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SFAやCRMにMAなど、さまざまなシステムがB2B営業の現場で使われるようになってきました。
「まだシステムを入れたばかりで、入力させるのがやっと」というところもあれば、「入力するクセは付けられたけど、従来からの帳票を再現しているだけで、せっかくのデータを活用しているとまでは言えない」と感じている方もおられることでしょう。
今回のトライツブログは米国での調査結果を元に「営業データの活用法」について、その成功のためのポイントを考えてみたいと思います。
海外調査レポート:エビデンス付き!21の営業テクニック
今回ご紹介する調査レポートは、B2B営業に関していろいろな調査会社や研究機関が調べたデータを松花堂弁当のようにとりまとめた「21 Powerful Sales Techniques (Backed by Scientific Research)」という記事。実際の調査結果に裏打ちされた、いわばエビデンス付きのB2B営業のテクニック/ノウハウを「science-based selling」と称して21個紹介しています。
詳しくはオリジナルの記事を読んでいただくとして、こちらでは約半分の10個のテクニック/ノウハウを駆け足でご紹介します。箇条書きの最後にある括弧内は、実際に調査した企業や研究機関名です。
1.顧客からの問合せに対して5分以内に電話すると、コンバージョン率が改善する(Velocify社)
2.アポイント獲得率を上げるには、見込客に6回電話をかける(同上)
3.見込客にとって電話がかかってきて良いタイミングは、朝一番の8~9時か夕方4~5時(Lead Response Management社)
4.見込客に最初にかける電話で、相手の反応が良いのは水曜日と木曜日(同上)
5.見込客は、同じ市外局番からの電話の方を好ましく感じる(Software Advice社)
6.挨拶するときに笑顔のウエイターの方が、もらうチップは3割多くなる(Tipping社)
7.悪口を言われている人だけでなく、悪口を言っている人のことも聞き手は不快に思う(だから、競合の悪口を顧客の前で言うのはやめよう)(国立生物工学情報センター)
8.営業担当者がボディランゲージを学んで活用すると売上が56%上がる(Science of People社)
9.相手の話し方や姿勢を真似すると、そうでない場合よりも合意に至る確率が5倍高くなる(INSEAD)
10.選択肢が示されない場合と比べ、選択肢が示されると購買に至る確率は6倍以上(シカゴ大学)
こんなことをマジメに調べるのはデータに関する考え方の違い
いかがでしたでしょうか。「面白い視点だ」と思うものや、「それは当たり前のことでは?」と感じられたものもあったのではないでしょうか。
トップセールスが自分の経験に基づく営業のテクニックを書いた本にも同じような「ベタな」営業ノウハウが出てきますが、私がこの記事を面白いと思ったのは、「こんなことを調査会社や大学が真面目にデータを取って分析している」というところです。一部欧州の大学も含まれますが、なんでもデータを取って分析してやろうというのが、数字が大好きな米国らしく感じます。
従ってこれらは日本でもよく見られる営業ノウハウ本に書いてある内容と似たようなものであっても、その出処が「データ分析の結果」というところが異なります。そしてその背景には、「米国人は本当にデータや数字が好きなんだなあ」だけでは片付けられないポイントがあるように思います。それは、米国と日本の営業データ活用における考え方の違いです。
営業データを活用して探すのは「問題」か「機会」か
これまでのコンサルティング経験から、日本の営業組織におけるデータ活用は、部署単位、人単位に「数字が落ちている部署がないか」「活動量が少ない担当者がいないか」という『問題探し』のために行われることが多いように感じています。これは営業という仕事はそもそも個人が考えて行うものであり、それができて一人前の営業担当者である。マネージャはできない営業担当者をチェックし、叱咤激励し、必要であれば支援するのが役割である・・・という考え方が根底にあるからだと思われます。
それに対し、営業担当者の入れ替えが多く、営業をしくみとしてとらえようとする考え方が強い米国では、日本よりも営業を科学的に見ようとする傾向があります。そこで、問題探しのためだけにデータを活用するのではなく、営業データを活用してより効率的で生産性の高い『営業の法則』を導き出し、営業機会の最大化を図ろうとします。
この米国と日本の考え方の違いを一言でいうならば、米国は「機会探索型のデータ活用」で、日本は「問題探索型のデータ活用」であると言えるのではないでしょうか。
機会探索型の営業データ活用を取り入れよう
営業活動の最大の目的である、「稼ぎを増やす」方向に営業データを活用しようとすると、次のアクションが具体的に見えてこない「問題探索型のデータ活用」には限界があります。また、AIの活用など、営業支援システムは「機会探索型」の方向に進化しているので、日本型のアプローチでは上手く活用できない可能性が高いと思われます。
では、自社の営業データ活用に「機会探索型のデータ活用」を取り入れていくためにはどうすれば良いのでしょうか。
オススメなのは、パフォーマンスが高い営業担当者の活動内容を徹底的に分析してみることです。パフォーマンスの悪い営業担当者と比較するのではなく、パフォーマンスの高い営業担当者の活動は「○○である」ということを明確にするだけです。
例えば商談発掘までの訪問回数とか、商談期間の長さや訪問回数、そこで皆が行っている営業行為など・・・・得られたことを前述のようにわかりやすい表現にまとめてみましょう。
そして、その結果を現場の営業担当者、マネージャと共有し、「なぜそうなっているのか?」を考える機会を作ります。どれだけ素晴らしい分析であっても、「ふ~ん」と流されてしまっては意味がありません。分析結果を元に「考える」ことで、納得すれば腹落ちしますし、「もっとこんな視点から知りたい」という要望にもつながっていくでしょう。
このようなことを繰り返すことで、「データを元に考える」という習慣づけにつながっていくと思います。
これまで営業のデータ活用が十分にできていなかった主たる原因は、システム環境だけではなく、マネジメントも含めた営業現場の「データ活用に対する意識の低さ」にあります。従って、「データ活用の推進は営業現場の意識改革である」と認識して、腹を据えて取り組む必要があると考えています。
参考:「21 Powerful Sales Techniques (Backed by Scientific Research)」(SuperOffice, 27 Feb, 2018)
トライツコンサルティングでも、今回のブログに取り上げた「機会探索型の営業データ活用」に取り組んでいます。統計解析などの手法を使い、売上データやSFAの活動データなどから、営業の指針/ヒントとなる情報を抽出するのです。「データをもっと売上につなげたい」とお考えの方は、下記よりお気軽にご相談ください。分析の切り口や事例など、より具体的なヒントを差し上げられると思います。