この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

新型コロナウイルスが北半球を中心としてまた感染拡大の局面に入りつつあるようで、記事やニュースで改めて大きく取り上げられるようになりました。その際に必ずと言ってよいほど見聞きするのが、感染者数などのデータソースである「ジョンズ・ホプキンス大学」です。各テレビ局や各新聞社・雑誌社のコロナ関連サイトでも同大学のデータが用いられており、今や日本で一番有名な海外の大学の1つだと言えるでしょう。

コロナ関連のデータソースとして一般に有名なのはジョンズ・ホプキンス大学ですが、ビジネス向けに価値のある調査データを定期的に発信しているのが、世界有数のコンサルティング・ファームであるマッキンゼー社です。同社は「COVID-19 B2B Decision-Maker Pulse」というレポートで、コロナが世界のB2B企業にどのような影響を与えており、各企業がどのように対応しているのかを定期的に紹介しています。

今回のトライツブログでは、最近発表された「Pulse」を使って、世界のB2B企業がコロナにどのように対応しているのか、そして日本のB2B企業の対応の特徴について、見てみたいと思います。

コロナにより伸びたデジタル活用型の顧客コンタクト経路

マッキンゼー社が最近発表した調査レポート「Survey: Global B2B decision-maker response to COVID-19 crisis」では、2020年の4月下旬と8月上旬に実施したオンライン調査の結果を比較するという手法をとっています。4月下旬と言えば、日本では全国に緊急事態宣言が出されており、世界では中国や欧州に続いてアメリカで感染者数が急増していた時期。そして8月上旬は、日本ではいわゆる第二波が起きており、世界ではブラジル・インドといった国々でも感染者数が爆発的に増えていた時期です。

まずは、コロナによって世界のB2B営業がどのように変化していたのかを見てみましょう。次のグラフは、コロナ以前/以降でB2B営業で顧客とのコンタクト経路がどのように変わったのかを表したものです。

皆さんも実感されている通り「対面」で顧客とコンタクトを取る割合が半減し、「Web会議」や「チャット」などのデジタル活用型のコンタクト経路が大きく伸びています。日本ではコロナによってWeb会議が一気に浸透しましたが、全世界で見るとコロナ以前から38%のB2B営業で既に使われていたというのが、個人的に興味深く感じたところです。

新しい営業モデルの有効度が高まっている諸外国と足踏みしている日本

それでは、このような営業の変化についてB2B企業はどのように評価しているのかを見てみましょう。

4月下旬時点では、65%のB2B企業が、新しい営業モデルはコロナ以前と比較して同等またはより有効だと考えている。(同等 29%、より有効 36%)

8月上旬時点
では、75%のB2B企業が、新しい営業モデルはコロナ以前と比較して同等またはより有効だと考えている。(同等 29%、より有効 46%)

この数字を見ると、多くのB2B企業がコロナ禍をきっかけとした、デジタル活用型の営業モデルへの変革に成功しているように見えるのですが、国別のデータを見ると少し様相が変わってきます。

国別に2本の棒グラフがあり、左側の3色に塗分けられている棒グラフのうち、濃いオレンジ色の「以前より高い」と淡いオレンジ色の「以前と同等」を足したものが、右側の白い棒グラフとなっています。これを見ると、日本ではデジタル活用型の営業モデルへの変革でうまくいっている企業が他の国々と比べてやや少ないようです。また、この有効度が4月から8月にかけてどれくらい上昇したのかを表しているのが、下のグラフです。

世界平均では4月から8月にかけて有効だと回答している企業が10%増加しているのですが、日本では2%しか増加しておらず足踏み状態にあるように見えます。「4月時点で既に質の高い変革を実現していた」と解釈できなくもないですが、先ほどのグラフの結果と組み合わせると「新しい営業モデルの改善・進化が遅れており、そのために8月時点での有効度が諸外国より低くなっている」と読み取るのが妥当なように私は思います。

人員・拠点を維持する一方でチャンスに機敏に対応できていない日本

また、「B2B営業に関わる人員数や拠点数がどのように変化しているか」を比較しているグラフもありますので、続けてご紹介します。

上のグラフは人員数の増減を表したグラフです。続けて、拠点数の増減は下のグラフのようになっています。

人員数と拠点数の2つのグラフに共通して言えるのが、日本は営業に関わる人員や拠点を維持している企業の割合が非常に高い、ということです。また、人員や拠点を減らしている企業の割合は世界平均よりも数%ずつ低いのですが、その反対に人員や拠点を増やしている企業の割合は世界平均よりも10%以上少なくなっています。

産業の構成比が全く同じという訳でもないでしょうし、雇用の流動性などの違いもありますが、日本企業はコロナ下でも営業人員・拠点を減らさずに維持できていると言えます。しかしその一方で、それ以上に人員・拠点を拡大するチャンスに機敏に対応できておらず、結果として現状維持となっている企業が比較的多い、とも言えるのではないでしょうか。

9割の企業が「デジタル活用型の営業が継続・定着する」と考えている

レポートの終盤には、コロナをきっかけとしたデジタル活用型の営業モデルへの変化が、どれくらい持続すると思うかについてのデータが記載されています。

4月下旬時点では、80%のB2B企業が、新しい営業モデルへの変化を今後12か月以上継続すると考えている。

8月上旬時点
では、89%のB2B企業が、新しい営業モデルへの変化を今後12か月以上継続すると考えている。

4月時点より8月時点の方が、デジタル活用型の営業モデルへの変化が今後継続・定着すると考えている企業の割合が増えています。これは、世界中でコロナが長期化しているということと、それに対応する新しい営業モデルの有効度が高まっており、このやり方でも戦えるという自信を持った企業が増えたということを示しているのではないでしょうか。

マッキンゼー社最新版「Pulse」の3つの要点

ここまでのレポートの要点を私なりにまとめたのが、以下の3つです。

1.コロナ禍の影響で従来型の対面営業から、Web会議などのデジタルを活用した新しい営業モデルへの変化が世界中で起きている

2.多くの企業では新しい営業モデルが以前の営業以上に有効だと実感しており、この変化が今後長期間継続・定着すると考えている

3.そのような傾向の中、日本では新しい営業モデルへの変化や組織体制の見直しなど、コロナへの対応が遅れている企業の割合が相対的に高くなっている

3つとも新聞や雑誌・Webセミナーなどで頻繁に見聞きする話ではあります。しかし、この3つともが単なる予言や根拠のない警鐘のたぐいではなく、現実のデータとして計測されたことに今回のレポートの意義があるのだと私は思います。

デジタル活用型の営業への変化の歩みを止めてはいけない

残念ながら、2020年11月現在で新型コロナの新規感染者数は各国で大幅に増えており、世界全体では1日で50万人以上が罹患しています。その一方で、製薬企業各社が開発中のワクチンの有効性を確認しており、米英をはじめとする諸国で承認に向けた手続きが始まっています。そのため、無事にワクチンが承認されて広く市場に流通するようになり、コロナに翻弄されない日がいずれ戻ってくるはずです。

しかし、その時にB2B営業がすっかり元の姿に戻るということはないでしょう。リモートであっても効果的・効率的に働けることが分かり、通勤などの時間を自分の健康や趣味のために使えて快適だという人を、私の周りで大勢見ています。また、リモートを活用した働き方を組織として定着させるために、事業所を移転・縮小・分散させる企業も依然として増えています。そのような働き方が部分的にでも定着するのであれば、デジタル活用型の営業モデルも継続・定着していくはずです。

そのように考えると、「コロナが収まるまではおとなしくしておこう」「いずれまた元通りになる」と考えている企業は、コロナ収束後にリモート勤務とデジタル活用型の営業が定着している世界において、現在試行錯誤を重ねている企業から何周も遅れた状態で再スタートを切る羽目に陥ってしまいます。

今回ご紹介したマッキンゼー社のレポートは、「デジタル活用型の営業への変化の歩みを止めていないか」「今が非常事態で、いずれ元通りになると思い込んでいないか」という厳しい質問を、私たち日本のB2B企業に対して投げかけているように感じました。緊急事態宣言が空けて半年経ち、コロナとともにある生活・仕事に慣れてきた今こそ、「デジタル活用型の営業への変化の歩みを止めていないか」「この変化が今後しばらく継続することを踏まえた営業になっているか」ということを皆さんも改めて確かめてみてください。

トライツコンサルティングは、デジタル活用型の営業への変革をサポートしています。また、今回の記事のように、新型コロナウイルスと世界/日本のB2B営業についての各種調査レポートも継続してご紹介していきますので、引き続きメールマガジンおよびFacebookでお読みください。

参考:「Survey: Global B2B decision-maker response to COVID-19 crisis」(McKinsey & Company, October 20, 2020)