この記事を読むのに必要な時間は約 10 分です。

SFAが日本のB2B企業の営業現場に入ってき始めてから20年あまり。以前はシステムに入力されないことが大きな課題でしたが、実際に導入している企業での使われ方を見ていると、この「入力の壁」を乗り越えたところが増えてきたように感じます。

しかし、メンバーが毎日SFAを開くようになり、営業活動を入力する習慣はついてきたものの、営業に関する業務が楽になっていない、効率化されていないという声をよく聞きます。そこで今回の記事では、「入力の壁」を乗り越えた営業組織がさらにSFAを使いこなして業務を効率化するためのヒントについて、考えてみたいと思います。

営業の非効率を生む「個別ツール/システム化」

皆さんの職場で使っているシステムをイメージしながら、以下の項目を読んでみてください。
1.セミナーや展示会の申込リスト
2.デモ機利用やシステムのデモID交付の申請
3.特別値引の申請
4.見積書/請求書の作成
5.SFAの操作説明資料の閲覧

多くのB2B営業組織で馴染みのある業務が並んでいるかと思いますが、これらの業務はどのようなツール/システムを使って処理・管理されているでしょうか。

「SFAは入力されるようになったけど、仕事がまだ非効率・煩雑なまま」という営業組織の多くでは、これらの営業関連業務がそれぞれ個別のツール/システムで運用されており、営業メンバーはSFAを含め多種多様なツール/システムに埋まりそうになりながら仕事を進めているように感じます。

私が知っているある会社では、1,000人以上の営業担当者がSalesforceを使っているのですが、以下の業務でそれぞれ個別のツール/システムを使っているそうです。
・四半期ごとの営業計画作成~進捗管理(一般的な商材と特殊な商材の2種類)
・本社が設定する重要顧客リストの確認
・重要顧客への攻略プランの作成・管理
・顧客単位の自社商品・サービスの利用実績データ
・商品・サービス別の販促チラシの保管・更新
・商品・サービスの提供スケジュール(年間カレンダー)の確認
・各種商品・サービスのキャンペーン申込
・受注実績管理
これだけの量の個別ツール/システムが林立しており、しかもそれが部署によって異なったりするので大変なようです。

「うちはそこまでではない」という方も、先ほどの5つの項目を見直してみてください。それぞれ別々のツール/システムになってはいませんか。また、そもそもツール/システム以前に、ExcelやWordの入力フォーマットに記入し、印刷して上長の捺印をもらうというアナログな運用のままになっていませんか。

はっきり言って、このようにそれぞれの業務に個別のツール/システムが割り当てられているというのが、営業業務が効率化しない大きな要因の1つです。ExcelやAccess、FileMakerなどの「個別ツール/システム」が増殖する流れを止めないとデータの統合ができず、ムダな入力や確認作業が減らず、いつまでも仕事の生産性は上がらないのです。

SFAという「営業プラットフォーム」にツール/システムを集約しよう

それではどうしたら良いのか。私が考える答えは「できる限りすべての営業ツール/システムをSFAのプラットフォーム上に乗せる」ことです。

例えば今やSFAの代名詞となりつつあるSalesforceでは、Lightningというプラットフォーム上でユーザーが自由にかつプログラムなしでアプリケーションを開発することができます。単純にデータを集計するだけでなく、見積書/請求書の作成・承認といったワークフローを含むアプリケーションなども簡単に作れますので、先ほど皆さんに見ていただいた5つの項目をすべてSalesforce上にまとめられるのです。

このようなことが可能になったのは、以前までは営業活動の報告管理用の単体のツール/システムであったSFAが、営業業務全般のプラットフォームへ進化したからです。デモIDの交付や特別値引の申請など、「昔からのSFA」には含まれることがなかったデータを取り込んでデータベースを作ることができ、それを基にした業務アプリケーションをユーザー側で作れるようになっています。

データや機能をまとめて使うほど便利になるプラットフォーム

では改めてこの「プラットフォーム」というものについて考えてみましょう。

Googleは当初、検索エンジンとして有名になりました。しかし、現在ではテクノロジーにさほど明るくない私でも、Googleのアカウントでファイル、メールや写真・動画・スケジュール・地図などの情報を保存・共有することはもちろん、Zoomなどのアプリのログイン管理まで行っています。

以前は機能ごとに別のツール/システムを使っていたのですが、1つのGoogleというプラットフォームにまとめることで日々の生活がシンプルになっていると感じます。また、複数の機能をまたいで使えたり、複数のデバイスで同じデータが使えることのメリットを享受できておりとても助かっています。

営業のプラットフォームであるSFAも同じです。いろいろな営業の業務をアプリケーション化して1つのプラットフォーム上で運用することで、それぞれの業務やその裏で持っているデータをシームレスにつなぐことができます。その結果、データの管理はシンプルになりますし、別々に管理していると難しい業務の自動化や効率化を図ることもできます。せっかくプラットフォーム機能を持つ現在のSFAを、営業日報や報告資料作成のためだけのツールとしてしか利用していないのは、とてももったいないことなのです。

SFAプラットフォーム活用の成否を決する運用体制

しかし、ここまでのことを理解さえしていれば、SFAというプラットフォームを有効活用して営業業務の効率化を誰でも実現できる、というわけではありません。SFAプラットフォームを組織で活用するには、クリアしなければいけない大きなハードルがあります。それは、SFAのアプリケーション開発や機能追加のたびに追加コストが発生してしまうという社内の体制です。

Salesforceをはじめとする多くのSFAはSaaSとして提供されており、基本的にはユーザー側で初期設定からアプリケーション追加までが可能になっています。しかし、「システムはSIerが構築するもの」という意識がまだ強く残っている日本企業ではSFAの設定や運用を外注していることが多いようです。すると、今まで個別のツール/システムで運用していたものをSFA側に取り込もうとしたときに、外部SIerに追加費用を支払わなければなりません。

それに対し、多くの企業で見られる「個別のツール/システムはExcelでチャチャっと作る」というやり方であれば、Excel作業者は忙しくなりますが追加費用は残業代くらいしか発生しません。そのため、「コストをかけて外部に頼むくらいなら、自前で作ろう」となり、それが積もり積もって個別ツール/システムの山が出来上がっています。

ですので、SFAプラットフォームを有効活用するためには、機能開発のたびに追加コストが発生しない運用体制をつくる、つまり自社内にある程度のSFAのアプリケーション開発ができる人を育てる必要があるのです。

また、私が先日ある会社の会議でSFAについて話をしていた後に、「では次に・・・今度発売になる新サービスのデモIDの管理は、これまで通り企画部フォルダの中にあるExcelに打ち込んでもらって、その後でメールで連絡してもらうという流れでよろしいですか?」などという発言があって驚いたことがありました。このようなシーンで「それSFAでやりましょう」と提案する人がいないので、誰も疑問を持たないまま同時多発的にExcelが増殖し続けてしまうという問題もあります。

SFAの操作だけでなく、プラットフォームとしてのSFAで何ができるのか?ということを皆が学ぶ機会を作るということも大切なことだと思います。

プラットフォーム活用で真のSFA(営業活動の自動化/効率化)を実現しよう

20年以上前に登場した当時のSFAと今のSFAには、入力のしやすさや使える機能など多くの違いがありますし、それらによって「入力の壁」を乗り越えることができました。しかし、Excelなどをはじめとする多くのデジタルツールを利用している現在において、真のSFA(営業活動の自動化/効率化)を進めるためには、SFAをプラットフォームとして捉え直し、そのように業務やそれに関するツール/システムを見直すことが必要です。そして、そのためにはプラットフォームとしてのSFAを使いこなす人材づくり、組織づくりが欠かせないのです。

トライツコンサルティングは、SFAの有効活用とそれによる営業業務全体の生産性向上を支援しています。「SFAは使えるようになったけど業務効率化に至っていない」「SFAを軸に営業のDXを進めたい」とお考えの方はご相談ください。