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ここ数年「学び」について注目が集まっています。

2015年に提唱された「一億総活躍社会」をきっかけとして、また人生100年時代という文脈からも、社会に出てからも自らの知識やスキルをアップデートする学び直し(リカレント教育)の必要性が語られています。さらに、コロナをきっかけに急加速したDXにおいても、当初は専門的な知識・スキルを持つ人材・組織による新技術の開発・導入に注目が集まっていましたが、今ではデジタルツールを活用して業務を改革する人材の育成の方に注目が集まっているように思われます。そういえば、昨年の秋ごろに「独学大全」という分厚い本が出版され、Amazonのビジネス書ランキングで何週も1位になっていたりもしましたね。

今回のトライツブログでは、数年前から改めて注目されるようになっている「学び」について、B2B営業に起きている変化と重ねて考えてみたいと思います。

海外調査レポート:今のB2B営業に求められる学ぶ意欲と能力

コロナによるリモート化やDXなど、激変しているB2B営業における「学び」についての、面白い記事を見つけました。イギリスのWeb&季刊誌『Jounal of Sales Transformation』の最新刊に寄稿されている、「The key issues for B2B sales leaders in 2021」というものです。かなりボリュームのある記事ですので、要点をかいつまんでご紹介します。まずは記事の導入部分からです。

2020年は多くのB2B営業組織にとって厳しい年でした。電子商取引やDX関連などの一部の業界は好調でしたが、他の多くの業界では需要が大幅に減少しました。

2021年には、さらなる困難が待ち受けています。効果的なワクチンの登場により回復への希望が見えてきましたが、それは需要が減少した業界をCovid以前の「普通の状態」に急速に戻してくれる魔法のようなものではありません。

ひとつ確かなことは、B2B営業の未来はかつてのようにはならないということです。これは脅威であると同時にチャンスでもあります。勝者となるには、個人レベルと組織レベルの両方で、敏捷性と適応性を手に入れる必要があるのです。

それではこの敏捷性と適応性を手に入れるために、どうすれば良いのか。筆者はここで「学び」について話を進めます。

適応力が求められているのは、営業のバーチャル化という劇的な変化において顕著です。B2B営業のデジタル化にうまく対応している営業担当者や営業組織では、新しい営業チームのメンバーを採用したり、既存の営業チームの可能性を評価したりする際に、学ぶ意欲と能力を最優先の評価項目としています。(中略)

2021年のB2B営業においては、デジタルネイティブであるだけでなく、常に学習する文化を確立することが成功の重要な基盤となるでしょう。また、最前線の営業マネージャーが、営業担当者の能力を継続的に向上させる意欲と能力を持っていることも欠かせません。

Web会議が使えるようになる、Teamsを使って情報共有できるようになる、といった一度きりの学習ではなく、「常に学習する」ことの必要性と、そのための「学ぶ意欲と能力」を筆者は強く訴求しています。B2B営業の分野でここまで強く学びの必要性について主張している記事は珍しいので、今回ご紹介しました。

学ぶ人が少ない、日本の社会人(特に営業職)

ここで考えていただきたいのが、私たちは営業について学んでいるか、継続して学ぶことが習慣化しているのか、ということです。このブログをお読みのような方は情報収集や学習に熱心な方だと思いますが、皆さんの組織を振り返ってみるとどうでしょうか。周りのメンバーは学ぶ意欲と能力に優れているでしょうか。組織内に学習する文化は確立しているでしょうか。

B2B向けの営業職に閉じたデータではありませんが、社会人の学習実態についての面白いデータがあります。2019年にパーソル総研が発表した「APAC就業実態・成長意識調査」によると、日本の社会人の社外学習・自己啓発はアジア・オセアニア諸国と比較してかなり消極的で、日本以外の13か国平均では10.8%しかない「特に何も行っていない」が46.3%となっています。

またこの調査の中では、社外学習・自己啓発の手段として一番多く回答されているのが「読書」となっています(日本は27.4%、他の国の平均は43.4%)。しかし、営業職に就いている人は大勢いらっしゃるのにも関わらず、マーケティングなどと比べると営業に関する本は少ないように思われます。Amazonでマーケティング・セールス分野の「マーケティング」の単行本は新刊で2,000件近くありますが、「営業」だと700件ほどしかありません。書店の棚を見ていても、マーケティングの棚が広くとられている一方で、営業の棚はほんの少しだけというところが多いようです。

このように、営業に関する本が少なく、書店の棚にも置かれていないのは、ひとえに「売れないから」です。営業について読書をして学ぶ人が多くないことの残念な証拠だと、書店の棚を見るたびに感じています。

学びが求められるこれからの日本の社会人

しかし、営業職に限らず日本の社会人の多くが積極的に学習しようとしないのは、ただ単に怠けているのではありません。働き方改革等で多少改善傾向にあるとは言え、そもそもの労働時間が長く学習のための時間が取れない。特に大企業では数年で部署・業務が変わるので、学んだ専門知識・スキルが無駄になってしまいやすい。特に営業職では手当の対象になるような資格も少なく、学習したことが評価されにくい。こういった時間のなさや、学習に対するインセンティブのなさに基づいて、ある意味では合理的に学習しないことを選択してきたのだとも言えるのです。

ただ、そのような「学習しないのが合理的」なのも、過去のものになろうとしています。日本企業にはなじまないと言われてきた成果主義が、職務内容を明確に規定するジョブ型雇用と組み合わせられて再度拡大しつつあります。そのため、私たち一人ひとりが専門知識を持って成果を出せる人材となるべく、自らキャリア設計しなければならなくなってきているのです。また、この4月からは改正高年齢者雇用安定法が施行され、従業員に対して70歳まで就業機会を確保する努力義務が企業に課されます。これに加えて、シニアに対しても成果主義を適用する企業も増えており、年齢が上になっても今まで以上に学び直しの必要性は高まります。そして、現在急速に進んでいるDXに対応するために、デジタルツールを活用できる人材になることが私たち全員にとっての喫緊の課題になっています。

このような状況では、学習して自らの専門性と成果を生み出す力を高めることが合理的なのは明らかです。ご紹介した記事にあるように、B2B営業のデジタル化に対応するためにも、そして時を同じくして変化しつつある日本企業におけるキャリア開発の考え方に対応するためにも、私たち一人ひとりが学ぶ意欲と能力を持つことが大事ですし、組織として常に学習する文化を持っていなければならなくなってきているのです。

自ら学んで自らのキャリアを開発しよう

今回ご紹介した記事は、デジタル化という大きなトレンドに直面しているイギリスのB2B営業担当者へのアドバイスでした。しかしそれだけでなく、働き方・キャリア開発の在り方についての大きなトレンドにも直面している私たち日本のB2B営業関係者に対する、とても大事な叱咤激励のメッセージでもあると捉えなければならないと思うのです。

トライツコンサルティングでは、営業担当者の学習とスキルアップを可視化し、組織として目指す営業人材を育成するためのツールとして営業育成ロードマップの作成、運用をご支援しています。「目指す営業人材像を明確にして育成を進めたい」「営業組織に学習する文化を根付かせたい」という方はご相談ください。

また、以下の関連記事もご覧ください。
環境激変の今こそ!「営業育成ロードマップ」で目指す姿を描き人材を育てる

参考:「The key issues for B2B sales leaders in 2021」(Bob Apollo, CustomerThink Corp., March 1, 2021)