回のトライツブログでは、メールマガジンをはじめとするB2Bマーケティング・営業でのメール活用の最新ヒント集を、海外の調査レポートから抜粋してご紹介します。開封率を高くするために、またアポイントの設定率を上げるためには、どんなメールにすればよいのか。自社ですでにメールマガジンを運用している方も、メールを使って頻繁に顧客/見込客とやり取りをされている方も、ぜひお読みください。
データ①開かれるマーケティングメールの4つの特徴
今回最初にご紹介するのは、新規見込客発掘ツール/サービスのリーディングカンパニーであるLeadFuze社の記事「Sales Statistics: 20 Proven Stats that Will Change Your Approach」です。電話やSNSなどの営業/マーケティングチャネルごとの最新データをまとめて紹介しているのですが、その中からメールマガジンに関するものを4つご紹介します。
1. 送ったメールの多くは就業時間の最後に開かれます
GetResponseの調査によると、メールに最も気づきやすいタイミングは、職場に着いた直後の午前10時か、昼食後の午後1時です。メールが開封されるのは、受信直後の1時間が23%であり、この割合は24時間後以降には1%未満に減少します。2. メールの開封率が最も高い曜日は火曜日
3. 45%の人が、メールを開くかどうかを件名だけで判断する
(中略)invespの調査によると、件名のないメールへの開封率は件名のあるメールよりも8%高くなります。また、件名がカスタマイズされたメールの開封率は、件名のないメールよりも22%高くなります。4. 件名が長いメールは開封されません
(中略)Relation Scienceの研究によると、英語で6~10語の件名で開封率が高く、その中でも英語で8語の件名の開封率が最も高いことが明らかになりました。
日本とアメリカとで働き方に違いがありますし、日本語と英語の違いなどもあるのでそのまま鵜呑みにはできないのですが、それでも興味深いデータなのではないかと思います。自社でメールマガジンを運用しているという方は、送信される曜日と時間帯、件名の長さとカスタマイズの有無を確認してみてください。ちなみにトライツのメールマガジンは、ハッピーマンデーの制定以降、火曜日が週の最初の営業日になることが増えたので隔週水曜日の朝8~9時に送信するようにしています。
データ②アポイントにつながる商談メールの5つのヒント
続けて、個別の顧客/見込客に対する営業活動でのメール活用についての調査データをご紹介します。ご紹介する記事は、AIを使ったB2B営業トークの自動認識&分析サービス会社Gong.ioの「These Are The Best Sales Email Tips You’ll Read In 2021」。Gong社が有する大量のユーザーデータの分析結果から、メールから初回のアポイントにつなげるのに有効だと検証済みの5つのヒントが紹介されています。
1. 初回の営業メールで投資対効果の話はしない
初回の営業メールに投資対効果についての文章を入れるのは大きな間違いで、アポイント成功率が15%低下します。顧客は感情に基づいて意思決定し、投資対効果などのデータによってこの意思決定を正当化します。そのため、最初に顧客の感情に訴えて意思決定をしてもらうために、投資対効果ではなく顧客が関心を持っていることについて話しましょう。2. 顧客自身についての文面にする
顧客が関心を持っているのは、顧客自身のことです。具体的には、自分たちのビジネスや目標、その目標の達成を妨げる課題に関心を持っています。そのため、あなたの会社や製品のことについてではなく、顧客の課題について書くようにしましょう。(後略)3. いきなり面談の日時設定を迫らない
アポイントを予約するのに一番効果が高いのは、面談可能な時間を尋ねるのではなく、顧客が興味・関心を持っているかを尋ねることです。顧客の意思決定者にとって時間は貴重なリソースなので、それを差し出すことにはとても消極的です。しかし、興味や関心はリソースとは異なります。顧客にはリソースを要求するのではなく、好奇心を刺激して興味・関心を引いてから会議を設定すればよいのです。4. メール本文は短く
(中略)多くの営業担当者は最初のメールの中にすべてを書こうとしますが、それは避けるべきです。目指すのは顧客の興味をひきつけて、アポイントを取って会議につなげることです。そのためにメールの文面は、最も重要なことに焦点を合わせ、それについて簡潔にまとめたものでなければなりません。5. 絵文字を使うのも有効
絵文字が含まれている場合には、アポイントの成功率が2倍になります。また、絵文字の使用は営業担当者だけに限りません。顧客は絵文字を営業担当者の2倍の頻度で利用しますので、顧客からのメールに絵文字が入っていたら、それはアポイント獲得に向けた良い知らせだと言えるでしょう。
AIを使った分析というと無機質なデータの羅列を想像された方もいらっしゃったかと思いますが、上の5つは営業経験がある人なら誰しもが納得できるヒントではないでしょうか。
私が一番面白いと思ったのは、5番目のヒント「絵文字を使うのも有効」です。日本だと (^-^) や m( _ _ )m などの顔文字や、(笑)や www などに当てはまるでしょうか。確かにメールのやり取りの頻度が上がってきてチャットに近い状態になると、これらの顔文字やくだけた表現が出てきやすくなりますし、こういった表現が顧客からのメールの中に出てくると一気に親近感がわいて距離が縮まるような気がします。
このような営業経験がある人が肌感覚で感じているヒントを、分析を使ってくっきりと導き出し、わかりやすく伝えてくれるところにGong社のレポートの真髄があると、常々感じています。この記事以外にも面白い分析を「Gong Lab」として定期的に発表していますので、興味ある方はチェックしてみてください。
他社データで学ぶだけでなく自社データを分析してみよう
ここまで、LeadFuze社とGong社のレポートを見てきました。メールマガジンを送るべきタイミングや、メールで商談をする際の文章の作り方など、参考にしていただける部分が多かったのではないでしょうか。
そして、最近ではこれらのヒントを自分たちのデータを使って、簡単に分析できるようになっています。MAツールが入っていれば、自社で運用しているメールマガジンのうち、開封率が高いものや、その先の商談につながったものの要因を探ることができます。今の日本ではメールの送受信履歴とSFAの商談データを組み合わせた分析は難しいですが、海外ではセールスエンゲージメントというツールが急拡大していますので、近い将来はこれも可能になるはずです。
自社でこのような分析が可能になると、営業やマーケティングのマネージャーに求められる役割も変わってくるでしょう。これまでは個人で蓄積した経験から効果的なメールの送り方といったノウハウを抽出していたのですが、社内のデータを分析することでより確実で精度の高いノウハウが得られるようになります。個人としての経験はまだ浅くても組織として蓄えたデータからノウハウを分析によって導き出せるマネージャーの方が、経験豊富だが個人の経験の中からしかノウハウを見つけられないマネージャーよりも重宝されるようになる。そのような将来に備えるために、マネージャーこそが自社の営業・マーケティングデータを分析できるようになる必要があると、私は思うのです。
メールマガジンの運用をスタート/進化させよう
メールマガジンの登場からおよそ四半世紀が経ちましたが、私たちは今まで以上に多くのメールマガジンを受け取っていますし、B2B企業でもメールマガジンを運用している会社が増えています。SalesforceやHubSpotなど、現在のB2BWebマーケティングの代表格と言える企業も積極的に活用していることからも、今後も積極的に使われ続けるものと考えてよいでしょう。
すでに自社でメールマガジンを運用しているという方は、今回ご紹介した調査レポートを参考にして、自社のメールマガジンがどのように運用されているのか確認し、さらに可能であれば運用データを分析してみて自社流の成功のヒントを発見していただきたいと思います。
また、Webマーケティングの一環としてメールマガジンを考えたいという方は、さっさと始めてみましょう。安価かつ比較的簡単に使えるツールが市場にはたくさんありますし、肝心要のコンテンツ制作を代行・サポートしてくれる企業も数多くありますので、以前と比べれば圧倒的に始めやすい環境になっていますし、本当の有効性はやってみないとわからないからです。
トライツでは、Webマーケティングの実践サポートの1つとして、メールマガジンの企画・設計・運用を支援しています。既存の運用データを分析したいが分析業務に慣れていないという方、新たにメールマガジンを始めたいが何から決めればよいのかわからないという方は、ぜひご相談いただければと思います。
また、トライツのメールマガジン「明日の営業を考える」も隔週水曜日で発行しています。ご登録がまだの方は こちら よりご登録ください。
参考:
「Sales Statistics: 20 Proven Stats that Will Change Your Approach」(Justin McGill, LeadFuze, August 10, 2021)
「These Are The Best Sales Email Tips You’ll Read In 2021」(Devin Reed, Gong.io Inc., April 7, 2021)