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DX(デジタルトランスフォーメーション)は、もはや新しもの好きな一部の人たちが使う言葉ではなく、多くの企業や政府が目指す大事なテーマとなっています。そしてこのDXの中でも、「DX人材の育成」に注目が集まるようになってきました。

2020年12月12日の日本経済新聞の朝刊に気になる記事がありました。日本マイクロソフトやセールスフォースなどのIT企業各社が、ユーザー企業のプログラミング未経験者を対象に、DXに欠かせないデジタル人材の育成に取り組み始めているとのこと。IT部門のシステム担当ではなく、営業や開発など現業部門の社員が簡単な業務ソフトを自分で開発できるようにするそうです。IT企業などに所属して専門的なサービスを提供する高度DX人材だけでなく、ユーザー企業の現場で実務を回しながらDXを推進する人材も求められるようになってきているのです。

そこで今回のトライツブログは、前回の記事「営業DX人材に求められるスキルとは【前編】」の続きとして、営業DX人材に求められるスキルがどのようなものなのかを振り返り、それが実際に必要となるための条件/パターンについて、さらに深く考えていきます。

前回のトライツブログの振り返り

今回の内容に入る前に、前回の内容を簡単におさらいしておきましょう。前回のトライツブログの内容を、手短に箇条書きでまとめると以下のようになります。

  • 営業DXとは、データの重要性を理解し、適切にデジタル技術を活用して営業を改革すること
  • 営業DX人材は、この営業DXを主体的に推進できる人材
  • 一口に営業DX人材と言っても「実践型」と「企画型」の2つの型に分かれる
  • 営業DXを推進するためには、現場でそれを実践する「実践型」を育成する前に、その内容を企画する「企画型」の育成が欠かせない
  • 企画型の人材に求められるスキルは「プログラミング的思考力」「ビジュアル思考力」「データサイエンス的思考力」の3つ

「実践型」と「企画型」の人材像の概要は、下図の通りです。

これまでの多くの営業企画が使ってきた3つのスキル

これまで、多くの企業において営業企画部門の人材は、営業現場で経験を積んできた人の中から配属されることが一般的でした。そこで必要とされるスキルは以下の3つです。

まず一つ目は現場からの要望や事業方針の変更、発生した問題などを受けて既存の業務手順を改善する「問題解決/カイゼン力」です。二つ目は組織として蓄積してきた規範やマニュアルにメンバーを従わせる「ルール/標準化力」。そして、これまでに獲得したノウハウを用いて主観的に分析・判断する「経験知力」。これまでのように基本となる路線は変わらず、状況に合わせたカスタマイズを加えていけばよかった時代においては、これらのスキルを使って、継続的に業務を改善・維持することが、従来の企画型人材に求められていたように思います。

そして、これらのスキルは営業現場である程度は身につくものだったので、特に営業企画人材として育成する手法を持たなくても、大きな問題にはならなかったように思います。

維持・改善スキルに加え、変革スキルが求められる

先日、ある外資系の保険の営業をやっている知人が、「以前はパッとしなかったある営業担当者が、コロナ以降、オンライン面談でどんどん新規契約を獲得しているんです。どんな工夫をしているのか聞いてみたのですが、よくわからなくて・・・」と言っていました。従来の営業担当者の価値観でその担当者のやっていることの「良いとこ取り」をしようとしてもなかなかうまくいかないようでした。

詳しく話を聞いてみると、客前で気の利いたことを言ったり、仲良くなったりすることがあまり得意でないその方は、短時間で用件を絞って進めればいいオンライン商談の方が向いているようで、上手く活用して成果を上げていることがわかってきました。それに対し、これまでのベテラン営業担当者はどうしても顧客に「会う」ことを前提に考えてしまうので、つい自分で商談にブレーキをかけてしまうとのことでした。

このようにコロナ以降、これまでの「当たり前」が当たり前でなくなっていることは少なくありません。ゲームチェンジが起こっていて、ルールも勝ち方も変わっているのですが、それを皆がわかるように解釈したり、新しいテクノロジーを上手く活用するアイデアを具現化することが誰もできないのです。

具体的には、その営業担当者が考えていることを保守的なベテラン営業にわかるように解釈し、組み立て、テクノロジーの価値をわかりやすくまとめ、「やってみよう!」と前向きなイメージを持てるように示し、腹落ちさせる必要があります。また、本当にそうすることでどれだけ成果が上がったかも、具体的にすることも大切です。
そこで必要となるのが、「プログラミング的思考力」「ビジュアル思考力」「データサイエンス的思考力」なのです。

これまで営業企画に必要とされてきた「問題解決/カイゼン力」「ルール/標準化力」「経験知力」との関係を整理すると以下のようになります。

左側の「問題解決/改善力」「ルール/標準化力」「経験知力」の3つは、既存の業務やこれまでに蓄積してきた規範、経験をベースとして、業務を維持・改善するために欠かせないスキルです。それに対して、右側の「プログラミング的思考力」「ビジュアル思考力」「データサイエンス的思考力」の3つのスキルは、大きく変革するために必要なスキルなのだと捉えていただければと思います。
そして、これからの営業企画には、この3つの維持・改善スキルと、3つの変革スキルが求められるようになるのです。

あなたの営業DXに必要なスキルは維持・改善スキル?変革スキル?

ただし、そのスキルの重要性や緊急性はそれぞれの企業のいる業界や、企業としての「営業DXで目指す将来」をどう考えるかによって大きく異なり、3つのパターンに分けることができます。

パターンAのように「営業DXはこれまでの延長線上」と考えると、変革スキルの重要性は低いと言えます。パターンBのように「一度だけ変革すればよい」とするのであれば、社内プロジェクトで力を合わせてなんとかする、既に成功している企業の真似をしたり、変革に必要なスキルを外部のシステムベンダーやコンサルタントから調達するという方法もあるでしょう。

ちなみに以前のトライツブログで解説したマッキンゼー社の調査資料に、コロナの拡大によって世界中のB2B営業がデジタル活用型のモデルへ変化する中で、継続的に営業モデルの有効性を高められているか、というデータがありました。これによると、日本企業はコロナの拡大が始まった4月時点での有効性のスコアは高かったのですが、その後8月にもう一度調べたところ、多くの諸外国のスコアが伸びた一方で、日本の有効性スコアはほとんど伸びていなかったのです。

これはつまり、このマッキンゼー社の調査に回答した日本のB2B企業の多くが、コロナ対策としてのDXを行い、それ以降はもう変革は終わったもの・・・と認識していると解釈できます。

しかし、実際には多くの企業で営業DXの「真の果実」を得るに至っていませんし、これからもまだまだ新しい手法やツールが出てきたり、それに合わせて顧客の購買プロセスやそれに伴う要望も変化することが予測されます。そうすると変革は一度やったらオシマイ・・・ではなく、パターンCとして、今後も常に新しいものを取り入れ、変革し続けていくものだと考えることがリーズナブルだと思いますが、あなたの営業はこの3つのパターンのどれだと考えるでしょうか?

社内に変革スキルを持った営業DX人材育成する流れ

ちなみにこの3つのパターンは、営業DXに関する考え方を共有する上でとても有効です。トップがパターンA、現場がパターンB、営業企画がパターンCなどと考えていたとしたら、バラバラで上手くいかないでしょう。

しっかり基本的な考え方を合わせた上で、もしパターンCだと決めたとしたら、変革スキルを持った企画型の営業DX人材が必要になるということです。ちなみに冒頭でご紹介したように、DX人材を外部から調達するのではなく社内で育成しようという潮流が生まれていますが、これはパターンCだと考えて営業DXに取り組む企業が増えていることを裏付けるものだと言えるでしょう。

トライツコンサルティングでは、これからもこの3つのスキルについての研究・考察を重ね、皆さんに情報発信していこうと考えています。